通称・利別岳(1021.5m)  <道道島牧美利河線・ペタヌ川林道コース>  単独  05,04,29

思いがけず道々島牧美利河線の除雪が途中まで進んでいたお陰で、あっさりと念願の道南1000m超峰全山完登が叶う。

2:00 自宅発
4:45 カニカン岳登山口手前(除雪終点) 
登山
地点
下山
5:00
5:35
6:30
7:35
8:10
除雪終点(250m)
ペタヌ川林道分岐(298m)
尾根取付き(500m)
946ピーク
頂  上
10:05
9:40
9:20
8:50
8:20
[3:10]所要時間[1:45]
10:30 クアプラザ・ピリカ(入浴)
13:10 帰宅

 この山は、後志利別川を挟んで長万部岳の西側に(1)(下山後確認)、その支流であるペタヌ川を挟んでカニカン岳の北にどっしりと聳える1021.5mの山である。しかし、この山名と存在を知ったのは、2002年発刊の八谷和彦著の『ガイドブックにない北海道の山50』が最初である。

 その後、いろいろ調べてみると、『北海道の百名山』(北海道新聞社)の「長万部岳」の筆者が、「昭和53年4月に小樽山岳会の利別岳登山会に参加」という記述があるし、三和祐佶著の『とっておきの北海道の山』にも、「大平山〜長万部岳縦走」の文章や掲載地図にもこの山名が載っている。

 八谷氏も道南1000m超峰全山の完登目的でこの山に登っていることもあり、道南在住の自分としては、ぜひ登らなくてはならない山となっていた。

 ただし、この山の登頂ルートは、すべて長万部岳を越えて後志利別川の源頭付近へ下りて登り返すものばかりであった。自分としては、長い林道歩きさえクリアできれば、カニカン岳登山口のある後志利別川沿いの道々島牧美利河線(冬期通行止め)からペタヌ川沿いの林道を詰めて、頂上に繋がる946ピークへの尾根を登るルートがもっとも楽なルートだと思って、その機会をねらっていた。5日前に狩場山塊のオコツナイ岳を登った勢いで、一気に「道南1000m超峰21座全山完登」狙いで挑戦することにした。

 美利河ダムの奥から道々島牧美利河線のペタヌ川沿いの林道分岐まで9km、さらに尾根取り付きまでの林道が3km、さらに頂上まで3kmである。これまでの経験から単独であれば、林道歩きに4時間、尾根登りに1時間半で合計登り5時間半、下り3時間もあれば何とかなるであろう。合計9時間の計画を立て、夜明けとともにスタートしようと、函館の自宅を2時に出る。

 白々と夜が明ける4時30分ごろにピリカダムの奥の道々島牧美利河線の分岐まで走る。ところが、なんとその先の舗装道路には雪がないのでそのまま走っていくと、その先もずっと除雪されていて、6.2kmも先のカニカン岳登山口の手前の橋まで入ることができた。しかし、道の幅が狭くてUターンする場所がない。300mほどバックし、少し幅の広いところで細かくハンドルを切り返してなんとか向きを変え、再びバックで除雪終点まで戻る。

 予定より登り2時間、下り1時間半は少なくてすむことになる。嬉々として山スキーを着け、ルンルン気分でその先の後志利別川沿いの林道を進む。正面には朝日に輝く長万部岳が見える。わずか35分で本流に合流するペタヌ川の橋の先にある林道分岐に到着する(2)その分岐の間の尾根は頂上へまっすぐ続いている尾根の末端で、それを辿る方法もあるが、登り返しもありそうなので、予定通り、歩きやすいペタヌ川の左岸に続く林道を進む。どんどん登っていくと左手にカニカン岳が見えてくる(3)時間的余裕もできたので、利別岳から下りた後、このペタヌ川を越えてカニカン岳への登頂も考えて、取り付ける尾根とスノーブリッジを探しながら登っていくが、スノーブリッジはとうとうなかった。

 1時間ほどで、予定していた尾根取り付き地点へ到着する。ここで、朝食タイムとし15分ほどゆっくり休む。そのすぐ上の地図上の571地点から上は沢地形が複雑に入り組んでいて、4本もの尾根が上へ延びている。当初の計画は946ピークへ直接繋がる一番左の尾根を利用する予定であったが、上の方を見るとあちこちに全層雪崩が発生していて危険そうなので、その右隣の尾根を利用することにする(4)

 深く狭い沢を越えて、穏やかな尾根に取り付く。折れて落ちているブナやダケカンバ枝の間を縫うように尾根をジグを切りながら登っていく。源頭付近になってからは、なるべく左側の946ピークに近い方へトラバースしながら登っていく

 946ピークの右下へ登り切ると、反対側の眺望が広がる。一番先に目に飛び込んできたのは、深い後志利別川を挟んだ奥深い感じの迫力に富んだ長万部岳である(5)946ピークに乗ると、今度は目指す利別岳との対面である。頂上下の尾根の右側に全層雪崩や割れ目が発達していて、無事頂上へ辿り付けるか心配になってくる

 途中の小ピークを左から巻いて、コルへ下る途中から、頂上までのルートをじっくりと観察する。どうやら尾根の左側を辿ればなんとか頂上へ着けそうである(6)斜度もきついので、コルにスキーをデポして、ツボ足で登ることにする。

 頂上の下の全層雪崩の箇所を、怖いもの見たさに近づいてカメラに収めて(7)頂上を目指す。スタートからわずか3時間10分のあっけないまだ8時過ぎの「道南1000m超峰21座全山完登」の瞬間である。

 頂上の東には、後ろに昆布岳や黒松内岳や礼文華海岸を配した長万部岳が(8)その左奥の羊蹄山は上半分は雲の中で、ニセコ連峰もはっきり見えない。北側には比較的雪が少なく黒っぽい姿で荒々しく聳える大平山(9)が、西側には頂上付近が雲に覆われた狩場山塊が(10)、さらに南に目を転じれば、カニカン岳(11)が見える。

 時間的余裕もあるので、ゆっくり休みたいところであるが、風が非常に強くてそれどころではない。10分ほどで下山することにする。

 コルまで下り、シールをつけたままデポしておいたスキーを着けて946ピークへ登り返してからシールを外す。登ってきた尾根は下の方で沢を越えなければならないので、当初登るつもりでいた946ピークへ直接繋がる右側の尾根の全層雪崩の下を巻き、割れ目の間を抜けて、途中から、トラバースしてその尾根に乗って滑り降りる。

 最後は、シラカバの幼木の中を滑り降りて、ペタヌ川沿いの林道へ下りる。ここからは、登りの半分の45分で車のデポ地点に到着する。まだ10時過ぎといううれしい時刻である。長い林道歩きを覚悟して早出したが、予想だにしていなかった除雪のお陰である。

 登ってみてその山が初めて分かるということはよくあることであるが、ピリカダム付近から北側を見たら、それまで何度も来ているのに、ここから見えることに気がつかなかった長万部岳とその左側に登ってきた利別岳がくっきりと見えていた。

 いつかは果たそうと思っていた「道南1000m超峰全山完登」であったが、もっとも困難だと思っていた5日前のオコツナイ岳とこの山を一気に制した満足感に酔いながら、クアプラザ・ピリカの温泉で汗を流して、帰路に着く。

○道南1000m超峰(最新の地形図上に山名の載っている20座+利別岳)-------------
<登山道のある山>
大千軒岳、中千軒岳、前千軒岳、横津岳、袴腰岳、駒ヶ岳(剣が峰)、砂原岳、乙部岳、白水岳、冷水岳、遊楽部岳、、大平山、狩場山、前山 (14座)
<登山道のない山>(すべて山スキー登山)
太櫓岳メップ岳、カスベ岳オコツナイ岳フモンナイ岳、東狩場山利別岳( 7座)

※後日連絡をいただいた八谷氏によると、このほかに1000m超峰は通称の山も入れるとまだ下記の8座があり、合計29座だそうです。彼はこれら全部を踏破しています。
<私も登っている山>
中白水岳、南白水岳、白泉岳、熊石岳、臼別岳、大千軒岳のすぐ南の江良岳
<まだ未踏の山>
遊楽部岳とその南をつなぐ縦走路の途中の前岳、雄鉾岳の西峰




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