見市川イワナ沢〜岩子岳(801.7m)A〜鉛川南東面沢 <八雲町> 
 5名 10,7,11
07,3,22積雪期の「岩子岳」
「道南のマーターホルン」と呼ばれ、ただでさえ登る人の少ない奇峰に冬と夏の2回も登頂できて大満足

4:00 おぼこ山の家
登下山
地 点
 4:20
 4:35
 5:00
 5:40
 6:20
 7:30
 8:15
 9:15
 9:30
工事道路ゲート前
入渓
イワナ沢出合い
15m滝下(c250)
高巻き終了
崖下(c450)
南尾根(c590)
頂上稜線
頂上着
[5:10]所要時間
10:00
10:40
12:15
13:15
13:35
13:50
頂上発
源頭
280二股
220二股
砂防ダム
国道車デポ地点
[3:50]所要時間

14:30 八雲温泉おぼこ荘(入浴)
17:30 帰宅
 
八雲と熊石を結ぶ国道277雲石峠の北側に鋭く天を突いて聳える「道南のマッターホルン」と呼ばれる奇峰・岩子岳・・・2度目となる今回は、沢を源頭まで詰めて左側の急な南尾根を登り下りした(1)

 3年前(2007年)の冬にも登頂しているが、今回、沢のスペシャリストのganさんをリーダーとする5名で、彼ならではの沢ルートから2度目の登頂が叶った。ただでさえ登る人の少ないこの秘峰に夏冬の2度の登頂を果たしたのは、そうはいないだろうと自負している。

 今回のルートは、南面に巡らせている崖の南端まで突き上げている見市川イワナ沢を源頭まで詰めて、合併前の八雲と熊石の国境尾根だった急な南尾根から登頂し、下りに鉛川南東面沢を下る沢ルートである。日本海に注ぐ沢を登り、太平洋に注ぐ川を下るという贅沢この上ない沢縦走も叶った。

 実は、7年前の夏に雄鉾岳に登りに札幌からやってきた「地図がガイドの山歩き」チームの3人と名寄からやってきた「山の時計」のEさんと5人で、今回下りに使った鉛川の支流に取り付いたことがある。途中でなぜか沢を間違えて思いがけない方向の尾根に上がり、時間切れで断念したことがある。今回きしくもその間違ったポイントとその理由を見つけることもできた。

○沢よりも源頭部と南尾根の急登に苦労する

 まだ薄暗い中、Baさんに見送られておぼこ山の家を出発。2台の車を下山地点となる国道の清流橋の少し峠寄りの駐車スペースにデポする。Kuさんの車で、雲石峠を越えて、スタート地点となる国道の5合目標識の向かい側にある工事道路のゲート前を目指す。


 この見市川へ下る道路は、現在勧められている国道277号線の付け替え工事のための道路らしい。鉄板の敷かれた道を下っていくと、川を跨いでトンネルを繋ぐ橋の下を通る(2)

 その先で穏やかな見市川に入渓。c200mでイワナ沢出合いに到着。実は函館組の私とKi嬢以外の3人(ganさん、Kiさん、Kuさん)は、先週、この出合いを余りにも少ない水量のせいで、勘違いして、ずっと先まで進んでしまい途中撤退している。今回はそのリベンジなのである。

 イワナ沢に入る・・・この沢の情報はまったくない。何が出てくるか楽しみだが、渓相が一気に変わり、ゴロゴロと苔むした巨岩に期待は高まる・・・(3) 


 巨岩の間を縫って遡っていく。函を形成する崖を覆う苔とそれを川面に映す様が幽玄そのもの・・・おもわず見とれてしまう(4)

 ゴロゴロと転がる巨岩に、「こんな大きな岩が流されてくるのなら、暫くは滝はないだろうね」と話していたが、地図上では、c250付近の崖マークと詰まっているコンタが気になっていた。案の定、その250で、行く手を遮るようにドーッと垂直に落ちる形の良い20mほどの滝が出現。これが人里近いところにあったら、名前が付いて、名所になっても良いくらいの美しい滝である(5)

 その美しさよりも気になるのは、高巻きルートである。右岸は断崖絶壁が続いているので無理。左岸の小沢を利用して草や灌木に掴まりながら急斜面を滝上の高さまで登ることに・・・そのすぐ右手に熊でも滑り降りたような幅広の痕跡がある・・・「熊もここは高巻くしかしようがないよね」と話していたら、それを裏付けるように熊の糞まで落ちていた。

 ganさんが降り口を偵察行くが、先にも深い函が見えるという・・・大高巻き続行となる。さらに登っていくと、小尾根に出る。そこを右に辿り、沢への出尾根を使い沢床に降りた。ここだけで30分は要したが、沢の核心部はここだけだった。

 その先は、ずっと穏やかなどこにでもある小川のような変化のない渓相が1時間ほども続く。水量が少なくなると、伏流したり流れが現れたりを繰り返す。
 
 沢の出合いが現れるたびに現在地と進む方向を慎重に見極めながら進む。やがて、薄茶色の滑床が現れ、行く手に岩子岳の南側を巡る岩崖が見えてくる。

 崖が近づいてくると、水流はなくなり、ガレ沢となってくる。その先を覗くと、急な南尾根が見えるところで大休止(6)

 しかし、その先もガレが続くと思ったら、岩盤剥き出しの濡れた滑が現れたり、ガレになったり、再びツルンとした岩盤が現れたりを繰り返す。

 目の前に続く沢地形を辿り、突き当たりに見えている南斜面を目指す。しかし、傾斜が急になってきて、沢床に溜まった落石が怖くなる(7)そこで、右側の草付き斜面に逃れるように取り付く。しかし、非常な急斜面で、下の方は灌木も生えてなく、草の根元を手で押さえながらの緊張と必死の登りが続く。灌木帯に入ると、急ではあるが命の心配はない。やっと難所を突破してc590の南尾根に着いた。結果的に、ここの登りが一番の難所だった。小雨がぱらついて心配したが、一時的なものでホッとする。

 ここから頂上稜線までの崖と崖に挟まれた南尾根は、合併前の八雲と熊石の国境尾根だったところで、横から眺めると45度以上はある急斜面である。心配したネマガリダケはなく、下の方は、ほどよい長さの草がの中に笹が混在し、それらに掴まりながら高度を稼ぐ。先頭のganさんが我々を上から写真に撮ってくれる。下にエゾカンゾウが咲いた快適な尾根である(8)。一番急なところで横の方を写真に収めたら、50度はあろうかと思われるほどである(9)。そんな中にひっそりと咲く清楚なモイワシャジンに癒される・・・・(10)。
 
  尾根の取り付きで、ganさんはスパイク地下足袋の上から履いていたビニール製の草鞋を脱ぎ、私はフェルト靴の上からスパイクの付いたゴム草鞋を履いたので、滑ることなく快調に登る。しかし、あとの3人は足が滑って大変なようだ。紅一点のKi嬢は4年間も山岳系クラブで鍛えている現役大学生らしく、黙々と付いて行く。遅れ出したKuさんは、持参して来た軽アイゼンを付けたら快調になった。

 白花のタチキボウシと、Baさんが何の木だろうと気にしていたこの尾根の途中にポツンと生えている2本のダケカンバを一緒にカメラに収める(11)

 やがて、稜線が近くなると、笹藪の背丈が高く、濃くなってくる。しかし、ネマガリダケに比べると、全く気にならない(12)
 やがて、灌木に覆われた細い頂上稜線に乗る。灌木を掻き分けて15分で、藪中の自分にとっては2度目となる頂上に到着。ガス中で展望がなのが残念。

 3年前の冬に登ったときには、高度感満点のナイフリッジの稜線と頂上だったのだが、今はまったくの薮の中・・・(13)

 三角点を5人で探したが、見つからないので、諦めて昼食タイムにする。それぞれの持参したものが回されるが、Kuさんからのリンゴにはビックリする。

 30分ほど休んで下山態勢に入ったが、未練たらしく三角点をと思い、測量に使ったと思われる白い発泡スチロールの破片を手がかりに足をちょっと動かしたら、枯葉の下に頭の端の方がチラッと見えた。急いで手で払ったら、その姿を現した・・・まさに、下山寸前に向こうから現れてくれたと言った感じだった・・・(14)

○源頭まで薮を漕いで大きな滝の続く鉛川南東面沢を下る

 三角点も見つかったので、心おきなく下山を開始する。登りのイワナ沢とは反対側の鉛川南東面沢は東尾根の根元まで突き上げているが、下が崖になっていそうなのと、稜線の薮が濃いので、登りで掻き分けてきた南尾根のトレースを辿って、途中まで下る(15)急な上に滑って踏ん張るのは疲れるので、しゃがんで尻滑りの要領でどんど下った。

 左側へ進路を取って東斜面を下っていくと、太く背丈の倍もあるネマガリダケ林の中に入っていく。ちょっとウロウロしたが、頂上から50分ほどで、うまい具合に沢型の源頭部へ降りることができた。上から見下ろすと、これから下る沢とその向こうに三角山が見える(16) 頂上では見えなかった展望も広がってきたようだ・・・。

 灰色のスラブ状の岩盤が露出した手強い涸れ沢を下っていくと、c510で8mほどの涸れ滝の上に出る。右の薮から巻こうと偵察したが、こちらも下の方まで木が繋がっていない上に垂直に落ちている。仕方なく捨て縄を掛けて1回目の懸垂下降(17)

 c400の10m滝の上には捨て縄があったが、ここは懸垂せずに右から高巻いて降りる。さらに、次の10mほどの滝は上から見ると、もっとありそうに見えたので、20m、30mの二本を繋いで懸垂下降。逆層気味でオーバーハングの感じがする滝だった(18)

 c300で先頭を行くganさんに言わせると、「心臓が止まりそうな涸れ滝」にぶつかる。狭い落ち口から下は見えない。20m以上はありそうな感じだったらしい。ganさんは左岸からの高巻きを試みるが、途中の細い尾根が怖い。自分が、北側に別の支流へ降りる出尾根を偵察し、結果的に全員そこを下った。なんとか難所突破の糸口はあるものだ。

 その下のc280二股で、支流と合流したが、我々の下ってきた本流は流れのない2段の涸れ滝になっている。ganさんに言わせると「下から来たら本流になるここの涸れ滝を選択するには相当な勇気が要るだろう」とのこと・・・ふと、7年前のことを思い出す。あのときは何の迷いもなく、ここは水流のある右の沢へ進んだのであろう。だから、方向違いの尾根の上に出たのだ。そのときは、この涸れ滝を進むべき沢だとは絶対に思えなかったはずだ。7年前の謎がようやく解明できた・・・。

 そこを越えると、あとは穏やかな渓相になり、淡々と歩くことができた(19)c220二股で美しい滑滝を眺めて、更に下る。

 ゴール地点としていた清流橋手前にある砂防ダムから5分薮を漕いで国道に出た。100m下に車が見えた。登りの沢は面白さには欠けたが、下りの沢は十分満足できる沢だった。

 車のデポ地点から、改めて尖った岩子岳と苦労して登った急な南尾根を眺めて感慨に浸る。Kuさんの車を回収がてら、一旦雲石峠の駐車場へ戻り、姿を見せた岩子岳をバックに記念撮影をする(20)

 ganさんのお陰で、もう2度と登ることはないと思っていた夏の岩子岳にも登ることができて大満足。温泉に入らないで帰路に就くというganさんとKiさんとその駐車場で別れ、Kuさんと函館組の二人は八雲温泉おぼこ荘で、疲れと汚れを流して帰路に就いた。
07,3,22積雪期の「岩子岳」


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