夕張・中岳(1493m)<芦別市> 
<十八線川ルート>  9名  12、5,20
全道各地から集まった藪山仲間7名で、二つのピークを持つ夕張小天狗へ全員初登頂

登り
地 点
下り
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5:30
6:00
6:30
8:30
9:30
十八線ゲート
林道終点
テン場着
 〃  発
1196コル
湿原
東尾根取り付きコル
頂 上
16:00
14:50
13:25
12:45
12:20
11:30
10:30
10:00
[4:00]所要時間[6:00]

17:00 富良野ラベンダーの湯(入浴)

 中岳・・・芦別岳のすぐ北西に鋭く天を突いて聳える非常に目立つ端正な尖峰である(1)(前日の小天狗南峰から撮影)。これほどの山なのに、月並みな山名の上に、地形図にはその山名も標高すらも記載されていない。したがって、この山を目にしても、地形図でその位置をすぐに見つけるのも苦労する。あまいものこさんによると、昔の地図に「鉾ヶ峰」と記しているものがあったとか・・・そちらの名前の方がずっと相応しい姿である。

 この山を目にして以来、身の毛もよだつ急峻な姿に、自分にはとても登れる山ではないと思っていた。しかし、一度登頂している「地図がガイドの山歩き」のsaijyoさんによると、アプローチの東尾根に雪があって、その上の斜面の藪が出ている5月20日前後が一番の狙い目だとのこと。「坂口さんでも絶対登れます」とのこと・・・その彼から前日の小天狗とセットでお誘いが来た。しかも、心強い全道股に掛けた藪山仲間が一緒である。

 前日小天狗へご一緒したチロロ2さんとチロロ3さんは一度登頂していて、「あんな怖い所へは二度と行きたくない」とテン場で待つことになった。saijyoさんをリーダーとして、やはり一度登頂済みの名寄のEIZIさん旭川のOgiさん、この山で全道の標高500m以上の山踏破まであと3山になるという札幌のKo玉さん、北見山岳会のyoshidaさんを初めとする4名を合わせ9名でトライした。

○まずは、中岳の東尾根取り付きコルを目指して

 槙柏山と御茶々岳とのコルのテン場で小鳥のさえずりで目を覚まし、無風快晴の朝を迎える(2)

 昨日の経験から、かんじきやスノーシューは置いて、ピッケル持参の日帰り装備でスタート。

 御茶々岳から派生する南東尾根に乗ったら、帯のような雲海に覆われた富良野盆地と十勝連峰の幻想的な情景が目に飛び込んできた(3)

 その右側には、目の前に屹立する迫力満点の夫婦岩、その左奥には昨朝は姿を隠していた芦別岳頂上も見えている(4)

そんな贅沢な景観を楽しみながら、昨日のトレースを辿り、主稜線上の1196コルを目指す。途中で、前日の下山時にOgiさんが見つけたという水場で水を汲む。

 コルからは、昨日登った小天狗の二つのピークと再対面。さくじつと〃眺めだが、登る前と登ってからではその山へ寄せる思いが違う(5)

 コルからは主稜線をそのまま進んで中岳へ繋がる吊り尾根稜線を辿っても可能だが、かなりの高度差のアップダウンがある。したがって、一度広々とした湿原に降り立ってから中岳に繋がる稜線に登り返す。この方が無駄がなく距離も短く効率が良さそうだ。


 湿原は2段になっていて、奥の方が低く、その先の青空の下に凛とした中岳の雄姿が望まれる(6)

湿原からは、中岳へ繋がる稜線の1298ピークの西コルを目指して登っていく(7)

 稜線に乗ったのは良いが、一ヶ所とんでもないナイフリッジの上にハイマツの幹が張り出しているだけの所があった。
ハイマツの幹の下は全て空中で、一歩足を踏み外したらと思ったら、体が硬直してしまう。大騒ぎしながらへっぴり腰で恐る恐る通過した。後続もその様子を見たら怖くなったと言って、四つんばいで渡ってきた(8)

 自分にとっては、一番心配していたこの後の中岳の急斜面の雪渓よりここの方がずっと怖かった。まさに核心部だった。
 



目の前の最後のピークを越えると、中岳への取り付きコルである。目の前に見える雪渓と藪をどのように繋いで登っていくか考えながら近づいていく(9)

○いよいよ核心部の急斜面を登り、頂上へ

 コルにストックや不必要な荷物を置いて、空身同然で45度以上もある急斜面に取り付く。先頭を切ってルートファンディング買って出てくれたEIZIさんに「なるべく命の心配のない藪中でも良いから安全なルートをお願い」と言う。

 ところが、藪は一部で、ほとんど雪渓を登っていく。確かに効率良く高度を稼げる。登りは目の前に斜面があるので、それほど怖くはない。ピッケルをしっかり刺して、ステップを確実に切って登っていく(10)緊張していたせいか、思っていたより早く頂上直下のハイマツで覆われた南尾根に出た。強烈なハイマツ漕ぎの末、岩場の上の頂稜に乗る(11)。頂上は目の前である(12)


 頂上は思ったより広くて、十分くつろげる状態だった。まずはみんなで集合写真の撮影・・・みんな快心の笑顔だ(13)。足元には今にも綻び出しそうなキバナシャクナゲの蕾が膨らんでいた(14)


 快晴無風のポカポカ陽気の下、360度遮る物のない大展望を楽しむ・・・南側には芦別岳とその右側に夕張岳までの夕張山系の展望が広がる。芦別岳のすぐ右のポントナシベツ岳、緩やかな鉢盛山、その右手には、やはり地図には山名が載っていない夕張マッターホーンとシューパロ岳・・・これらの山も機会があれば登ってみたいと年甲斐もなく思ってしまう(15)


東側には2回登った後に入山禁止となったきりぎし山とそのずっと奥に増毛山塊(16)。東側には布部岳、富良野西岳、松らい山の頭と御茶々岳の向こうに表大雪と十勝連峰(17)

 下りの雪渓は本当に怖かった。一歩一歩ピッケルを刺してへっぴり腰で慎重に下る。自分の恐がりをよく知っているメンバーがいろいろと心配して声を掛けてくれる。一度尻滑り状態になってヒヤッとしたが、すぐに止まって事なきを得た。

 コルまで下って、改めて上り下りした斜面を見上げる。登る前には、左側の南尾根の下の岩場の下の雪渓を利用して岩場を左から巻く予定だったが、どうやら赤線のルートを登ったようだ(18)道理で、藪漕ぎが少なく雪渓歩きが多かったわけだ・・・。遠くから眺めていると、果たして登れるだろうかと心配だったが、近づくと案ずるより産むが易しの感があるものだ。ただし、これが全て雪で覆われていたら自分には登れたかどうか分からない。

 来るときに怖かった稜線のナイフリッジのところは、その手前から下の斜面を巻いて、直接湿原に出たので楽だった。登りもこのコースの方が安心コースである。

 テン場まで戻り、更に縦走装備のリュックを背負って前日のトレースを下る。しかし、雪解けが早くて、下の方はそれが分からなくなっていた。一部藪漕ぎをして作業道跡へと出ることができた。

 自分には登れない山だと思っていた昨日の小天狗と今日の中岳だが、仲間のお陰でなんとか登ることができた満足感とその余韻に浸りながら長い林道歩きの末にゴール。今日も11時間の長丁場だった。

 ふらのラベンダーの湯で2日間の疲れと汚れを落として、解散となった。



前日の夕張・小天狗へ


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