2日目〜まずは、10年ぶりのペテガリ岳を目指す。

 小鳥のさえずりで微かに明るくなった3時過ぎに目が覚める。視界は限られているが、どうやら快晴の朝のようである。5時15分、2日目の行動開始である。まもなく次のピークに上がると、樹間から鋭く天を突く早大尾根の1483峰が最もいい形でその姿を呈し(1)と北側にはコイカクシュナイ岳が覗く。

 30分ほどで、早大尾根と合流する1518ピークに到着。ここで、初めて南日高から北日高までの大展望が広がる。快晴の空の下に惜しげもなくさらけ出しているその姿とご対面である。何度も目にした眺めであるが、見る地点がそれぞれ違うだけに新鮮なうれしい眺めである。南は20日前に登ったばかりのペテガリ岳の隣の中ノ岳、昨年の夏に猛烈な藪漕ぎで歩いた神威岳〜ソエマツ岳の稜線、今春真っ白な細い稜線を辿ったピリカヌプリなど、さらには遠くの楽古岳まで見えている2)。北側には、これから辿る東尾根とその先にペテガリ岳やその後に進むルベツネ岳〜コイカクシュナイ岳までの稜線とその間に尖った頭だけ出している1839峰などに目が向くが、その奥にどっしり聳えるカムエクなどの北日高の山並みが続く(3)。

 




 それらの展望をしばし楽しみ、下っていくが、ここから国境稜線の合流地点である1573ピークまでは、次から次と現れるピークを越える急峻な岩混じりの痩せ尾根と猛烈な藪漕ぎが続く。しかし、それらを掻き分けながら一息ついても主稜線や十勝平野方面の眺めがすばらしい。とくに右手の足下から鋭く切れ落ちる中ノ川の谷底まで見える斜面はダケカンバと草付き斜面であるが、谷底の雪渓の上に親子熊の姿が見える。また、岩場にはその基部を巻く踏み跡あり、ロープが張られていたりするが、足下から崩れそうなところもありで気が休まらない。それでも、足下に目につくようになったヒダカゲンゲの花が慰めてくれる(4)。

 強烈な藪漕ぎと痩せ尾根から解放される1573ピークを目指して、ひたすら我慢のアップダウンが続く。1537ピークを目指しての最後の登りの右側にペテガリ岳とルベツネ山が見えている(5)。

 スタートして4時間半ほどで、ようやく国境稜線の1573ピークへ到着する。快適なテン場が2箇所ほどあり、目の前にはペテガリまでの岩稜混じりの尾根が見える。しかし、気になるのがだんだん日高側から主稜線を越えてくる白い雲である(6)。
しかし、尾根の南側の斜面は一面花畑状態で(7)、ヒダカゲンゲ、ウサギギク、ミヤマリンドウ、ハクサンボウフウ、カラマツソウ、エゾツツジ、チングルマ、チシマギキョウ)などが咲き乱れている。

 岩稜尾根は結構ハイマツが厳しく、それらを掻き分けるか岩稜の上を越える踏みあとが続く。やがて、岩稜帯を越えると岩石斜面のAカールの上に出る。さらに笹薮とハイマツの境目の藪を漕ぎ、尾根を乗っ越し北側の花畑の斜面をトラバースする。ここもまさに花畑状態である。ここは先ほどの南側の斜面の花の他にチシマキンバイが目立つが、熊の掘り返しも凄い(8)。

 さらに再び尾根に戻り藪kぎをしていると頂上から若い男性が下を覗いている。1417テン場から予定通りの5時間少々で、山岳ガイドである彼とお客さんである3人の年輩の男性に迎えられて10年ぶりのペテガリ岳頂上である(9)

 ただし、日高側からの強烈な風に吹き上げられてくる濃いガスにすっかり覆われてしまい、これから辿る先の主稜線の山並みは見えなくなっているのが残念である。明日からの天気予報が下り坂である。もう回復の可能性はないかも知れない。一層のこと、今日中に西尾根コースに下りようかと迷って、ガイドの男性と話すが、彼は「ここまで来たのだから、ぜひCカールに泊まった方がいいですよ。」という言葉に思いとどまる。彼からペテガリ山荘まで入れる詳しい林道情報もいただく。

 そうこうしている内に京都から来たという3人パーティが到着する。その中のリーダーが以前やはり東尾根から取り付いて1417テン場まで上がったが、雨で撤退した経験があるそうである。12時過ぎまで待ってみたが晴れそうもないので、Cカールを目指し、ハイマツ帯の稜線を北側に進むことにする。
 
 つづく

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