[64 ] 芽室岳(1753m )[芽室川北尾根コース] 95,8,13 天候・曇り後雨

新しい熊の糞と掘り返しに肝を冷やしながらのガスと雨の中の山行

4:15 糠平キャンプ場発
登山地点下山
7:20
9:45
11:00
登山口
芽室岳
西 峰
12:45

11:10
[3:40]所要時間[1:35]
14:45 日高 (沙流川温泉入浴)
20:15帰 宅(八雲)
前日の石狩連峰11時間ピストン踏破に引き続いて、天候が良かったら、ウペペサンケへ登る計画で、糠平キャンプ場で夜を明かしたが、予想通り、目を覚ますとどんよりとした曇り空でもある。諦めてのんびりと帰宅するべく霧雨の降る十勝平野を南下し、日勝峠へ差し掛かる。日勝峠の7合目まで来ると、ガスから抜け、青空がところどころ見えている。直ちにU ターンし、近くの芽室岳を目指す。
芽室岳の登山口の様子
  一面のガスで端正な姿はおろか山肌も見えないが、上空は晴れているかもといった期待で、前に一度来たことのある新しい山小屋の立つ登山口に到着(1)。幸い車が3台、入山届けを見ると、すでに登っている人もいる。北日高の展望の山であるが、展望はだめでもこのまま帰るよりはましとばかり、芽室川の激流に架かる丸木橋を恐る恐る渡って登山開始。

  端正な山の形から予想できる通り、遊びのない直線的で単調あるが、整備の行き届いた急登が初めからずっと続く。足元には蕾をっけたツルリンドウが付き合ってくれる。ガスのため、目の前の道だけを見詰めながら、大木のトドマツ林の中をただ黙々と登る。途中、一人歩きの女性を追い抜く。
道の真ん中に落ちていた熊の糞
 1時間程して、ガスから抜けるが、上空は曇り、しかし、目指す頂上は何とか見えるが、西峰はガスに覆われて見えない。潅木やダケカンバ、ハイマツが目立ってくると傾斜も緩くなり、尾根も細くなり、日高の山の雰囲気になる。 再びダケカンバの急斜面をジグを切りながら進むと、昨日登った人が入山届けに記入してあった新しい熊の糞が道を塞ぐように10個程落ちている(2)。笛を吹きながら通過。びくびくしながら登っているうちに、西峰への分岐を見落としたらしい。気がついたら、芽室岳本峰へ続く緩く丸みを帯びた稜線が見えてきた。低いハイマツ帯の中に続く岩の露出した道を、ぼやけて見える頂上の大きな岩魂を目指して登る(3)。振り返っても西峰も見えず。いつもは北日高の山から眺めていた景観はまったくなし。
頂上を見上げる
 頂上の岩の上には、2人の若い男性と、黄色の上下の雨具を身に着けて岩陰で休んでいる男性がいた.その顔に見覚えがある。ちょっと考えたら、7月23日にチロロを諦め、この芽室岳に登ろうとしたところへ、「風とガスが凄いので途中で戻って来た」(それを聞いて、こっちも断念した)と言ったその人である。挨拶し、そのことのことを話すと、向こうでも思い出してくれ、妙な再会に感動する。 北見の人でかなり道内の山を歩いているようである。着替えをして、昼食をとりながらいろいろ話をする。これから西峰へも行くという。ガスで全然見えないこともあり、こっちは止めようと思っていたが、同行することにする。

 本峰の周りもガスに覆われて来たので、上下雨具に身を包み、西峰を目指して下山開始。まもなく、途中で追い抜いた女性がやってくる。「熊の糞を見たのは初めてでした。」と心細げに言う。「こっちが西峰へ寄るので、帰り同じくらいの時刻になればいいね。」と言って別れる。
西峰へのコル下の花畑を行く
  北見の人の後ろについて分岐から西峰への道に入るが、ハイマツのブッシュがかなり濃い。 1690mコブまでの稜線上はハイマツ帯で枝を切り払った跡があったりしたが、そこから稜線の北側に下ると潅木と笹薮の物凄いブッシュの中のトラバースである。足元は沢に向かって斜めになっている上に、ガスで濡れているので滑る。一歩一歩が手で周りの枝を掴んでの必死の突進である。

  そのブッシュをぬけたら、一面のお花畑が広がる。多分遅くまで雪渓が残っている所なのであろう。アオノツガザクラはもう終わっていたが、チシマキンバイソウやタカネトウウチソウなどが咲いていた(4)。それらに見とれて歩いていたら、先を歩いていた北見の男性が、突然しゃがんで「熊の掘り返しですよ。」と言う。まさに真新しい掘り返しである。思わず笛を吹き、同行者がいて心強いせいもあり、ゆっくり観察する。まさに今朝の痕跡であり、古いものも周りに結構見られる(5)。おまけに、我々の気配を察してそこから下の沢の方に向かって薮を漕いで下りていったと思われる痕跡もはっきりと確認できる。
真新しい熊の掘り起こし
 笛を吹きながらそこを通過すると、今度は西峰に向かって傾斜がきつくなる。再び潅木と笹薮の薮漕ぎの道に入り、そのままかなり急傾斜のハイマツ帯の中に入って行く。足元ははっきりしているが、枝が完全に覆い被さっている。本峰より鋭い山容からも予想していたが、足より手で登るといった状態のハイマツの急登から抜け出したら、狭い頂上であった。この西峰はパンケヌーシ岳という立派な名前もついているらしい。

 雨も降ってきて、展望はまったくなし。チロロ岳や荒々しい山肌の1967m 峰がこれまで見た方向と逆からすぐ間近に見えるはずなだけに残念である。同行の北見の人は、携帯電話で奥さんと話ししている。「北港道の山ならどこでも通じますよ。」という。そうか、無線より家族と話ができていいなと羨ましく思う。

 15分程休んで、「今度は、私が先になります。」と言って、ハイマツの急な下りの中に突入する。必死に枝に掴まっての急降下である。あっという間に熊の掘り返しのある花畑に出る。まず熊の姿が無いのを確認して、笛を吹きながら通り過ぎながら、再びゆっくり観察する。まさに鍬で畑を掘り起こしたような跡である。歩きながらよく見ると繕構あちこちに古い痕跡が見られる。雨も強くなり、余計滑るトラパース地点でなんども転びながら必至に笹や木の枝を掴んで掻き分けながら分岐に戻る。

 分岐からは、整備の行き届いた道である。展望もなく、ただ二人で、いろいろな山行話をしながら急な道をどんどん下る。急な道ゆえに両膝の外側の腱が痛くなる。登りでは気付かなかった、周りのトドマツと張り合うように真っ直ぐ伸びたイチイの大木に感心したり、前回諦めたときの風で折れたらしい登山者の印象によく残ると言われる二つの大きな瘤のある大木を写真に収めたりしながら、登山口を目指す。

 登山口に着いたが、頂上手前で逢った一人歩きの女性は、やはりまだ下山していなかった。「時間があるから、もう少しこの小屋で休んで待ってみます。」と言ってくれた北見の人と別れ、日勝峠を越え、日高の沙流川温泉で汗を流し、帰路に就く。

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