上滝山(1331m)〜沙流岳(1422m)〜通称・日勝ピーク(1445m) 
 日勝峠・奥沙流林道ルート  単独・山スキー  04,4,29

だいぶ前から温めていた計画であったが、意外に楽勝の日帰り縦走。春陽を浴びながら3回のシール着脱を繰り返し新雪の山を楽しみ、最後は車回収にマウンテンバイクでのスリリリングな9kmダウンヒルも・・・。

4:40 音更(別宅)発
5:50 日勝トンネル日高口へマウンテンバイクデポ
6:00 奥沙流林道入口(日勝峠5.5合目附近)
登/下山
地点
6:20
6:52
8:20
8:35
9:50
10:00
10:45
11:30
11:55
12:00
12:10
奥沙流林道ゲート(720m)
尾根取り付き(800m)
上滝山(1331m)着
  〃  発
沙流岳(1422m)着
  〃  発
1370ポコ着
(昼食タイム45分)
日勝ピーク(1445m)着
 〃  発
日勝トンネル日高口(970m)
[5:50]総所要時間
12:20 日勝トンネル日高口
     (マウンテンバイクで日勝峠を9kmDH)
12:35 奥沙流林道入口
14:30 音更(別宅)着

 日勝峠を通るたびに気になっていた鋭鋒の沙流岳(1)と日勝トンネル日高口から見上げる山スキーヤーに人気のあるスキー場のような日勝ピークからの斜面の滑降・・・沙流岳までのピストンも考えたが、地形図を見て、日勝峠5.5合目附近の林道から取り付けば日帰り縦走ができるはず・・・車の回収はマウンテンバイクの利用で日勝峠のダウンヒル・・・と数年温めていた計画である。

 前日の雨も上がって、十勝平野はスカッ晴れの朝を迎える。朝日にピンク色に染まる日高山脈や十勝連峰の峰々を眺めながら、日勝峠へ向かう。

 予定通り、日勝トンネル日高口の駐車場にマウンテンバイクをデポし、前から見当をつけて置いた林道入口を探しながら日高側へ下りていく。6合目を過ぎ、5.5合目附近の左側にそのゲートと広い駐車スペースがある。杭に書かれた標識を見ると、その林道は「奥沙流林道」である(2)。すでに車が1台停まっていて二人の足跡が林道に続いている。

 山スキーを着け、昨日の雨でガリガリに凍った林道を進む。静かな山にバタバタいうスキーの音だけが響く。30分ほど進み、橋を渡ったところで、上滝山頂上から北西に延びる尾根の末端に到着する。前を行く足跡はそのまま林道を進んでいるが、その後、その足跡にもその主にも逢うことはなかった。どこへ行ったのだろう?

 小さな沢のスノーブリッジを渡り、急な尾根に取り付く。その取り付きに赤いテープがぶら下がっているのがうれしい。ところが、ガリガリに凍った上にサラッと新雪の被る急な斜面はシールが全然利かない。今シーズン初めてスキーアイゼンの着用である。その効用を楽しみながら、狭い急なトドマツがメインの尾根をジグを切りながらどんどん高度を稼ぐ。ときどき地図に載っていない林道を横切る。繋がっているかどうかは分からないが、結局1200m附近まで林道は付いていたようである。地図で見ても、今日の縦走する予定のルートの周りはかなり高いところまで林道が入り乱れている。

 1000mを越えて振り返ると、十勝連峰が頭を出してくる。高度を上げると、トムラウシや東大雪、夕張山系やその手前の山々も浮んでくる。1100mを越えると林も明るくなり、斜度も緩んでくる。休憩するたびに春陽降り注ぐ快晴の空、無風、小鳥の声、春の汚い雪を覆う新雪に覆われた山々・・・のどかでまさに幸せ至極である。頂上が近くなってくるとダケカンバが多くなり、疎林帯となってくる。2時間弱で頂上の東側のコルに出る。反対側の展望との対面である。そこから西側へ進むと頂上への白い斜面が覗く(3)。

 2時間ちょうどで、上滝山到着である。ウエンザル川を挟んだ向かいの稜線上に大きな山が見える。位置的にペンケヌーシ山であるに間違いない(4)。次に目で追ったのが、これから進む沙流岳と日勝ピークである。手前にゆったり聳えるこの上滝山より高い1356峰の右奥に見える二つのピークはかなり遠い感じはするが、半分は下りである。それぞれ2時間は掛からないであろうと読む(5)。

 ようやく落ち着いて、360度広がる快晴の下の眺望を楽しむ。夕張岳と芦別岳とその間に見える夕張マッターホーンや、北側の十勝連峰をバックに聳えるこの残雪期の内に登りたいトマムスキー場附近の山々と狩振岳と1389峰(双珠別岳)の眺めが新鮮である(6)。シールを外して次の沙流岳を目指す。登り返しをしないように高見は全部南側をトラバースしてどんどん進む。

 10分ほどで、1356峰手前のコルへ到着。地図でこの山と沙流岳との間のコルの標高を読み、そこをねらいながら、1356峰の南斜面を巻くように、1270mのコンタを目安にトラバース開始する。途中、コンタの混んだ谷地形の斜面をもあったが、雪崩の心配もなさそうなので、少し下り気味に一気に通過し、1230mの沙流岳とのコルに到着する。

  シールを再び付けて、沙流岳への西尾根に取り付く。左手の眼下に日勝峠の道路が見える。割りと緩やかな斜面である。高度を上げていくと新雪が10cmほどになり、真冬の山を歩いているような錯覚に陥る。頂上へ登り詰めてていくとちょうど反対側からツボ足の男性が登ってきて、まったく同時に頂上に到着する。直ぐ後ろからその方の仲間が3人到着する。彼等は日勝ピーク経由で2時間半ほどで登ってきたとのことである。 

 当然目は次の目標ピークであるこの縦走コース中最高点の日勝ピークに向く。頂上部を白く露出させ、これから辿る尾根は幅広く道路のように見えている(7)。こちらがシールを外しているうちに、風が強いので彼等は直ぐ下りていく。こちらもあとを追うようにスタートする。西側には急な大斜面が広がっていて、そちらへ頂上から下りようと思ったが、雪庇が出ていて下りられないので、少し尾根の雪庇の根元を下り、彼等を追い越して、彼等の視線を意識しながら、少し緊張して尾根斜面に快適なターンを刻む。あっという間に最低コルへ下り立つ。

 3回目のシールを着けて、日勝ピークへの最後の登りモード開始である。少し登って振り返ると、沙流岳の鋭峰と気持ちよいターンを楽しんだ真っ白な大斜面が見送ってくれる(8)。

 頂上から針葉樹林の中に見えた道路のような尾根をゆっくり進む。この間には、沙流岳の反対側にはなかった赤いテープがたくさん付いている。だんだん雪が深くなり、周りの木々も樹氷状態で真冬を思わせる雰囲気である。

  一気に日勝ピークまで行ってもいいが、そこまで行くともう終わりみたいなものなので、手前の1370峰で昼食タイムにする。目の前に広がるペケレベツ岳とその南に連なる日高山脈の主稜線を見ると、芽室岳もその頭を見せている(9)。時間的にも十分余裕があるので、このまま日勝ピークの手前からペケレベツ岳もやってしまおうかという思いも頭をかすめる。風がかわせて、ポカポカ陽気にすっかりのんびりしてしまう。


 珍しく45分も休み、あと30分ほどと見込まれる日勝ピークの緩やかな登りに掛かる。なんとこの辺りは風で飛ばされた雪がたまっているらしく、新雪が20cmほどもある。ただし、気温が上がってきているので、重たくなっている。頂上付近はハイマツが新雪の下から頭を出し、その間を縫って登っていく。こちらが昼食を摂っている間に追い越していった4人グループと相前後して頂上へ到着し、3回目のシールを外す。1370峰からわずか20分であった。

 日勝ピークはさすが山スキーの名所である。多くの人が頂上の下で休んでいた。滑り降りる斜面の上に出て、初めて、下から見上げるのとは違うこの斜面のすばらしさを知る。日勝トンネルの上まで、スキー場のような標高差500m近い適度な斜度の大斜面が広がっている(10)。確かに、ここを滑るためにこのピークに登る人が多いわけが分かる。すでに多くのシュプールが刻まれ、下から登ってくる人も多くいる。新雪がこれだけ積もっているのだから、朝のうちだったら快適なパウダー滑降を楽しめたに違いない。

 この縦走の最後の楽しみがこれである。雪が溶けてだいぶ重くなってはいるが、ターンを刻むには十分快適である。一気に滑り降りるのはもったいなく、途中で2度ほど立ち止まったが、あっという間にトンネルの上に下り立つ。時間的にもまだ12時過ぎである。もう一回登り返して滑りを楽しもうかとも思ったが、それほどの雪質でもなく、十分満足し、予想より楽だった縦走に満足して終わりとする。

 駐車場脇のガードロープに錠を掛けデポして置いたマウンテンバイクを取り出し、スキーとストックをそこに置いて、今滑り降りてきた日勝ピークとその下の斜面を見上げて(11)、兼用靴のままマウンテンバイクに跨る。ここから距離にして9km、標高差200mの概ねペダルを漕ぐ必要のないダウンヒルのはずである。ただし、直ぐ下の360度近い大きなヘアピンカーブをする長い三国の沢覆道の中はヒヤヒヤハラハラものである。後ろか来る車を信じて下っていくしかない。どの車も対向車がないときは大きく膨らんで追い越してくれる。

 覆道を出てホッとするが、それ以降も路側帯もないカーブの続く狭い国道である。15分ほどのスリリングなダウンヒルを楽しみ、ようやく、奥沙流林道ゲート前の車でも地点へ到着する。朝停まっていた車はもう無くなっていた。あの二人連れはどこへ行ってきたのだろうと思いながらマウンテンバイクを積み込み、来た道を戻り、スキーとストックを回収し、帰路に就く。 


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