17日目 2004、10,21 (晴れ) 37番  <33.2km> トータル<449,3km>    

<大谷旅館>7:15→(22.9km)→37岩本寺→(10.3km)→15:55<佐賀温泉>(佐賀町)

○台風一過のそえみみず遍路道
 7:15、台風23号のために停滞し、2泊した中土佐町の大谷旅館を出発する。台風一過の快晴で無風という昨日の暴風雨が嘘のような天候である。今日は、3日ぶりの札所となる37番の岩本寺を参拝し、この旅で初めてのうれしい温泉泊である。1日たっぷり休んだので、体が非常に軽く、足も快調である。
 
 この中土佐町の長沢から隣町の窪川町の床鍋を結ぶ遍路道は谷沿いを歩く「大坂遍路道」と標高409mの峠を越える尾根道の「そえみみず遍路道」の2コースがある。前者は明治25年に開通し、現在の国道が開通するまでの新しい街道で、後者は、それまでずっと使われていた昔からの街道である。今回は、当然、そのそえみみず遍路道の方を通ることにした。当時はこの道は往還(今の国道)と呼ばれていたらしい。

 そえみみず(添蚯蚓)は、昔から旅人泣かせの「角谷、焼坂、添蚯蚓」と言われた難所のひとつであったらしい。角谷峠と焼坂峠は一昨日通ってきた峠である。約300年前に書かれた「土佐州郡志」には、「ミミズが這った後のようにうねうねと曲がりくねっている道」だからこの名が付いたと書かれているが、「末見えず」がそえみみずになったという説もあるらしい。

 この道は、道が昔のまま残っているということ、道中には弘法大師ゆかりの遺跡や遍路墓があることなどから、遍路道保存会と地元が協力して、平成になってからこの道の整備に当たって脚光を浴びた遍路道だそうである。実際歩いてみて、まさその感を強くしたし、昨日の台風で木の枝や木の葉はたくさん落ちているが、ぬかるみなどは一切なく、非常に快適な山道である(1)。

 この峠道へ入って20分ほどで、先に宿を出たAさんに追い付く。彼は、今日は岩本寺に泊まるので、のんびり歩くそうで、先に進ませていただく。俳句を詠みながら歩く彼には、この遍路道のあちこちに俳句の書かれた木札がぶら下がっているのがうれしいようである。峠の頂上の手前には、昔、弘法大師が結んだ「海月庵」や茶屋があったそうだが、今はその平らな屋地跡や石仏が残るだけである。少し進むと海や眼下に国道が見えるところがある(2)。やがて、窪川町との境界の稜線を越えると下りになる。この辺りは両側がみごとなヒノキ林である。

 この4.3kmの峠道を1時間15分で抜けて、9:00ちょうどに国道36号線へ出る。岩本寺まで13.3km地点である(3)。その後も、5.5kmは国道を通らず、それと平行して山沿いに続く山村の昔の街道を歩く(4)。

○ヒノキの里窪川町と岩本寺
 窪川町に入ると、ヒノキの里と称しているだけあって、周りの山はすべてみごとなヒノキの山である(5,6)。岩本寺の3kmほど手前の「道の駅あぐり窪川」で昼食(あぐり昼膳)を摂る。お寺の手前の少し低くなったところで、家具を外に運び出している家が数軒あるので聞いてみたら、「昨日の台風で、四万十川が増水して支流にあふれ出して、水浸しになった。」そうである。

 12:10,  市街地の直ぐ山側にある37番寺の岩本寺に到着(写真撮り忘れ)。実に前の36番の青龍寺から58.5kmも離れた上に、昨日の停滞も合わせて3日ぶりの寺である。読経するのも久しぶりのような感じがする。

○これまでとタイプの違うお接待2件
 この間、今日はこれまでとは違うタイプのお接待を2度受けた。1件目は、そえみみず遍路道へ入る手前で、農家のおばあちゃんが生け垣越しに「ちょっと待ってください。お接待させてください。」と家へ入っていき、手篭を持って出てくる。中にはお接待セットともいうべきせんべいとキャンディの詰め合わせと紙パックのウーロン茶、5円玉の入った手作りの可愛い巾着と(7)、そえみみず遍路道の説明を書いたコピーである。まず、丁寧にこのそえみみず遍路道の由来や今の様子を説明してくれた上で、そのセットを渡して下さる。きちんとこのような自分なりのお接待セットを用意して、遍路さんを見たら声を掛けてお接待しているらしい。感激して合掌したい気分になる。

 もう一件は、国道56号線の窪川町の仁井田の辺りで、国道の向かい側の歩道を歩いていたおばあちゃんが、わざわざこっちへ渡ってきて挨拶され、「私も遍路をしたことがあって、遍路さんを見ると黙っていられないの。」と言って、200円(7)を差し出してくださった。これもありがたくきただき、丁寧にお礼を述べて別れる。

○入口を見落として後半しか歩けなかった市野瀬遍路道
 国道56号線の窪川町と佐賀町の境界付近はトンネルになり、かなりくねくね道路になっているが、その手前から昔の街道の峠道が遍路道となっている。しかし、その入口を見落として、そのまま国道を1km以上も進んでしまう。

 これまで、忠実にどんな遠回りでも昔の面影を残している遍路道をすべて歩いてきただけに非常に残念である。その遍路道は途中で国道を横切るはずなので、その地点を探しながら進むと2つ続くトンネルの間にそれを見つける(8)。1つ目のトンネルの上の尾根を下りてきているのである。そこからはヒノキ林と竹林の中の急斜面につづら折りに続く急な道であるが、ここも自然のままの道である。

 それを抜けたところに、今日の宿の看板が立ち「3.5km」の表示があった。国道を横切り、遍路地図には赤い線は入っていないが、東側の山側に国道とほぼ並行な農道に「四国のみち」の標識が立つ遍路道が続く。さらに一度国道を横切り、今度は西側の農道を拳ノ川小学校まで進むと佐賀温泉の建物が見えてくるので、国道へ出る。

○この旅で最初の温泉宿「佐賀温泉」
 16:00少し前、予定通りに佐賀温泉に到着(9)。この旅で初めての温泉旅館である。これまでの道沿いに温泉はなかったこともあるが、今日はちょうど距離的にもよい具合にここを宿にすることができた。

 「四国唯一の高濃度天然温泉」が謳い文句の温泉だけに微かに硫黄の臭いのする肌触りの非常に柔らかい温泉である。この旅に出る前は1週間に3度は温泉に入っていただけに、実に20日ぶりのうれしい温泉である。

 ただし、朝食が8時からで、早出の人にはお弁当も用意できるというので、そのようにしていただく。寝る前にもう一度入浴しよう。

○支出
スポドリ150円、昼食(あぐり昼膳)920円、ビール500円、宿代7,830円<合計9.400円>

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