[10] 羊蹄山 C[比羅夫コース] 1997、9、23

11年ぶりに比羅夫コースを訪れ、高度変化に伴う秋から冬への移ろいを楽しむ。

2:00 自宅発(函館)
登山地  点下山
5:55
7:15
8:35

9:15
登山口
5合目
9合目
避難小屋
頂上
12:50
12:00
11:10
10:40
10:00
[3:20]所要時間[2:50]

13:30 昆布・新幽泉閣(入浴)
18:30 帰宅
天気予報に誘われ、紅葉に彩られているはずの羊蹄に向かう。どうせなら、大学のときに同じ研究室の仲間で、さらに息子が5年生のときに二人で登った比羅夫コースを11年振りに再訪し、「一人歩き4コース完全制覇」を目指そうと考えて出発。
 まだ真夜中、星空を眺めながら車を走らせる。白々と夜が明けてくる頃、頂上部分を厚い雲に覆われたその姿が見えてくる。

 11年前息子と二人で満天の星空の下のテントで夜を明かした登山口付近は、すっかり整備されキャンプ場も兼ねた自然公園となっている。見上げると6合目より上は美事な紅葉に彩られてている。まだ薄暗いうっそうとした林の中に続く登山道を進む。朝方かなり冷えたようで手が冷たい。寒いせいか、小鳥の囀りもほとんどなく静かな林である。1合目辺りまでは、散策の人が入るのであろう、快適な遊歩道状態の道をのんびり15分程進むと1合目である。そこで、道は右手に大きくカーブし、急斜面のジグザク道となる。少し登って振り返ると、樹間にニセコアンヌプリが朝日を正面から浴びて、青空にくっきりとその姿端正なを現している。タカネナナカマドの実

 2合目からは、登山ストックを利用して、いわゆる四輪駆動感覚の登りを楽しむ。だんだん周りに紅葉の彩りが増え、秋の様相が濃くなってくる。 道は次第に露岩が多くなり、結構ジグザグになったり、傾斜が変わったりで、京極コースや喜茂別コースに比べて変化があり、展望も比較的良く、真狩コース同様あまり辛さを感じないコースである。
 
 4合目から5合目付近には、エゾマツの大木が目に着き、それに絡まるツタウルシの紅葉が一際目立つ。また、二本並んで立ち、「夫婦松」といわれるエゾマツの大木のそばに「植物はここで生きている」という標識が立っているのに、片方が枯れてしまっているのは、皮肉は感じである。
 5合目からは、樹木も低くなり、ハイマツも顔を出し、高山の雰囲気となってきて、周りの木々も紅葉真盛りで、この時期ならではの登行を楽しむ。道は、登山者の多さと雨水のせいであろうか、掘れては函状になっているのは、11年前と同じ印象である。 6合目で、南から大千軒〜狩場山〜ニセコ連峰〜岩内湾〜積丹半島〜余市岳などの大展望、そして、眼下に広がる倶知安の町並みと出来秋の水田や畑地などを眺めながらのんびりと休憩。裾野に広がる針葉樹林帯の中に半月湖がぽっかりとその湖面を覗かせている。
 
 だんだん傾斜がきつくなり、ほとんど露岩の階段上の九十九折りとなり、左手に北山が見えてくる。手が冷たくなり、軍手をつけて登る。ハイマツが多くなり、氷に覆われたタカネナナカマドの赤い実が朝日に融けてきらきら輝いている(2)。岩礫に覆われた9合目で、避難小屋戸の分岐に到着。足元の土は霜柱に覆われ、岩にも氷が張り付いている。思わず高度を感じてしまう。傾斜も緩み、左手に高山植物の草紅葉が美事な日高のカールを小さくしたような地形を見ながら直進する。右手の一面のハイマツ帯は、その表面を覆った霧氷がようやく頂上稜線から顔を出したばかりの太陽に白く眩しく輝いて、幻想的な世界を演出している。足元の霜に覆われたコケモモの葉が小さくきらきら輝くのもかわいい。そんな晩秋と初冬の狭間の雰囲気を楽しみながら頂上稜線を目指す。
霧氷に覆われる頂稜
 2時間50分で、母釜の縁に到着。これから辿る頂上稜線には二人の姿が見える。砂礫の稜線を登り、北山のピークを越え、頂上稜線に出ると、草や灌木や岩が一面霧氷で覆われ、真っ白に光っている(2)。その下に紅葉が広がっているだけに、モノトーンン状態の景観が美しい。9月中旬に多く訪れていて見慣れている父釜の南側火口壁の紅葉はすでに終わり、霧氷が張り付き銀色に光るハイマツの緑と茶色のツートンカラーが目新しい眺めである。

 3時間15分で、これまで頂上だとされていた京極ピークへ到着すると、向こうの喜茂別ピークに6月に来たときに無かった新しい大きな標識が立てられている。そちらへ行ってみると、やはり、新しい頂上標識で、前からこちらの方が高いのではと思ってはいたが、これからは、こちらが新しい羊蹄山の頂上となるらしい。

 落ち着いて眼下に広がる360度の大展望を眺めると、過去6度も来ているのにもかかわらず新鮮な感じがする。確かにこれまでは、なんとなく霞んだような展望が多かったような気もする。真下にぽっこり盛り上がる尻別岳、その右手に洞爺湖や有珠山、その東側に連なる徳舜瞥岳〜ホロホロ岳〜樽前山〜風不死山〜奇妙な形に見える恵庭岳などが、まるで新しい発見のような感じなのである。さらに、北側の無意根山や定山渓天狗岳、そのずっと向こうに増毛山塊なども新鮮に見えるのが不思議である。ただ残念のは、6月の芦別岳からこちらがはっきり見えたのに、逆には見えなかったことである。「山は、何度訪れても新しい発見がある。」という言葉があるが、まさにその通りである。            
 岩陰でお湯を沸かし、朝食をとる。だんだん到着する人数が増えて、山座同定が賑やかになってくる。そのうちに、一番敬遠されるわけを6月に実感した喜茂別コースからも8人も到着するにはびっくりする。どの人も「このコースだけ残していたものですから」という反応が多かった。 
 
 次々到着する人達とおしゃべりしながら過ごし、45分後、父釜の南側の岩稜線の上を回り、避難小屋経由の予定で下山を開始する。真狩コースから沸き出すように次々と登ってくる登山者を上から眺めながら分岐に到着。それらの人達と擦れ違いながら避難小屋へ下りる。小屋の手前の窪地の草紅葉を期待してのコース取りであったが、やはり美事であった。
 
 避難小屋の管理人といろいろおしゃべりをしていたが、「 今朝ご来光を仰ぎに行った人達がブロッケン現象を見ることができたそうで、大喜びでした。」とのこと。早速、そのブロッケン現象の出やすい状況を聞いてみる。「自分より低いところにガスや雲海があって、太陽を背にしたときに見えやすい」とのことである。まだ、目にしたことがないだけに、新しい目標ができる。そのためにも、いずれ、「ご来光目当ての一泊登山を」と決めて、小屋を後にする。星が池付近の草紅葉
 
 その後、やはり草紅葉に囲まれた星が池(3)を上から見ながら、9合目の分岐で比羅夫コースへ合流する。下りは、ダブルストックでスキーの感覚で下る。登山口へ着いて、30台以上もある車にびっくりする。天気予報が良かったのと、早い紅葉を満喫できること・・・自分もそうだっただけに、納得して帰途につく。
 
 これで、この山の4コース全部を「一人歩き」で制覇したことになる。これからは、コースにこだわらず、季節を変えたり、初冬や早春の雪のある時期、避難小屋での1泊登山などの目的を変えながらずっと楽しみたい山である。

途中、新しく立て替えられた蘭越町昆布の新幽泉閣のすばらしい温泉でのんびり汗を流す。          

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