[7] 夕張岳 (1668m)  [大夕張コース]   2回目 1998,6,13

     前回恵まれなかった展望と、時期の早いユウバリソウ、ユウパリコザクラとの出会いを期待しての6年ぶりの再訪

4:00 函館発
9:45通行止地点
登 山 地  点下 山
10:00通行止地点18:35
11:15
12:15
(冷水コース)
12:45
13:15
14:30
登山口
分 岐

望岳台
憩 沢 
頂 上
17:25
16:35
(馬の背コース)
16:15
16:00
15:00
[3:15]所要時間[2:25]
[4:30]総所要時間[3:35]

19:40  桂沢温泉(入浴)
20:30  同駐車場(車中泊)

  2日間、特異な花の山として有名な夕張岳と崕山をセットにして、この時期にしか出会えない花々と展望 を楽しみに夕張岳は6年ぶり、崕山は2年ぶりに再訪する。
 
早朝、函館を出て、札幌で妻を下ろし、一気に登山 口を目指す。シュウパロユ湖付近から目指す夕張岳と荒々しい前岳が姿をはっきりと見せてくれるのがうれしい(1)。順調な走行で予定より1時間早く登山口へ着くはずであったが、その手前で、車が7台ほど止 められてある地点がある。6年前の記憶ではそこが登 山口ではない。まだ先のはずである。変だなと思ってちょっと進むと、崖崩れで道がふさがれている。
シュウパロダム付近からの夕張岳
 工事現場の人の、「5km位かな? 1時間くらいでしょう。」という話である。ところが、かなり急いで歩いたはずなのに、なんと1時間15分も要してしまう。6kmはあったのではないだろうか。

 11時15分の登山開始は、これまでの登山歴で始めての経験である。「日が長い時期だし、今日は、函館まで帰るわけではない。暗くなる前には戻れば、林道歩きは暗くなってもヘッドランプもあることだし、なんとかなるだろう」と自分に言い聞かせて、登山を開始するが、これまでもそうであるが、スタート時間が遅いと、どうしてもペースが速くなる。                               

 馬の背コースの分岐の手前で、「今日は、諦めて、ヒュッテで休んだだけで、これから戻ります。」と言う男性二人連れと擦れ違い、冷水沢の手前で追い付いた男女二人連れは、「行けるところまで行って、戻ります。」と言う。それから、望岳台までで追い抜いた4人全員も、「途中で戻る」と言う。だんだん不安になり、こっちは、「絶対頂上まで行く」という決意だけに、ペースが余計上がってしまう。
 
 まだ林の中で展望も無いだけに、急な道をひたすら黙々登るだけである。それでも、ムラサキヤシオツツジのピンクの花が気分を安らげてくれる。トドマツとダケカンバが目立ち、高山の雰囲気が出てくると、水の音が聞こえ、冷水沢に予定より15分速い45分で到着。喉を潤し、水を汲んで、すぐに出発。足元にはツバメオモトやシラネオアイが付き合ってくれるのがうれしい。頭上に聳える前岳の荒々しい岩峰を見上げながら、ジグを切る辛い斜面を、この山特有の緑色の蛇紋岩の岩を踏んで、ハイペースで登る。  

 望岳台に、予定よりかなり速い1時間30分で到着。6年前は、ガスの中の山行だっただけに、見上げるのが怖いくらいの前岳や滝の沢岳の迫力ある姿を初め、芦別岳を中心としたスケールの大きな眺望とは初対面である。ここまでくると、後は頂上直下までは、花を楽しみながらの標高差のほとんどない歩きである。どっと緊張感がほぐれ、この眺望を楽しみながら15分も休憩する。前回泥だらけになった前岳湿原の歩きに備えて、スパッツをつけて出発する。
 
 前岳の根元を巻くように、向きを変えてちょっと進むと、目指す頂上とそこまでの複雑な地形が目に入ってくる。ときおり残雪が現われ、エゾノリュウキンカやフギレキスミレが目立ち、やがて憩沢に到着。6年前は8月初旬だったのでシナノキンバイに覆われていたのが印象に残っているが、今回は、残雪だけで、その面影はまったくない。やはり、冷たい水がうまい。山ではいかなる飲み物もこの水に勝るものはない。 

ユウパリコザクラ 前岳湿原に出たところで、目の前を横切って逃げて行くエゾシカに驚かされる。ここで、下山してくる男性と出会う。上には6人程いるとのこと。次に目指すはガマ岩付近の花である。徐々に、花が現われ、ハクサンチドリ、ミヤマキンポウゲ、ミヤマオダマキ、アズマギク、ハクサンイチゲ、シナノキンバイ、タカネグンバイなどを見ながら、ユーパリコザクラ(2)の咲くという蛇紋岩崩壊地に到着。わずか2株だけ目にしただけであるが、ユウバリタンポポもあちこちに咲いている。前回は、覆い尽くされていた湿性のお花畑が時期的にまだ見当たらないのがちょっと寂しい。
 
 次々と下山してくる3組の人達と擦れ違いながら、いよいよ一番の吹き通しに咲くユウバリソウ目的であったユウバリソウ(3)の咲く吹き通しである。どうしてこんな厳しいところにしか咲かないのか不思議なほど、慎ましやかな白い可憐な花に感動の対面。周りには、黄色い小さな花をこんもりとつけたナンブイヌナズナ(ユウバリナズナ)と蕾を抱いたユキバヒゴタイなどが、まさにへばりつくといった感じで咲いている。  

 最後の急斜面に、ハイペースの疲れがどっと出て、思うように足が上がらない。頂上にあともう少しというところで、初めて持った携帯電話にあらかじめ打ち合わせておいたより遅い時刻であるが、タイミング良く妻からのコールが入る。妻と話しながら誰もいない頂上へ到着。登頂の喜びを直接伝える。これもうれしい初体験である。
 
 前回は、頂上標識しか見えないガスの中の頂上であったが、今回は日高山脈までも見えるすばらしい展望である。前岳までの複雑な地形と芦別岳を中心とした夕張山系の山々、明日登る崕山も見えている(4)。それらの大展望を楽しみながら、遅い昼食を摂る。眼下の金山コースを下って行く人の姿も見える。今度、この山を訪れるときには、このコースにしようと決意する。
 のんびりしたいが、みんな下山した後の遅い時刻である。前岳までのコースを目で辿っても、誰も来る気配もない。帰りの時間も気になり、わずか30分で下山開始する。 
頂上から芦別岳方面の眺望
 頂上直下のハイマツ帯には、キバナシャクナゲが、ちょうど見頃の花や蕾をつけていた。崩壊地では、もう一度ユーパリコザクラの姿をゆっくり探し、ようやく10株程見付ける。まさに息絶え絶え状態とはこのことであろう。まだ、どこかに咲いているのであろうか。前回は、いろいろな特異な花がへばりついて咲いていたガマ岩も、時期的に早いらしく、ユウバリキンバイとシナノキンバイ以外にはほとんど目にすることができなかった。
 
 登りでも気になったが、地形図の冷水沢コースと馬の背コースの上の分岐の位置が絶対おかしい。望岳台からの距離が極端に短いし、等高線を見ても、急斜面があるのに、そう表現されていし、高度計で測っても、地図上では 1300m付近にあることになっているが、実際は 1100m付近である。すなわち、実際より上の方にあるように表現されているのである。

 その分岐から、下りはかなりきつい馬の背コースをとる。予期しない林道歩きのせいで、ペースを上げて歩いたためか、右膝裏の腱に痛みを感じる。これは下りが辛い痛みである。確かに登りは冷水コースの方が水場もあり、傾斜も緩く楽のようである。ヒュッテには人の気配もない。

 登山口には、予定通りの17時30分に到着。あとは、1時間15分のやや日が陰ってきたらしい林道歩きである。途中、珍しいウサギに出会う。前にふと飛び出した大きな黒っぽいウサギ、すぐ逃げ出すだろうと思って近付き声を掛けても逃げないで、じっとこちらを見ている。その距離が5mくらいになり、手が届きそうになると、ぴょんぴょん跳ねて先へ行って止まり、こちらを振り向いて、こちらが近付くのをじっと待っている。ちょうど、飼い犬がよくやる光景である。それを300mくらいの間に10回ほど繰り返して、藪の中に消えていった。薄暗い真っ直ぐな林道だけにまるで夢を見ているような光景であった。カメラをと思ったが、ちょうどフィルム切れで、残念であったが、今でも妙に目にはっきり焼き付いている。
 
 帰りの林道歩きは疲れてはいるが、緩いとは言え、やはり下りなのであろう。往きより5分速く車止め地点に到着する。これが日曜日であったら、多分最後の1台であったはずであるが、明日が日曜日である。ここで夜を明かす人達の車が6台ほどあった。
 国道へ出て、北上し、目的の桂沢温泉を目指す。


1回目  1992、8、1(大夕張コース)

評判通りのすごい種類の高山植物の花々との出会いがうれしかった。
登山  地   点下山
6:00
6:40
6:55
7:15
7:30
7:55
8:35
登山口
冷水の沢
馬の背コース分岐
望岳台
憩沢
ガマ岩
頂上
12:40



※ガマ岩探索
※湿原探索
9:00
[2:35]所要時間[3:40]

登山口にはすでに車が5〜6台。昨日からの泊まり 客も含めて9人程入山している模様。 登山道の様子は、人がたくさん入っているらしく、 憩沢辺りまでは、結構こなれていて歩きやすい。ガマ岩にへばりつく高山植物
  馬の背分岐辺りまでは白樺とエゾ松の大木の林。よ うやく展望が開けるが、上空は厚い雲、望岳台辺りか らガスの中で何も見えず。 憩沢のシナノキンバイの群生にまず驚く。その後は 前岳湿原、木道が所々にあるも、用をなさないくらいのぬかるみと濃いガスで、周りの高山植物にあまり目 が届かず。ガマ岩やひょうたん池付近、その上の蛇紋 岩の露出地は特に高山植物が多い。(下山途中ゆっく り見ようと思い展望の利かないガスの中をひたすら進む。)吹き通しのところはかなりの強風。そこは裸地になっていて、ユウバリソウ(花が終わっている)やユキバヒゴタイがへばりつくように生えている。
 
 そこから頂上へ向かってハイマツの急斜面を緑色の蛇紋岩を踏みしめながら、ジグを切って登る。山頂直下の窪地でテントを解体している2人に出会う。8泊もしていたとか(下山途中で測量に入っていたことが判明)。 頂上一番乗り。しかし、濃いガスの中で展望全然利かず。そうこうしているうちに追い越した9人程が次々到着。風を避け、狭いところで高山植物の話をしながら休憩。時折、ガスの中から暖かい陽射しが微かにさすも、晴れそうにもなく、全員下山開始
湿地性の花畑
帰り、江別からきた2人連れと同行させてもらう。そのうちの一人はかなり登っているらしく、山に様子や高山植物にも詳しい。道端の花のほかにわざわざ湿地帯の奥やガマ岩の周りに連れて行って色々な花を教えてくれる。とくに驚いたのはガマ岩にものすごい種類の高山植物がへばりついて咲いていることである。この事からしても、この山が高山植物の宝庫と言われていることは、この山を形成している蛇紋岩の地質からなっていることが分る。とにかく、始めてみた花が圧倒的に多かった。大満足。 いずれにしても、一人で歩いていたらこれ程多くの花に接することはできなかった。2人連れに感謝の念で一杯である。天気の良い日にもう一度是非訪れたい山である。

 下山途中ようやくガスが上がって展望が開け、夕張山系(芦別 崕 鉢盛 名のない尖った山)が見渡せたが、夕張岳の頂上はついに姿を見せなかった。

◎本で確認できた花
黄色 エゾウサギギク ミヤマオグルマ  ハイオドリギ  イワベンケイ  ナンブイヌナズナ  エゾノキンリュウカ  シナノキンバイ  ミヤマキンポウゲ シソバキスミレ    
ナンブイヌナズナ
白色 エゾノハクサンイチゲ  ヤマハハコ  ユウバリソウ  イワイチョウ  ツマトリソウ  カラフトイチヤクソウ  コバノイチヤクソウ  シラネニンジン オオカサモチ  チングルマ   ウラジロナナカマド  タカネナナカマド  エゾノクモマグサ  クマユキノシタ  ミヤマダイモンジソウ  モウセンゴケ カラマツソウ  オオイワツメクサ  マルバシモツケソウ
赤色 ユキバヒゴタイ  リンネソウ  イワブクロ  ヨツバシオガマ  シオガマギク  ユウパリリンドウ  チシマツガザクラ  オオタカネイバラ  エゾノシ モツケソウ  ユウパリミセバヤ  イブキトラノオ  ハクサンチドリ  シロウマアサツキ
紫色 ミヤマアズマギク  イワギキョウ  モイワシャジン  ムシトリスミレ  ミソガワソウ  エゾルリムラサキ  エゾルリソウ  ミヤマアケボノソウ  リシリリンドウ チシマフウロ    エゾアジサイ  エゾノホソバトリカブト  ミヤマオダマキ  ヒメウギアヤメ
黄緑エゾノヨツバムグラ  リシリレンゲ  エゾノレイジンソウ  ユウバリチドリ  サマニヨモギ  タカネシバスゲ  タカネクロスゲ


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