東丸山(1666m)   ウペペサンケ菅野温泉西コース  単独 04,7,30

ウペペサンケへの稜線コルから前半人の通った痕跡すらない猛烈な藪漕ぎ、後半昔の登山道の痕跡を辿る。

3:00 音更発
登山
地点
下山
5:20
6:10
7:40
8:35
登山口
稜線コル
1614ピーク
頂 上
12:05
11:10
9:55
9:00
[3:15]所要時間[3:05]
13:45 音更・鳳の舞(入浴)
14:30 音更着

東大雪のウペペサンケとおよそひと月前の7/4に登った東大雪唯一の活火山・丸山の間に聳える山で丸山の東にあることからこの山名が付いたようである(1)。

 この山への登山道はないが、東丸山と同じルートの幌加川五の沢から直登沢を辿るのが一般的らしいが、足の速いEIZIさんの記録でも4時間を要している。そちらからだと、幌加川五の沢は3回目になるし、地形図に載っている古い登山道がどのようになっているかを確かめたいこともあり、さらに、ウペペサンケへの菅野温泉西コースの稜線コルからは稜線伝いに沿面距離2.5kmほどなので、藪漕ぎ覚悟で、あえて今回のルートへ挑戦することにする。

 菅野温泉へ向かう然別峡線を走り、温泉の手前の分岐の左の林道を進むと「東コース→ 西コース←」と書かれた標識の立つ分岐がある。そこを左に入り、イシカリベツ川沿いの林道を7kmちょっと走ると広場があり、さらにその奥に荒れた林道が続いている。そのまま恐る恐る1kmほど進むと広い土場があり、林道の終点となっている。そこが地形図の973地点であり、実質的な登山口である。

 イシカリベツ川の源流に架かった古い丸木橋を渡ることからスタートであるが、その丸木橋が古くて折れそうなので、そばの倒木を利用し、手すりまで丁寧に付けられた丸木橋も用意されている(2)。そこを渡って登山道を5分ほど進むと、その川の水源となる湧水帯へ出る。橋からわずか100mほど上流なのに、その辺一帯でもの凄い量の水量が湧き出しているのにはびっくりする。非常に冷たくおいしいので、ポリタンに1リットル汲む。

 二つ目の広い土場跡を通過すると、左の沢地形の中に登山道は続く。やがて、沢地形から右手の斜面をトラバース気味にジグを切り、稜線の1386コルめがけての急登となる。急なところにはほとんど太いロープが設置されている。高度を稼ぐ内にアカエゾマツ林からダケカンバ帯となり、50分で裸地になっている東丸山とウペペサンケを結ぶ稜線のコル1386地点へ到着する。

 ここからが今回の藪漕ぎ開始である。ウペペサンケの反対側の稜線には途中の1614ピークだけしか見えないので、そのピークを東丸山の頂上だと勘違いし、「予想よりかなり近い、どんな濃い藪でも2時間もあれば」と腹を決めて藪に突入する(3)。昔登山道があったはずなので、せめて藪の下に踏み跡くらいはあるであろうと1mも入ると、人が歩いた痕跡すらないまったくない背丈ほどの笹と背丈を遙かに越すナナカマドとダケカンバ、そして、疎らなハイマツである。

 それらを10分ほど掻き分けながら進んでみたが、朝露で体全体がびしょぬれになり、ふと弱気になって「止そうか?」と立ち止まる。しかし、時刻はまだ6時を回ったばかりである。「時間さえあれば、なんとかなる」と気を取り直して、稜線の中央を外さないように一歩一歩掻き分けてはその藪を掴んで、ゆっくりゆっくり高度を上げていく。一昨年の神威岳〜ソエマツ岳の猛烈な藪漕ぎを経験していると、踏み跡はないとは言え、笹がメインなのでまだたやすいものである。
 
 藪の中からときどき頭を見せる1614ピークを頂上と勘違いしているので、それが少しずつ近づいてくるのが励みとなる。途中に生えているクロウズコの実がおいしく、喉の渇きを癒してくれる。なるべくハイマツを避けながら少しでも楽そうなところを選んで進み、約1時間ほどで距離的にはわずか720mほどの1500m地点を越える。この辺りから稜線の右側に藪がそれほど濃くない部分が続くので、頂上と勘違いしている1614ピークまでは30分くらいであろうと一息つく(4)。

 その辺りの背丈の低い草付き斜面に時々踏み跡を発見する。それを辿ったり藪を漕いだりして高度を上げていくが、1570付近で藪のない草付きのコブの下に出る。その斜面のガレ場にコマクサが一面に咲いている(5)。そこからは踏み跡を辿り、1時間30分で頂上だと思っている1614ピークに到着する。

 「地図で読んでいたより、ずいぶん楽だったな?でも、ちょっと変だな?」と思い、GPSと地図とを合わせてみると、そこはまだ中間地点である。ふと目を一度どんと下るその稜線の先に向けると、はるか向こうに見えるのが頂上である。初めて勘違いに気付き愕然とする。道理で、途中見ながら来た地図と地形が合わないわけである。頂上までの稜線を眺めると途中に広いハイマツ帯があるが、稜線の右側を辿れば、藪はそれほど濃くなさそうである(6)。ここまで来て戻るとなると、そこまでの藪漕ぎの苦労が台無しになる。まだ8時前である。あとどんな藪でも同じ1時間30分もあれば行き着けるであろうと腹を括って一休みする。

 そこからコルめがけて120mほど一気に下るが、稜線の右側に踏み跡が続き、それほど苦労しないで1490mのコルへ下り立つ。そこの右斜面はエゾシカの遊び場のような裸地になって、終わりかけのタルマエソウが群生している。コルから先も浅い灌木帯の中に踏み跡が続き、やがてそれはハイマツ帯へと入っていく。なんとそこには古い鋸目が入った昔の登山道が続き、それまで一切目にしなかった色の褪めたテープまでがあちこちに付いているのにはびっくりする。

 ときどき踏み跡を覆う藪を掻き分けることはあるが、前半の猛烈な藪漕ぎに比べると天国と地獄である。なんとかその踏み跡が頂上まで続いていることを願いながらルンルン気分で登っていく。途中右側を見ると、深い谷の上に鋭く尖ったウペペサンケの頂上がやや霞んで見えている(7)。
 
 1614ピークからわずか1時間弱、登山口から3時間15分で頂上へ到着する。頂上はハイマツに覆われた一部がちょっとした岩場になっていて北側に丸山と頂上をガスに覆われたニペソツが見える(8)。そこは落ち着かないので、直ぐ手前の明らかに整地されたと思われる5m×10mほどの一面石を敷き詰めた平らなところで休憩する。

 気温は高く風が心地よいが、遠くの山々は霞んでよく見えないのが残念である。ニペソツはひと月前に隣の丸山に登ったときも、一瞬にしてそのピークをガスに隠してしまったが、今度はやはり一瞬であるが、ガスの上に尖った頂上を現してくれたが、全容はとうとう現すことはなかった(9)。
 
 30分ほど休んで、9時ちょうどに下山開始である。当初の計画では11時までにウペペサンケの分岐コルまで戻れたら、ウペペサンケにも寄ろうと考えていたが、下山のまたあの強烈な藪漕ぎを考えると、あっさり諦めての下山開始である。

 ちょっと下ると、1614ピークまでのルートと、その下のコルまでの藪漕ぎ稜線が見えている(10)。藪漕ぎのほとんど無い1614ピーまでは登りと同じ55分で戻り、1500付近から猛烈な藪漕ぎ開始である。

 下りだから少しは楽であろうと思ったが、気温も上がってきて暑くてしょうがないのと、見通しの利かない藪中では、登りでは絶対外すことのない稜線の中央部を下りでは踏み外すことが多い。ハイマツを避けて下っている内にふと気付いてGPSを見ると、かなり南側の斜面を下っていることに気付き、慌てて急な斜面を藪漕ぎしながら稜線まで登り返す。GPSを見ながら慎重に下るが、休憩するとアブの攻撃が凄く、休んでいられない。とにかく藪漕ぎから解放されることだけを楽しみに下る。

 稜線コルの赤いテープが見えたときには、思わず万歳と叫びたい気分であった。あとは登山道を下るだけである。道があるということはこんなに楽なものかと再認識する。下りでこれからウペペサンケへ登るという帯広の男性と会い、5分ほど立ち話をして下山を続ける。気温が高く汗だくでようやく湧水帯のところに到着する。手が痺れるほど冷たい水で喉を潤し、顔や腕を洗ってゴールイン。

 人の歩いた痕跡のないあれほど長い強烈な藪漕ぎは初めてであるが、困難であればそれだけ満足感も大きい。まして、楽だと思っていた幌加川五の沢から直登沢を辿るより40分ほど速いとなれば、このルートを選んだのも満更ではないと、自己満足しながら帰路に就く。菅野温泉は日帰り入浴1000円と聞いていたので、そのまま音更まで走り、鳳の舞というゴージャスなのに、銭湯料金の温泉でさっぱりして帰宅する。


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