[9]   狩場山(1、520m)   

 千走川旧道コース〜新道コース] 1997,7,12 

花との出会いを楽しみに、旧道から新道への一巡コースを辿る
2:45 自宅発(函館)
6:00 賀老高原駐車場
登山
(千走旧道コース )
6:15
8:45
9:45
旧道登山口
お花畑
頂上
[3:30]所要時間
下山
(千走新道コース )
10:45
11:25
12:30
13:30
頂上
真駒内コース 分岐
新道登山口
旧道登山口
[2:45]所要時間

13:40 賀老高原駐車場
14:30 北桧山温泉
17:30 帰 宅(函館)

 最高の天気予報に、5年振りの狩場山再訪を決める。前 回は8月末の千走新道コースの往復であったが、今回は、 前回とは違う花との出会いと初めての千走旧道コースを登 り、新道コースを下る一巡山行を楽しみに出発する。
 東狩場から頂上を望む
 途中、食料を調達しようとしていたコンビニが北桧山に も瀬棚にもなく焦る。諦めて寿都まで走って戻って来よう と決め、島牧の国道から登山口となる賀老高原への入る道 の所まで来る。なんとその地点にある雑貨屋が5時半にも かかわらず玄関が開いている。恐る恐る入ってみると、も うやっているとのこと。大いに助かる。 登山口になる賀老高原キャンプ場までずっと舗装されている道を走る。登山者のテントもかなりあるらしい。準備 しているとき、一人の若い人がスタートして行く。

  初め、新しく調達した登山ストックを持たないで出発す るが、その効果を試したくなり、5分程で戻る。改めてスタートし、「シラカバ街道」と標識のある林道を10分くらい歩くと、登山道に入る地点に到着。車がすでに5台程駐車しているが、様子からして、登山道整備に入っている方々の車らしい。その証拠に、スタート地点から道の両側が新しく刈り払われている。

  小さな沢を数本跨ぐと、美事なブナ林の中の急斜面に差し掛かる。新しく用意した高度計は600mを示している。この高度計は、高さから地図上での現在地点を割り出すために前から欲しいと思っていたものである。高い時計型のものしかないと思っていたが、単独の物があることが分かり、購入したばかりである。
 

「青春狩場山」 浅地氏画

 まもなく、登山道整備のメンバーを追い越すが、その後が凄いブッシュである。顔の高さまで木の枝や笹が生い被さり、太い幹の下を四つん這いになって何度も潜ったりで、バンダナを海賊被りに変えて頭を保護しながら登る。足元も結構大きな石が露出していたり、しかも展望はまったくなしの黙々と登るしかない急登である。 早速、ストックの効用を試すべく長さを調節し使ってみる。「四輪駆動の歩き」と言った人がいるそうだが、確かに落差の大きなところ、滑るところ、バランスの保持など、これまでは周りの木の枝や笹に掴まっていた代わり以上の効果がある。

 やがて、傾斜が緩くなると、周りの木はダケカンバに変わっている。右手に円い頂きを持つ東狩場山が頭を見せ、その基部を目掛けて緩やかな尾根道をしばらく登る。休むきっかけも掴めず、1時間程の4合目標識の地点で最初の休憩をとる。さらに、道を覆うダケカンバの枝や笹を掻き分けながら、東狩場山の急な南斜面を横切る地点に差し掛かる頃、15分ほど先にスタートした若い男性が休憩しているところに追いつく。

 まもなく、視界が開け、南狩場と頂上を頂点とするどっしりとした台形の腹の源頭部に雪渓を抱いた狩場山が見える(1)。左手にカスベ岳やメップ岳も続いている。 ハイマツが出現し、展望は広がるが、その辺からのトラバースの道が凄い。左足の部分が急斜面になって切れ落ち、しかも草に覆われた靴幅位の細い道が続く。まもなくして、登山道整備のため登っている別の班の人達が休んでいる所に出会う。ところが、あまりの急傾斜のトラバース地点の狭い道のため、擦れ違う場所がない。せっかく休んでいたのに、慌てて、前の方に進んで幅の広いところまで行ってくれる。 トラバースが終わって、ほっとするも、お花畑へのコルに下りる道が、これまたすっかり笹に覆われて道が見えず、足で踏み跡を探りながらの歩行である。ようやくそこを抜け出し、目の前にロックガーデン風な岩を配した大きな雪渓のお花畑に出る。
頂上への稜線の花畑
 2時間半、藪と格闘しながらの息のつけない登りからようやく解放された感じである。 「お花畑」の標識があるも、それほど花の姿が見えない。リュックをおいて雪渓の下部の岩の上を伝って、黄色の花が見えるところまで行って見る。イワイチョウの群落の中にシナノミンバイ、ミヤマキンバイ、フギレオオバキスミレ、ウコンウツギ、ベニバナイチゴなどの花が咲いている。振り返るとその斜面をトラバースして来た東狩場山が見える。

  15分程のんびりし、頂上へ向かい、いくつかのピークを越える尾根道を登る。一つ目の小さなピークから次のピークにかけての稜線(2)は、下の花畑に咲いていた花の他にニッコウキスゲ、クルマユリ(3)、チシマフウロ、トウゲブキ、ハイオドギリ、エゾシオガマ、ハクサンボウフウなどが咲き乱れる花園である。急な登りも、それらの花に癒されて苦にならない。その後、ハイマツや笹の急登もあるが、青色が強いシラネアオイ、源頭部の斜面には、アオノツガザクラの群落も現れ、快適な道である。 やがて、足元にヨツバシオガマやアオノツガザクラやミヤマキンポゲが咲く広い平坦地に出る。頂上はもうすぐである。真駒内コースからの合流地点で休む人、頂上から下りてくる女性のグループなどと挨拶を交わし、ハイマツに囲まれ、三角点と小さな鳥居のある頂上へ到着。
クルマユリ
 頂上には3人の男性が寛いでいた。頂上の下の北海道を代表する険しさで有名な深い須築川渓谷を覗き込み、その北側の稜線上に微かに踏み跡が続く最長の茂津多コースを目で辿る。これまで、北桧山の真駒内コースから2回、島牧の千走新道コースから1回、そして、今回の千走旧道コースから計4回、この頂上に立っているが、あと、残っているのが、この12kmあるという茂津多コースである。この次、この頂上に立つときは、いずれ廃道の運命にあるというこのコースにしたいものであるが、恐らく凄い藪漕ぎであろう。

 気温は高いが、風が強い。頂上下の周りにミヤマキンバイの咲く岩影に陣取り、休憩、昼食にする。まもなく、頂上で、「旧道コースの藪は生い被さって、凄かったですか。」と聞かれた二人の男性が旧道コースへ下りて行き、途中追い越した青年が到着する。入れ替わるように「沢を登ってきた」と言う青年も下りて行き、すぐ、頂上へ行ったばかりの青年も「もっと見晴らしのいいところでのんびりします。」と言って、新道コースを下りて行き、一人になる。須築川渓谷から吹き上げて、千走川の方へ流れて行く薄いガスを眺めながら、1時間程のんびりする。
親子沼
 頂上では一人っきりの時間が長かっただけに、下山を開始してからの新道コースを登ってくる人の多さにびっくりする。40人ほどと擦れ違ったような気がする。 アオノツガザクラの群落やそのはるか下に見える賀老高原、「親子沼」(4)という小さな沼とイワイチョウの群落や表面に聳える山々を眺めながらだだっ広い平坦な道をのんびり下る。

 南狩場の険しい岩場のピークを越え、急な下りに差し掛かるところで、ストックを使ってみる。確かに膝にくるショックを和らげる働きがある。それでも一回滑って転んだが、転ぶ回数は減るであろう。登山口までとうとう使い続けてしまう。上の雪渓は、きれいにスコップで削られ、最後の急な部分はご丁寧に階段まで作ってある。明日の山開きに備えてのことらしい。8月に来ると花畑になっているところであるが、まだ、花の姿は無かった。真駒内コース分岐から新道コースに入る。直ぐ下の下部お花畑となる雪渓を横切った方が近道なのだが、やはり花の姿もなく、正規の道を下る。

 途中、雪渓の端で冷たい雪解け水で喉を潤し、入れ物に汲んで下山を続ける。前にも感じたがハイマツやダケカンバの幹や根を跨ぐことが多い結構急な道である。ストックの効用を実感しながら、真下に見える車と高度差の縮み、振り返っては雪渓の上に聳える南狩場のピークとの高度差の広がりを楽しみながら登山口まで下りる。

 今年一番の暑さの直射日光の下、登山口の下の橋の上で、工事関係者が昼寝をしている。スパッツを脱ぎ、ジャージを膝上まで捲り上げ、車を置いてある5km先の旧道登山口下の駐車場までの林道歩きに備える。 1kmほど下り、二つ目の沢合いの所に車があり、そばに頂上で会った沢登りをしてきたという青年がいる。こちらの質問に「滝は 20mと 30mのが二つありますが、高巻きがあるし、あとは、ちょろい沢ですよ。只、雪渓が多く、水量も多くて余計な高巻きをしなくてはならなかったのがきつかったです。」と爽やかに言い放ち、「よかったら、車に乗って行きませんか。」と誘ってくれる。うれしかったが、今直ぐ出発といった感じでなく、甘えると、急いで準備しなくてはならない様子だったので、「の
んびり歩きます。」と言って別れる。

 途中、乗用車が3台程追い越して行くが、声を掛けてくれる車はなかった。初めから歩く積もりだったので、とくにがっかりはしないが、ちょっと残念な気もする。35分程のところで、反対に歩いてくる同年代の男性と擦れ違う。「下から何分掛かりましたか?こっちは下りで35分ですが・・・」と聞くと、「25分です。」と答えてくれる。おおよその目安がつき、元気が出る。 真っ直ぐ伸びる林道の表面に、頂上からずっと気になっていた形のいい山が聳えている。方向からよく考えたら、大平山である。昨夏、右の尾根を登ったが、この方向からら見える形が一番いいようである。思わずカメラに収める。 そこから25分ちょっと前、もう少しで到着というところで、沢登りの青年の車が丁寧にお辞儀をして通過して行く。スタートしてから7時間15分のゴールである。

 靴を脱いでいたら、後ろから「先ほどはどうも」と声を掛ける男性がいる。林道で擦れ違った男性である。「赤い車に拾ってもらい、いま着いたところです。」と言う。お互い要した時間を交換しただけなのに、わざわざお礼を述べに来てくれるなんて、なんと嬉しい気遣いであろう。反対に「わざわざ、ご丁寧にありがとうございます。お疲れ様でした。お互い気を付けて帰りましょう。」とお礼を述べて別れる。

  賀老の滝にも千走川温泉にも寄らず、島牧に出て、途中の新装した北桧山温泉で汗を流し、さっぱりし、さらに車を走らせる。途中から、狩場山を振り返ったがガスに覆われてその姿はなかった。


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