岩子岳(801.6m)<八雲町>
東尾根ルート  2名  ツボ足&アイゼン&かんじき 07,3,22

10,7,11の「見市川イワナ沢〜岩子岳〜鉛川南東面沢」へ

          3度目の挑戦で念願叶った、高所恐怖症の自分には登れるとは思っていなかった道南の奇峰

 4:00 自宅発
 5:45 八熊線・清流橋先駐車帯
登山
地  点
下山
 6:00
 6:30
 7:30
 9:05
10:00
清流橋
c350ポコ
c610ポコ
c700クニック
頂 上
13:10
12:45
11:40
10:30
10:10
[4:00]
所要時間
[3:00]
13:30  八雲温泉・おぼこ荘(入浴)

八雲と熊石を結ぶ雲石峠の北側に鋭く天を突く道南の奇峰と呼ばれるこの岩子岳であるが(1)数年前までは、高所恐怖症の自分には登れる山だとは思っていなかった。可能性があるとすれば、木が生えている東尾根であろうと思っていた。

 4年前の夏に雄鉾岳に登りに札幌からやってきた「地図がガイドの山歩き」チームの3人と名寄からやってきた「山の時計」のEさんと5人で、沢から取り付いたが、途中で沢を間違えて時間切れで断念。昨年の3月には単独で610ポコに繋がる別尾根からトライして、610ポコ手前で岩稜にぶつかり、天候の悪化もあって断念。今回は、「登るときは一緒に」と約束していた昨夏の突符岳と紋内岳に同行したSaさんを誘っての3度目の挑戦となった。

 天気予報が良い方に外れての快晴・無風、3月になって降り続いた雪が適当に締まった最高の条件に恵まれ、頂上手前の雪庇が発達した細い稜線に乗るところで、緊張場面はあったが、なんとか念願の頂上に立つことができた。

 6:00、八雲温泉への分岐の清流橋の少し先の駐車帯に車を置いて、清流橋の八雲側から笹の出た崖をよじ登り、610ポコへ繋がる尾根に取り付く。雪は堅く締まり、ツボ足のままでも苦にならない。30分でc350ポコまでの急登を登り切って、まずは一休み。目の前には、今回は夜に会合が入っていて時間的余裕がなく諦めた、岩子岳とセットで登られることの多いペンケ岳の大きな山体が見え、振り返ると朝日の浴びて輝く雄鉾岳が東面の襞を際立たせて聳えている(2)

 アップダウンの続く尾根を忠実に辿る。ところどころに吊り尾根状の細いところもあるが、周りの灌木のお陰で難なく突破。標高点415付近で、岩子岳を眺めながら2度目の休憩(3)天候がいいだけで、怖そうな急斜面も突破できそうな気持ちになってくるのがうれしい。

 610ポコの手前まで来ると、610ポコから岩子岳頂上までの続く東尾根と頂上への急な斜面が見えてくる(4)順調に1時間半で、610ポコまで登ると、北側の山々が見える。、目の前にペンケ岳へと続く稜線上の鋭い岩頭や818ピークが迫ってくる(5)時間的余裕もあるので、それらの展望を眺めながらじっくり休憩。
 
 15〜20cmほどの締まった新雪にトレースを刻み、610ポコから左側の尾根を辿って、最低コルまで下る。手前のピークを登り切ると、c700m付近のこの山の核心部とも言える頂上への急斜面の下に出る(6)そこで、急な登りに備えて新調したばかりの12本爪のアイゼンを着けて、腹ごしらえをする。


 40度ほどの急斜面であるが、幸いに樹木が生えているのと、雪が靴が埋まるくらいの深さなので、それほど怖さを感じない。この木立が無かったら雪崩れ斜面であろうし、もしアイスバーンだったら滑落が怖くてとても登れないであろう。一歩一歩新雪にアイゼンを利かせながら慎重に登る(7)

 しかし、その緊張の急斜面を登り切った先の稜線に、さらなる緊張場面が待っていた。頂上の50mほど手前から雪庇の発達した細い稜線である。雪庇の下の斜面には全層雪崩のデブリがあり、雪庇の直ぐ下は亀裂の笹藪の上に新雪が積もっている状態で、腰近くまで埋まる。歩くとその震動で雪面が揺れるのが怖い。雪庇の反対側を覗いても垂直に切れ落ちた感じで下に雪崩の跡が見える。しかし、嫌でもでその細い稜線の上に乗らなければ頂上へは到達できないのである。高所恐怖症の自分一人だったらそこで断念していたかも知れない。そこまでは常に前を歩き、ラッセルとステップ刻みを続けてきたのだが、躊躇していると、Saさんが這うようにしてその細い稜線に取り付き、四つん這いになってゆっくりゆっくりステップを刻んでくれる。少し幅が広くなり、反対側の斜度が緩くなったところで、声を掛けてくれる。感謝しながら、視界を目の下にだけ狭めて、恐る恐る彼の刻んでくれたステップを四つん這いで辿る。その間、わずか5mくらいであろうか、ようやく腰を伸ばして立って歩けるようになって雪庇の根元を辿り(8)狭い頂上へ到着。冷水岳から遊楽部岳へ続く稜線をバックに思わずバンザイをしてカメラに収まる(9)

 快晴、無風・・・これ以上は無いだろうと思うほどの360度の展望が広がる。南には、駒ヶ岳や砂蘭部岳や今年登った三角山、複雑な地形の向こうに雄鉾岳と元小屋岳(10)西には日本海、そして冷水岳〜白水岳〜大きな遊楽部岳(11)その右奥には狩場山塊、さらに奥にはニセコの山々、さらに直ぐ東隣のペンケ岳・・・・。 

 それらの展望を楽しみながらゆっくりしたいところだが、足元が切れ落ちた雪庇上の狭い頂上では尻がムズムズしてどうも落ち着かない。リュックを下ろすこともなく、10分ほどで頂上を後にする。

 登りで苦労した細い稜線から下りるところは、用意してきたロープの使用も考えたが、なんとか雪稜を跨ぎながら尻でズルようにして下りた。Saさんは後ろ向きでステップを切りながら下りてきた。

 その下の急な斜面も一歩一歩慎重にアイゼンを利かせながら、登りのトレースを辿る。急斜面を下り立ったところでようやく緊張感から解放されてゆっくりと休憩する。アイゼンは610ポコまで着けて登り切り、南側を向いているその下の尾根は雪解けが進んでいるので、今度はかんじきに履き替える。登りのトレースを辿りながら、のんびりとアップダウンを繰り返し、合計7時間の感激且つ大満足の山行を終える。当然、八雲温泉のおぼこ荘に寄り、疲れた身体を癒して、帰路に就く。

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