[37] ニペソツ山 (2013m) 音更川十六の沢コース] 94,8,2 

朝日に輝く迫力ある東大雪の最高峰の鋭いアルペン的山容との感動的な初対面に大感激!

4:30 糠平キャンプ場
登山 地  点下山
5:30
6:50
7:40
8:50
登山口
天狗のコル
前天狗下尾根
ニペソツ頂上
12:15
11:15
10:20
 9:15
[3:20] 所要時間[3:00]
13:00 幌加温泉(入浴)
15:00 帯広(買い物他)
16:30 幌加温泉(宿泊)

  この山を始めて写真で見たとき、その山容の素晴らしさに感激し、「北海道にもこんな山があるのか」と強烈な印象を受けたものである。「日本百名山」の著者・深田久弥氏が、その本を発表したあとに、この山に登って、「入れ替え」を真剣に考えたが、それが叶えられないうちに亡くなられたというほどの山である。(このホームページと相互リンクを張っていただいている日本百名山を完登されている京都の藤田さんは「日本30名山に入るほどの山」と述べている)
 小天狗の岩場と前天狗岳
  トムラウシ経由で忠別岳まで往復した2日間の疲れと天気予報の読みから、音更岳・石狩岳をとばして先に東大雪最高峰・鋭いアルペン的山容を誇る名山・ニペソツ山を目指し、糠平キャンプ場で天候もバッチリの朝を迎える。 登山口へ向う国道の途中、朝日に輝く山容を目にし、嬉しくなる。

 国道を北上して、登山口入口の標識から林道へ入り、音更川十六の沢コースの登山口を目指して進む。登山口にはまだ誰も来ていない。静かな独り占め登山になるうれしさで登山開始。丸木橋を渡り、いきなり両側が沢になっている急な尾根に取り付く。あっというまに高度を稼ぎ十六の沢がはるか眼下になる。

 この後、小天狗のピーク近くまで、同じような傾斜の針葉樹の森の尾根道を一定のペースで進む。途中、直ぐ側で鹿と思われる動物がガサガサと逃げていく音に2度程驚かされる。(クマではないと思うことにしている。)岩場になっている小天狗手前から前天狗が左前方に望まれる(1)。初めはこれがニペソツかと思ったが、ずいぶん丸みがあるなと思い、確かめたら前天狗であった。
天狗岳斜面からコル越しに望むニペソツ
 岩場になっている小天狗の下を通り、天狗のコルへ下る。ここには、テント跡が見られる。 前天狗の斜面を登り、ハイマツと岩礫の斜面に出ると石狩連峰や大雪連峰の展望が広がる。やがて、道が3つに別れる。真ん中の前天狗頂上をかわすコースを進む。まだ、目指すニペソツは姿を見せない。心急ぐも、出会いの楽しみを噛み締めるかのように前天狗頂上から続く尾根の上に立つ。

 見えた。これまで写真でしか目にしなかった鋭いニペソツの山容(2)が目前に朝日に輝いて、毅然と聳えている。その迫力と感動は、これまでに味わったことのないほどである。頂上まで、細い険しい尾根の上を辿るようなこれから歩く道がくっきりと見えるのもうれしい。 足元には、お花畑も広がり、目を楽しませてくれる。

 やがて狭い稜線を下り、天狗平を通りコルに降りる。コルからはこのコース最大の登りとなるが、目標は近い。頂上を見上げながら一歩一歩東側が崖状に切れ落ちる細い稜線を直登する。見上げると切れ落ちた東壁の上に切り立った頂上が望まれる。圧倒されそうな迫力である。振り返ると、これまた複雑な地形の天狗岳と歩いてきた道が見える(3)。
来し方の複雑な地形の天狗岳を振り返る
 やがて、稜線から北斜面をトラバースすると表大雪や十勝連峰の山々が望まれる。頂上付近に雲をつけているものの昨日歩いたトムラウシから忠別などははっきりと見える。

 もうすぐで頂上という地点で、思いがけない出迎えを受ける。オプタテシケやトムラウシでずっと鳴き声しか耳にしてこなかったナキウサギである。可愛い目をこっちに向けきょとんとした顔で目を合わすと、さっと近くの穴の中に消えていった。なかなか目にすることは難しいとされていたので、うれしい出会いである。

 そして、岩の露出した頂上(4)に到着。西は急斜面、東は崖、怖くて谷底は覗けないが、 360度の展望を堪能しながら、簡単な食事をとる。眼下に輝く糠平湖、直ぐ隣に聳えるウペペサンケのどっしりとした山容、明日登る石狩連峰(結局、雨で今回は断念)、オッパイ山と呼ばれる西クマネシリ岳とピリベツ岳、そして十勝連峰、表大雪、遠くに雄阿寒、雌阿寒の山々・・・・。快晴、心地好い風、誰もいない名山の眺めを独り占めし、満足感に浸りながら、下山開始。
頂上の様子
 まもなく、「東京から毎年のようにバイクで来て、北海道の山々を登り歩いている」という青年に出会い、10分程話をして分かれる。「本州のこのようないい山は人がうようよしている。こんなすばらしい山なのに人が少ないのがうれしいと」のこと。そこから、あらためて頂上を振り返り(5)、細い急な稜線の道をコルめがけて下る。

  前天狗の尾根から振り返り、じっくりニペソツの雄姿を目に焼き付け、「また、必ず来るからな、今度来るときも同じような姿を見せてくれ。」と別れを告げ、下るだけの足を進める。やがて、関西弁の元気のよい3人連れの老人が登ってくる。堺市の64,67,72歳の兄弟で、もう1週間程登り歩いているとのこと。昨日は、きつくて誰も下りにしか使わない石狩岳のシュナイダーコースを逆に登ってきたとか・・・私もあやかりたいと話しながら別れる。私も、退職後、本州の山を函館弁で歩きたいものである。
頂上を振り返る
 登山口の沢の水を堪能して、車で幌加温泉に向かう。途中、ついに目撃、熊である。可愛い子熊が2頭、土埃を立てながら車の前を一目散に逃げていく。早くどっかに消えてくれないかな、よく親熊が子熊を守るために車に体当たりしてくることもあるとか・・道が二股になっているところで、こっちとは別の道にそれて、それでも物凄い勢いで走って行く。つい可愛いので、写真と思ったが、トランクに入れてあり間に合わなかった。

  古い洋風建築で有名なホロカ温泉旅館の方に行く。今晩は雨になりそうなので、ゆっくりしたいこともあり、もし泊まれたらと思って聞いてみると泊まれるとのこと。とりあえず、温泉で汗を流し、コインランドリーを探しながら、貯金の引き出しなどの用事を兼ねて帯広まで走って戻る。

 ゆっくり温泉に漬かり、夕食にビールを2本、夕食は山菜中心とホウライニジマスの刺身の質素な料理であったが、この温泉の雰囲気にぴったりでうれしかった。 食事の後布団に寝転んでテレビを見ているうちに眠ってしまう。夜中ドードーと屋根を打つ滝のような雨の音で目が覚める。いい雨だ。音更と石狩は次の機会にしようと、明日帰ることに決め、また眠る。

  次の朝、朝風呂をゆっくり楽しみ、ごくありふれた朝食を食べ、雨の十勝路を抜け、7時間かけて帰宅する。


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