十勝幌尻岳(1846.1m)A 
オビリネップ川〜夏道尾根ルート  かんじき  単独  12、4,30
94,10.4の「十勝幌尻岳」
この時期ならではの雪を纏った日高山脈主稜線の眺めが目的で18年ぶりの再訪

4:30 中札内道の駅発
5:20 オビリネップ林道へ
登山
地 点
下山
 5:40
 7:10
 8:15
 9:50
10:15
登山口
尾根取り付き
・1284

頂 上
12:55
11:50
11:25
11:05
11:00
[4:35]
所要時間
[1:55]

13:40 更別温泉(入浴)
17:00 中札内道の駅(車中泊)

 十勝平野からどっしりとした大きな山体で聳えるこの山は、まさにポロ・シリ(大きな・山)そのものだ(1)

 日高山脈最高峰と同じ幌尻岳であるが、区別するために、こちらは十勝を冠して、十勝幌尻岳となっていて、通称・勝幌とも呼ばれる。

 この山の最大の魅力は、すぐ間近に日高山脈主稜線の山並みが見られることである。まさに日高山脈の十勝側の展望である。

 登山を始めて3年目にこの山から眺めたカムイエクウチカウシ山や幌尻岳や札内岳などが憧憬の山となり、その後のそれらへの登頂や縦走へと繋がっている。

 夜明け前に中札内道の駅を出る。まもなくして日の出を迎える。十勝らしい広い地平線と防風林の上に、黄砂の影響で真っ赤な太陽が昇った(2)

 戸蔦別林道を進む。昨日の内に下見をしていたが、夏道のあるオビリネップ林道も登山口まで車ですんなりと入ることができた。意外と今年は雪が少ないようだ。

○ズボズボ埋まりながら、ピンクテープ頼りのオビリネップ川沿いの歩き

 登山口の入山届けは、新しいものになっていて、その最初のページのトップに記入することになった。

 登山口からは雪が付いているが(3)ずぼずぼ埋まるので、「行けるところまでスキーで行こう」とスキーを履いて、かんじき持参で出発。一部雪の切れるところもあったが、そのまま通過。

 

 やがて、林道も切れ、オビリネップ川沿いの歩きとなるが、登山道は雪の下で全く判らない。あちこちに付けられているピンクテープだけが頼りである。今回ほど、そのありがたみを感じたことはなかった。

 丸木橋を2度渡るが、恐る恐るスキーで渡った(4)。しかい、20分ほど歩いた地点でへつりのような所にぶつかる。スキーはここまでであった(5)

 へつりを越えたところからかんじきに履き替えたが、その後が大変だった。一歩一歩ズボズボ埋まる。時には膝や股まで埋まるところもあった。あまりの体力の消耗にリタイヤが頭をよぎったが、この好天の下の日高山脈の大展望を捨てるわけにはいかない・・・それだけを楽しみにピンクテープを探しながら歩を進める。

 持参した地形図には登山道が記載されていないが、取り付く尾根の末端は判る。18年前は今より18歳も若かったこともあるが、夏道をスタスタ歩いたのであろう。40分でその尾根の末端まで到着している。しかし、今回はなかなか着かない。倍以上の1時間30分も要して、ようやく標高900mの尾根の末端に到着。



目の前に沢の合流点の中尾根が見えてきた。この尾根が夏道尾根の末端だ。その右奥に微かに頂上稜線が覗いている(6)

○あえぎあえぎの標高差950mの急な尾根の直登

 沢沿いには煩いほどあったピンクテープがこの尾根の取り付き部分には見当たらない。。末端部分は藪が顔を出しているが、登山道らしきものは見当たらない。藪に隠れているのかも知れない。いずれにしても、この尾根を登るのは間違いない・・・右側の雪の多く付いている急斜面から尾根に上がった。雪のない部分には登山道にしてははっきりしない鹿道状の踏み跡が見られた。

 やがて、尾根の幅が広がって来るが、この尾根、この山で最も最短距離の尾根である。それだけに斜度が半端でない(7)登山道はジグを切って付いているのであろうが、かんじきなので、どうしても直登になってしまう。しかも、先端を蹴り込んで登らなくてはならない上に、ときどき膝ほどまでズボッと埋まるところも多い。あえぎあえぎ、休み休み登らざるを得ない。

 尾根に取り付いて1時間強で、いったん斜度が緩む・1284地点に到着。そこには、このコース唯一の標識とも言える「ダケカンバ帯」と書かれた鉄板が設置されていた。ここまで来ると、ようやく頂上稜線が見えてくる(8)しかし、ここでまだ尾根部分の1/3だ。あと2時間・・・目標10:30とする。その後も本当にきつかった。今年一番なのはもちろんだが、久しぶりの辛さだった。


 ようやく、目の前に頂上へ繋がる尾根の合流地点が見えてきた。ここを登り切ると、日高山脈の展望が飛び込んでくるはず・・・(9)登り切って、一番先に目に飛び込んできたのは、まだ真っ白なカールを抱いて天を突く札内岳だった。その奥に幌尻岳や戸蔦別岳など・・・。ここからはまだカムエクは見えない。
 目の前に続く稜線の先の右奥にチラッと頂上が覗いている。斜度が緩いのに、疲れた足が思うように運ばない(10)。登山口から4時間35分も要してようやく三角点のみの頂上に到着(11)18年前は、夏道だが、いくら若かったとはいえ、半分以下のわずか2時間5分で登ってきたのが信じられない。まずは、記念写真を撮って、ゆっくりとこのために頑張ってきた日高山脈の大展望をじっくり楽しむ・・・。

○これがこの山の目的だった山頂からの日高山脈の大展望

一番の楽しみだった、八の沢を抱いた「私の一名山」とも言うべきカムイエクウチカウシ山(12)。その少し右手の札内岳や幌尻岳(13)


南日高方面は霞んでよく見えないが、縦走したペテガリ岳から北側はよく見えた(14)


ピラミッド峰〜エサオマントッタベツ岳・・・ここも縦走で繋がいだことが懐かしい(15)


手前の沢を遡りカールの中を登った札内岳、やはり縦走で繋がっている幌尻岳〜ピパイロ岳、その奥のチロロ岳(16)


北日高北部の山並み(17)

東側の眼下には十勝平野が広がっているのだが、霞んでよく見えないのが残念(18)

 風を遮るハイマツの陰に陣取り、昼食を摂る。夏のようなポカポカ陽気に、疲れた体が癒され、いつまでも休んでいたい誘惑に駆られる。珍しく45分も休んで登山開始。

○駈け下るような下山

 雪山の下りは膝にも優しいし速いことが魅力の一つだ。まずは夏道尾根(手前の白い尾根)の分岐まで下る。その先にこれも踏破済みの帯広岳も見える(19)

 登りであえぎながら数え切れないほど休んで登った急な尾根は、休みたいと思うことなくどんどん下る。しかし、ときどき、滑って滑落もどきの尻滑りになったり、ズボッと埋まっての転倒も何事もなければ楽しい。登りに3時間を要した尾根をわずか50分で駆け下りてしまった。尾根の末端の急斜面を下ったときに滑って、尻滑りになって灌木にぶつかって止まった。そのときに膝に軽い痛みを感じたが、すぐに消えて、その後もなんの支障もなく歩くことができた。

 登りで苦労した沢沿いの道も、トレースを辿るのと埋まっても下りは楽だ。スキーデポ地点からシールを付けたままゴール。登りが4時間35分、下りが1時間55分で、頂上での45分の休憩を入れて、久しぶりの7時間超のハード山行だった。18年前の夏道の登り2時間05分、下り1時間45分は、自分でも化け物ではないかと思うほどである。

 登山口で着替えを終わったところへ、帯広ナンバーの車が到着。ご夫婦で下見にやってきたらしい。いろいろ話している内に「函館に山のホームページを開いている方がいますよね」と聞かれた。「それって、多分私だと思います。坂口と言います」「そうですか?昔からいつも拝見しています」と痛く感激のご様子・・・写真まで撮られた。HPの名刺を差し上げたら、「そうそう、これです。凄い方なんですよね!」とのこと・・・。帯広市のYaさんというやはりスキー指導員の資格を持っておられる同年齢の方だった。
中札内の道の駅でメールチェックしたら、撮っていただいた写真が添付されていた(20)。

 その後、昨日に引き続き更別温泉でのんびりし、中札内道の駅へ連泊態勢に入り、向かいのスーパーでビールと豚肉ともやしを買って豚シャブで乾杯。食べ終わって間もなく、急に膝に痛みが出てきた。歩くのもままにならない痛みだ・・・思い当たる節は、尾根の末端で転んだときに感じた痛みしかない。なんで今更?・・・湿布を貼って就寝態勢に入っても痛くてなかなか寝付けない。

 朝を迎えたら、少しは良くなってはいたが、登山を続けることは不可能である。一応、予定していた札内園地近くのトムラウシの雪付きの状態を見に行く。すでに遅い感じだった。この山は、もっと早い時期でなければ不可能である。来年にでも来て、道内トムラウシ3山踏破を決めようと、そのまま帰路に就いた。 


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