日本百名山にも選ばれている岳人あこがれの北海道を代表する山の一つでもある。一般的なルートとしては、直接登れ、日帰りも可能なトムラウシ温泉コース(94、7、31〜8、1)のほか、深田久弥氏も歩いた天人峡コース(98、7、31〜8、1)十勝連峰からの縦走コース、旭岳や黒岳方面からの縦走コース、石狩連峰から沼の原経由の縦走コースなど5ルートがある。その他にウワウンナイ川からの沢ルート(02,9,7〜8)も有名である。



化雲岳トムラウシ山 [天人峡コ−ス往復] 98,7,31〜8,1

長いコースを往復し、トムラウシの懐に抱かれて一夜を明かす。

登山地点下山
 5:00
 5:40
 7:20着
(朝食)
 7:50発
 8:40
10:40
11:30着
(昼食)
12:20発
12:40
13:20
14:35
15:00
天人峡登山口
滝見台
高層湿原入口

高層湿原入口
第二公園
1950ピ−ク
化雲岳

化雲岳
ヒサゴのコル
天沼
北沼(テント泊)」
トムラウシ
    13:30
    12:45
    11:30発
    (昼食)
    10:40着
    10:00
     8:30
     7:50発
    (休憩)
     7:30着
     6:50
     6:10
15:50  5:00
15:30
[10:00]総所要時間 [8:50]
前々日の夜から、日高の1839m峰を「北海道百名山一人歩き完登ゴ−ル」に据えて、登山口で2晩粘ってみたが、天候が回復せず、その後の予報も悪いので諦めて無念の撤退。8月1日の夜に天人峡温泉で会合があることもあり、天気予報の良い大雪の方へ移動し、前日、富良野岳と上ホロカメットクへの再訪、そして、2日日程で、天人峡からトムラウシ山への往復登山の挑戦に計画を変更する。

 当初は、考えていなかった計画変更なので、ガイドブックも地図も持たない山行となる。化雲岳まで上がると、そこからトムラウシまでは一度往復しているので心配ない。化雲岳まではとにかく長い単調な道であるという以外情報はない。午後3時まで歩いて、トムラウシまで着かなかったら、適当な場所で野営しようという一人歩きならではのかなりアバウトな計画である。

○ 天人峡からまず化雲岳を目指す。滝見台からの羽衣の滝
 公営駐車場で車中泊し、朝を迎える。2日間の天気予報はそれ程良くはないが、雨の心配はないようである。曇り空のもと、登山口に取り付く。「トムラウシ山まで17km」という標識に漠然と10時間もあればという思いで、いきなり、忠別川の削った急な壁を間隔の短い三十三曲りの道が嫌になるほど延々と続く。高度計を見ると300mも一気に上がり、天人峡温泉が眼下に見える平坦な尾根に乗る。

 まもなく、羽衣の滝を対岸の上から眺める「滝見台」(1)へ到着。一度下から見上げたことがあるが、ここからは、まさに羽衣が岩に張り付いているようなゆったりした優美な姿である。高い山々はガスで覆われていて、滝の右上に見えるはずの旭岳も姿見の池辺りから上はガスの中である。
 
 10分程休んで、今度は忠別川を眼下に見下ろしながら、時には足元から垂直に切れ落ちている場所にロ−プが張られているといった崖の上の尾根道を登る。やがて、川からも離れ、トドマツ林からダケカンバ林へと入って行く。標識や距離表示もはっきりしていて、なんの情報も持たない自分にとってはありがたい。4.5km 地点でちょうど2時間である。
第一公園のタチキボウシ
今度はまたかなりの急斜面をジグを切って登って行くと一面平坦なところとなり、アカエゾマツガ点在する高層湿原特有の景観となる。紫色のタチキボウシが一面今を盛りと咲き誇っている(2)。ここが第一公園らしい。その入り口で簡単な朝食をとることにする。本来は、周りに大雪の山々が見えるのであろうが、1800m 以上の山はガスを被ったままであるのが残念であるが、風もなく、小鳥のさえずりと周りの花々とアカエゾマツが醸し出す静かな湿原の朝のひとときを味わう。

 第一公園を抜ける手前で、若い夫婦連れと思しき二人が下りてくるのと出会う。湿原を抜け、水が流れ、ぬかるみもあり、足元の滑イワギキョウの群生る両側が刈り払われた笹藪の中の道を抜けると、第二公園に入るが、第一公園のようには広くもないし、それ程の景観でもない。小学校2年生くらいの女の子を連れた夫婦が下りてくる。女の子に「えらいね。おもしろかったかい?」と聞くと、「おもしろくなかった。」と答える。父親が慌てて、「おもしろくなかったの?」と聞くと、「あんまり・・・」としかたなさそうに答える。子供は正直でいい。父親にすれば、不満な答えかもしれないが、変化のない単調な長い道であるし、今は、つまらない泥んこ道歩きである。当然の答えであろう。親の楽しみの犠牲になったのかも知れない。自分もそんなことがあったのだろうと少し胸が痛む。

 正面のピ−クに向かって登山道が続いているのが見え、それから上はガスの中に消えている。第二公園を抜け、再びハイマツ帯の急な上りになる。足元は川底のような大きな石がゴロゴロしている。6人程の人達と擦れ違い、ピークの上に立つと 8kmの距離標識がある。ちょうど4時間である。そこから少し進むとイワイチョウが一面に広がっている雪田跡の花畑に出る。その中に咲くヨツバシオガマ、チシマリンドウ、ハクサンフウロ、ウサギギク、コガネギク、ウメバチソウ、花の終わったチングルマなどを眺めながらゆっくり休む。ここが、距離的にちょうど中間地点(約 8.5km)辺りであろう。
ウサギギクの群生
 そこから少し急な道を進むと森林限界を抜け、広い緩やかな砂礫の道となる。ガスの中でよく分からないが、高時計が 1900mを示しているところを見ると、もうこれからは急な上りはないだろうと期待して歩を進める。ガスの流れる中に浮かぶコマクサのピンク色が疲れを癒してくれる。

 いくつかピークを越えるが、どこのピークなのかまったく分からないまま、だんだん体全体に感じてくるリュックの重さを、イワギキョウ(3)ウサギギク(4)、チシマツガザクラなどの大群落に慰められながら、ゆったり進む。やがて、奇岩の多いピーク(帰ってから地図を見て分かったが、1947m ピ−ク)を越えると、岩の点在する中にアオノツガザクラの大群落が広がる。緩やかな斜面を上って行くと、忠別川の崖の上に出る。そこで、寝転んで10分程休憩する。上空にはガスの切れ間が広がり、ポカポカと暖かく気持ちがいい。。
化雲岳頂上(化雲のへそ)を望む
 気を取り直して歩き始めると、緩やかな広い斜面の向こうのガスの切れ間にあの 「化雲のへそ」が見える。青空も覗いてきて元気が出てくる。前は、トムラウシの方からアプロ−チしたために、あのへそはピークの上に乗っかっている岩のような感じに見えたが、こちらから近付いていくと、忠別川の下から延び上がる急な岩稜のピークであるのにはびっくりした。(5)
 スタートしてから 6時間30分後の11時30分、4年ぶりの化雲岳頂上である。長いとは聞いていたが、本当に長いコース(11,5km) である。頂上には、3人の若い人が休んでいた。「5時に出て、もう着いたんですか?速いですね。このコースは下る人はいても、登ってくる人はいないと思っていました。」と感心される。途中、雪渓がほとんど見えなかったので不安になり、南沼キャンプ地で水が採れるか聞いてみたが、「これからトムラウシまで行くんですか?」と再びびっくりされ、それなら北沼で採って煮沸した方がいいとのことである。

 ゆっくり昼食をとり、一人で休んでいると、黒岳から縦走して来たという一人歩きの同年代の男性が到着する。お互い、一人歩きは話が弾む。栃木県の人で、初めて北海道の山へ来たとのこと、「それなのに、天候が悪く、花もピークを過ぎていて(例年よりは半年は早い)残念ですね。」と言うと、「これでも十分満足です。来年から毎年来ます。次のお勧めの山はどこですか?」という嬉しい言葉。今日は、ヒサゴ沼の避難小屋に泊まるとのこと。


つづく 「トムラウシを目指す」へ

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