ニペソツ山(2013m) 2回目  [音更川十六の沢(杉沢)コース]   7名 04,6,27
94,8.02の「ニペソツ山」へ

HYMLの仲間に誘われて10年ぶりの感動の再対面と眺望はいまいちであったが、のんびりモードで多くの花と変化に富んだ行程を楽しむ。

6/26
17:00 音更発
18:15 糠平温泉・山湖荘(泊)
6/27
4:30  糠平温泉・山湖荘発
登山
地点
下山
5:35
7:40
9:20
11:10
登山口
小天狗岳岩場
前天狗下尾根
頂 上
16:50
15:30
14:15
12:20
[5:35]所要時間[4:30]
17:15  幌加温泉・鹿ノ谷旅館(入浴)
19:10 音更着 
東大雪では唯一2000mを越し、北海道の山では珍しく鋭いアルペン的山容が魅力の北海道を代表する名峰である。深田久弥が『日本百名山』を発刊した後にこの山に登り、一番先に入れ替えをしたかったという山で、それが叶わないうちに亡くなられてしまったとのことである。山名の由来は、十勝川の支流ニペソツ川の源にあることにより、ニペソツとはアイヌ語で「シナノキが群生するところ」の意だそうである。

 この山に登ってから10年の歳月が流れていた。十勝の仮住人である今年中にぜひ再訪したい山であったが、たまたま札幌のHYML仲間から「のんびりモードでよかったら、ご一緒にいかがですか?」との誘いを受け、同行することとなった。前日、HYML仲間でもある糠平温泉の山湖荘に宿泊し、翌朝を迎える。2日前までの天気予報は雨がらみであったが、うれしい晴天の朝である。

 ここ数年、林道の決壊などで登山口までは車で入れないという情報があったが、今回は幸いにもすんなりと音更川十六の沢と支流の杉沢との出会いの登山口まで入ることができた。すでに数台の車が停まっている。ちょうど、「北海道山のトイレを考える会」の一斉活動日でもあり、登山口にKoさんの預かってきた幟を立て、机を出しパンフレットを乗せて準備をしているところへ、林野庁の職員が「高山植物の盗掘を防ぐ」キャンーペン活動にやってくる。

 ゆったりペースに合わせるために7名の最後尾でスタートする。杉沢に架かる新しい二本の丸木橋を渡り、二つの沢に挟まれた細い急な尾根を登る。一気に高度を稼ぎ、眼下に杉沢が見える頃、斜度が緩み、鬱蒼とした針葉樹林の中の緩やかな尾根歩きとなる。展望もなく、足下の花も乏しい単調な道を黙々と進む。1500mを越すと樹林帯から灌木帯となり植生も高山らしい意雰囲気となり、小天狗岳の急登となるが、前回のときも小天狗岳の岩場までの標高差500mほどのこの部分の印象がほとんどないのが納得といった感じである。

 2時間ほどのゆったりペースでこのコースでもっとも緊張する小天狗岳の岩場に到着する。前回はロープが設置されていたが、今回はなかった。それぞれが上と下のルート取りでそこを乗り越える(1)。下を覗くと木の枝で底がよく見えないが垂直の岩壁のようである。岩場を越えると、コースの正面に前天狗が見えてくる(2)。

 岩場を越えると、天狗のコルまでの下りとなる。コルの前後は残雪の雪解け水の影響で登山道が泥んこ状態である。そこを抜ける1650m附近からハイマツやタカネナナカマドやミヤマハンノキなどの樹林帯へ入っていく。足下にはコミヤマカタバミが目立つ。1750m附近でそのトンネル状の樹林帯を抜けると展望が開けて、ハイマツ帯の中に岩礫とヒース模様の花畑が広がる。しかし、上空は晴れているのに、ここで対面できるはずの石狩連峰や表大雪、東大雪の山々は濃いガスの中である。

 ちょうどイワウメがその主人公を演じている花畑にの中の赤いイワウメやヒメイソツツジ、イワヒゲ、ミヤマキンバイ、わずか一ケ所だけのメアカンキバイ、エゾノツガザクラ、エゾコザクラ、ミネズオウ、コケモモ、クロウズコ、クロマメノキ、コメバツガザクラ、イワブクロの蕾などの花々を楽しみながら、のんびりと進む。前にはなかったロープでの登山道の規制箇所あちこちに増えている。(花の写真はまとめて次ページに掲載)

 ガスで果たして見えるかどうか不安を抱きながら、感動のニペソツ山との対面を楽しみにその地点である前天狗から延びる尾根を目指す。露岩帯を越えるとその前天狗下尾根である(3)。前回は快晴だったので、その対面が感動的だったが、今回は不安である。

 4時間弱でようやくその地点に到着。手前の天狗岳の鋭峰ははっきり見えるが、その奥のニペソツは東壁と頂上はガスに覆われたままでの対面である。しかし、ガスが少しずつ晴れそうな気配に、その動きに期待を込めながら休憩する。まもなく頂上がその姿を現すが東側の稜線はガスで覆われたままである(4)。

 帰りに期待しながら頂上を目指して天狗岳下尾根を越え、コルを登り返して再びニペソツと対面できる天狗平を目指す。鋭く天を突く天狗岳の斜面をトラバースして、このコース最大の登り返しとなるコルへの下りとなる。左側の山肌をイワウメに覆われた尖峰の下を通り(5)、まもなく、左側が崖となり、目の前に圧倒されそうな迫力満点の頂上とそこまでの登山道がはっきり見えてくる(6)。

 コルを越えると、このコース最大の急登となる。左側が垂直に切れ落ちる高度感満点の稜線を登り、やがてトラバースして裏側に回ると、目指す頂上はもうすぐである(7)。前回はこの辺りからナキウサギの声を耳にし、頂上直下での初対面ができたのであるが、今回はその気配すらない。

 前回一人で3時間20分で登った頂上にのんびりモードの5時間35分を要して10年ぶりの到着である。お陰でそれほど汗も掻かず、スポドリもわずか300ccほど飲んだだけである。しかし、登頂感や充実感は前回とは変わらず、仲間とのそれらを共有できる楽しさがあるのがうれしい。とくに7名のうちで唯一初登頂のYuさんの喜びは最たるものであろう。ビールの回し飲みでその喜びを分かち合う。

 前回は一等三角点は積み上げられた岩の間にきちんと立てられていたが、今回は根元をさらけ出したままゴロンと転がったままである。早速グループ登山でならではの昼食タイムである。

 昼食を終えて、頂上付近の花探訪である。東壁側の急斜面の岩の間にはエゾルリソウ、イワベンケイ、ミヤマズマギク、ミヤマオダマキ、チシマゲンゲなどが咲いている。蕾状態だから明確に分かるフタマタタンポポの蕾も見ることができた。しかし、頂上付近ではいくら探してもこの山にあるというツクモグサは見当たらなかった。(花の写真はまとめて次ページに掲載)

そうこうしているうちに、20人もの本州からのツアーが到着してきたので、慌てて記念写真を撮り(8)、下山開始となる。下山もまた花探訪の歩きである。コルを越えた1745m附近で登山道を挟むようにそこだけに生えているすでに花時期を終えたツクモグサの群生を見つける。あと10日も早ければちょうど見頃なのであろう。さらに、これも一箇所だけ誰かが植えたのでは?と思いたくなるような4株ほどのコマクサも目にすることができた。

 コルを登り終えて、後ろを振り向くと来るときより多少露出度をアップしたニペソツが別れを惜しむように霞んだその姿を現してくれる(9)。周りの東大雪や表大雪の山々の眺望にはとうとう恵まれなかったが、ニペソツの勇姿を見られただけでも満足である。そんな余韻に酔いながら花探訪を楽しみ、相変わらずのんびりペースの下山を続ける。

 花も無くなる小天狗の岩場からの尾根は黙々と下るだけである。沢の音が聞こえてきて、『夏山ガイド』の標準時間より、登りも下りも1時間増しの11時間半ほどにわたる楽しいのんびりグループ山行も終焉である。杉沢に架かる丸木橋を渡ってゴールインとなる(10)。

 「山のトイレを考える会」の幟とパンフの残りを撤収するが、残念ながら、パンフはほとんど減っていなかった。登下山で出会った人数は50人を越えていただけに残念な結果である。やはり、持っていって手渡しで配布すればよかったと反省する。

 層雲峡経由で札幌へ帰る仲間と別れて、十勝組3人は幌加温泉の奥の方に建つ4種類の泉質を楽しめる鹿ノ谷旅館の温泉で汗を流して帰路に就く。

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