太櫓岳(ふとろだけ)(1053m) 檜山・渡島支庁境界線尾根ルート  単独  03,3,02

遊楽部岳の北隣に地味ながらどっしりと聳える夏道のない登り残しの貴重な道南の1000m峰の一つへ・・・。
  
 6:00 新見温泉発
 8:00  八雲・北檜山境界峠付近
登山地点下山
 8:30
 9:45
11:00
車デポ地点
465コル
頂  上
12:30
11:55
11:30
[2:30]所要時間[1:00]

13:30 八雲温泉(おぼこ荘)(入浴)
16:00 帰宅

GPSトラックログ(83kb)
 
  地元・道南の1000mを越える地形図上に名前が標記されている山は全部で20山あるが、全部登れるかどうかは別にして、まだ未踏の山が5山残っていた。今回の太櫓岳、前千軒岳、オコツナイ岳、東狩場山、フモンナイ岳である。さらに、八谷氏の『ガイドブックにない北海道の山50』には、地図上に名前はないが、利別岳という山も掲載されている。
 
 この山は遊楽部岳の北側に少し離れて連なる山で、昔、東瀬棚町と合併して現在の北檜山町になった太櫓村(現在は字太櫓として残る)の由来となる太櫓川の源流に位置し、その山名もその川名に由来するものと思われる。フトロとは、角川日本地名辞典によると、「アイヌ語ではビトロで、ビツヲロの略語にて、小石のある」という意味らしい。

 今回、上記の八谷氏の本を参考にし、夏の内から温めて置いたこの山へ向かうことにする。前日、山スキーデビューの元同僚Saさんを案内したニセコの目国内岳を下山後、新見温泉に泊まり、早朝発って帰路途中である八雲を目指す。八雲からは大きな遊楽部岳の北隣に連なるようにその山は見える(1)。今回のルートは、八雲から北檜山へ抜ける道道42号線の渡島支庁と檜山支庁の境界線上の尾根を辿るルートである。その峠付近で駐車スペースを探している内に、こんな地味な山になんと先行グループのトレースを見つけ、びっくりする。峠から北檜山方面に500mほど下った地点に3台ほど駐車できるスペースに札幌ナンバーの車が1台とまっている。

 車道を300mほど峠方向へを歩いて、先行グループの足跡を利用して除雪の壁を登り、スキーを着け、そのトレースを辿る。道道近くのトドマツ林を抜けて、渡島と檜山の支庁境界線でもあり、日本海へ抜ける太櫓川の源流と太平洋へ抜ける遊楽部川の源流の分水嶺となる尾根を進む。Saさんに川の小さな流れを見ながらそのことを説明すると感激している。

 ほぼ中間地点と思われる本格的な登りにかかる465mコルまでは、6つほどの小さなピークを越えなくてはならず、それも最初は南へ、途中から東へと屈曲していて、距離と高度をなかなか稼げないのが残念である。登り初めて20分ほどで、昨日は3時間半もの登りで何ともなかったSaさんが「どうも靴擦れが起きているらしい」という。行けるところまでと我慢していたが、35分ほどの地点でついにギブアップとなる。戻って車で待っているとのことで、そこで彼と別れ、一人旅となる。

 その後は、マイペースでどんどん先行グループのトレースを辿る。1時間15分ほどで、ようやく長いアップダウンを繰り返す稜線歩きから解放され、本格的な尾根登りとなる465mコルへ到着する。目の前にはこれから辿る頂上までの尾根がずっと見えている(2)。「帰りはここからシールを付け直さなければ・・・」と思いながら、一息入れる。その手前のピークから今度は進路を再び南へと変え、頂上を目指すことになる。

 700m付近で先行グループの姿を捕らえる。男性一人と女性3人のグループである。追いついて挨拶すると、「こんな山で、後ろから人が来るなんて・・・」と驚いている。こちらも同感で「こんな山にまさか入っている人がいるなんて思いもしませんでした。」と答える。後に頂上で聞いたところによると、マニアックなばかり登るので有名なノマドのツアーだそうである。

 750m付近で、八雲側の展望が開けるところで、彼は休憩に入る。彼らは、私より1時間前の7時半に出発したとのことである。今度はこちらが先に出て、ルートを採りながらのラッセルとなる。八谷氏はこの辺りから1本南の尾根に移ったようであり、自分もそのつもりでGPSにそのルートを入れてきたが、上を見ると尾根の東側は確かに雪崩の心配のありそうな急な斜面であるが、尾根の西側斜面は疎林ではあるが傾斜もそれほどきつくなく、雪崩の心配もなさそうなので、その斜面をジグを切ってラッセルしながら登っていく。下りには膝下くらいの快適な深雪滑降を楽しむことができそうなおいしい斜面である。滑りの好きなSaさんに話したら悔しがるであろう(3)。

 当初乗り移る予定だった隣の尾根とは1000m付近の合流点となる。そこまで登り詰めると、緩やかな台地状のところに出る。目の前に東側に雪庇を発達させたいかにもと言った感じの尖った頂上が目に飛び込んでくる(4)。そのバックにはまだ頂上を雲の中に隠した遊楽部岳の稜線と北斜面が見える。右へ視点を移すと、臼別頭の鋭く尖った双耳峰が樹間から覗いている。

 そこから10分少々ウィンドクラストした木の生えていない最後の尾根を登り切ると、ちょうど2時間半の11時に頂上へ到着である(5)。太櫓川の源流部の深い谷を挟んで山襞を発達させ屏風のように連なる遊楽部岳は夏山に2回登っているが、こんなにでかい山だとは思わなかった。その東側に雄鉾岳が見慣れない不格好な形で見え、それとは対照的にきれいな三角錐状に見える岩子岳が登行意欲を掻き立てる。夢中になってカメラのシャッターを押している内に、声がして4人が到着する(6)。そのころには、すっかり青空が広がり、遊楽部岳の頂上や臼別頭などの長い稜線すべてが姿を現す(7)。

 30分ほど、眺望を楽しみながら、岩子岳へのルートの可能性や遊楽部岳への冬期間のルートの可能性などを探ったり、4人グループと山談義などをして過ごす。話を聞くとノマドのツアーで、私が暮れに登ったシキシャナイにも登っていたりと、かなりマニアックな山ばかり挑戦している元気のいい3人の女性と煽られ気味の若い男性ガイドである。

 久しぶりの好天の山で、途中強かった風もここでは無く、もっともっとゆっくりしていたかったが、車で悔しがりながら待っているであろうSaさんをあまり待たすわけにはいかない。4人グループに先駆けて下ることにする。早速、雪庇から東の斜面に飛び出したら、やはりウィンドクラストがきつくて思うようなターンができないので、1000mの台地の下の疎林帯斜面までは慎重に下る。

 1000mから750m付近までの疎林帯が、この山のスキーを楽しめる斜面である。パフパフパウダーとはいかないが、林の中の日の当たらない北斜面だけに、まあまあ思うような滑りを十分楽しめる斜面である。しかし、誰も見ているわけでもないので、調子に乗って立木にでも激突でもしたらと・・・・結構慎重にターンを刻む。

 750m付近からは狭い尾根になるので、滑りを楽しむと言うよりは風で消えたトレースを探したり、GPSで確認しながらの下りである。しかし、一人なので、あっという間の下りである。465コルに登りの3分の1の25分で下りてしまう。そこで、シールを付けて、そこから越える6つのピークのアップダウンに備える。


 そこからは何度か登りもあるが、それほど急なところもなく、左手に登りでは見えなかった遊楽部岳や臼別頭を眺めながら、ひたすら登りのトレースを辿る。シールを外した最後の481ピークを越えると、かんじきの足跡が縦横無尽に付いている。鉄砲打ちのものであろうか?車道に出て、除雪壁の上を不思議そうな表情で眺める運転手の視線を気にしながら、Saさんの待つ車のデポ地点へ戻る。下りはわずか1時間であった。

 悔しがって話を聞くSaさんの運転で、八雲温泉のおぼこ荘で汗を流し、途中ドライブインでラーメンを食べて無事帰宅する。久しぶりに大満足の2日連続の天候に恵まれた山スキー行であった。


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