○空沼岳を目指し、縦走路を進む。
縦走路から札幌岳を振り返る
 札幌岳頂上から、いきなり標高差160mという岩混じりの物凄い急斜面を周りの物に掴まりながら慎重 に下る。振り返ってその鋭い迫力ある頂上を見上げ、びっくり(1)。やがて、快適なコル の尾根道を進む。道端にはツバメオモトの可憐な白いつぼみが続いている。ダケカン バ、ミヤマハンノキ、ハイマツが混じり、緩やかな起伏が続く気持ちの良い整備され た道が続く。ただ、上空が曇って北たのが残念である。   

 右側に鋭く聳える狭薄山を見ながら進むも、上空はガスが濃くなってきて、薮漕ぎ状態のときは心細くなる。途中、空沼岳方面の展望が開ける部分で小休止。しかし。 目指す空沼岳はガスの中。まもなく静かなたたずまいのヒョウタン沼(2)に到着、ガスの 晴れ間から覗く太陽の光を浴びながら小休止。
 
 やがて、左下に大きな真簾沼が見える辺りから雪が多くなり、足跡もなく、道が分 からなくなり、まごつくことが多くなる。とくに急斜面をトラパースする地点では、 滑り落ちたら谷底までといったところや、上の方が雪崩の危険性のありそうな大きな 割れ目が走っているところなど、一歩一歩キックステップしながら慎重に進む。  
縦走途中の静かなヒョウタン沼
 「夏山ガイド」には、縦走路2時間と記されていたが、どうも怪しい。その時間か ら予想したよりかなり遠い。(帰宅してから、別な本を見たら、3時間と記載されていた。)急ぎ足で進むもなかなか縦走の終盤に辿り着かない。 ようやく ガスから頭を出した北側が鋭く落ち込んだ空沼岳の頂上もかなり向こうに見える。下 山してからのバスの時刻が気になり、周りの展望など味わう余裕もなくひたすら頂上 を目指す。
 
 ようやく万計コースの分岐に辿り着くが、コースを見下ろすとびっしり雪が着いて いて、多くの足跡だけが続いている。頭上に頂上の岩稜を見上げながら、岩混じりの 急登を巻くとようやく頂上到着。
 空沼岳頂上の岩場を歩く親子連れ
 頂上には、これから逆に縦走すると言う学校名の入った帽子を被った先生らしい人、 岩の上を歩く親子連れ(3)と夫婦一組、愛くるしいシマリスー匹。あいにくガスの中で展望は利かず。 時折、羊蹄山と尻別岳が姿を見せるだけ。それでも東側に向かって幅70cmぐらいの 細長い岩場が続く様が珍しい。その先に支笏湖方面が見えるはずの展望台があるらし いが、展望が利かない上に、時間もないので、濡れたシャツを取換え、昼食も摂らずに10分後に下山を始する。

○まさに沼巡りの万計コースを下る
青天に誇る
  あと2時間しかない。びっしり雪で埋まった北斜面を多くの足掛だけを頼りに滑るようにして下る。札幌岳に比べて地形の関係なのか、北斜面だからなのか、コースの半分程下の方まで雪である。 分岐から下ってまもなく、ひょいと薮に中から類を出した先頭の人の顛を見てびっくり、2年前まで函館にいてお世話になったF氏であった。懐かしい再会にしばらく歓談。その後も、急な沢地形の美しい新緑と雪のコントラストの中を下る。普通の運動靴だけで足元をずぶ濡れにして登ってきた一行に出会った。下の方の泥んこ道をよく通過して来たものだと思う。
真廉沼
 その沢地形を下りると、縦走路から見下ろした広く明るい真簾沼に出る(4)。下から見上げても縦走路の尾根も頂上もガスの中。ゆっくりしたいが、カメラに収めて、まだしつこく雪が詰まった道を下る。やがて雪からどろんこになり、足元を気にして下ると目の前に万計沼が広がる。目の前にコヨウラクツツジの赤い花が可愛い。湖畔に立つ空沼小屋と万計山荘の二軒の山小屋と沼のたたずまいがなんともしっとりしている感じがいい。

 空沼小屋を覗いて、下ろうとしたら、沼から下る道が無い。おかしいなと思い、後ろからきた人の姿を探すと沼から流れ出す川の中を歩いている。左岸に道らしい痕跡がある。ほとんど川の中状態である。途中、青沼という看板を目にし、前を歩いている人の後について小道に入って、小さな青っぽい沼を眺める。 その人に聞くと「登山口まで小1時間で着きますよ。」と言う。あとは木道が敷かれた湿った道や気持ちの良い林の中の道を走るように下る。バスの時間が近づくも登山口が見えない。諦め半分でちょうどバスの時刻に登山口到着
 
 人はたくさんいるが、バス停もバスの姿も見えないし、バスなど入ってこれるような道でもない。「バスはここまで来ないのですか。」と誰に聞くともなし呟くと、「もっと下」だと言う。地図で確かめると確かにあと2kmはど下である。もっと早く確認をしておくと、初めから次ぎのバスにしてゆっくりできたのにと悔しく思う。

 諦めて、泥んこになったスパッツを外す。昼食でもと思ったが、蚊がうるさくて、とにかくバス停のあるところまで歩こうと思い、林道を歩き始める。20分程歩いて、石切り場の登山口バス停の手前の川に下りて靴の泥を洗い落とし、橋を渡ると、止まっていた車の中から若い男性に「乗っていきませんか。」と声を掛 けられる。渡りに船とばかり好意に甘える。私が下りてきて「バスはここまでこない のですか。」と聞いたのを耳にして、乗せてあげようと思って来たのだそうで、橋の 手前の川で靴を洗っている姿を見つけて待っていたとのこと。その心配りに、財布に1万円札しかなかったことや気の利いたものも持ち合わせがなく、感謝の言 葉だけで済ませてしまったのは、今でも心残りである。申し訳なかったが石山陸橋まで乗せていただく。

 石山陸橋から定山渓行きのバスに乗ろうと時刻を見たら出たばかりで、次まで45 分もある。5つ程先のバス停までぶらぶら歩く。定山渓でバスを乗り継ぎ、豊平峡入 り口から30分程歩いて9時間15分後、ようやく振出しに戻る。この間、万歩計は 約3万歩弱を示していた。  
  
 帰路、中山峠から縦走したガスの晴れた二つの山とその間の距離を眺め、改めて自 分の体力に自惚れ、留寿都の登川温泉で汗を流して一路家路に着く。いつかは、沼の多い変化にとんだ空沼岳を中心に反対のコースを紅葉の頃にでもゆ っくりと歩いてみたい山となった。

「札幌岳・空沼岳」トップページへ戻る


このコースの写真だけのページへ
(まだ他に見ていただきたい写真があります。写真6枚あるので重いかも)


 「北海道百名山紀行」へ 次へ「手稲山」  HOMEへ
                                    

inserted by FC2 system