[10]  羊蹄山[1900m] B[喜茂別コース] 1997,6,22
 初夏の花との出会いを楽しみに、4コース中もっともマイナーな喜茂別コースに挑戦

2:30 自宅発(函館)
登山地点下山
5:30
6:10
8:30
9:00
登山口
尾根取付き
9合目
頂上
13:15
12:35
11:15
11:00
[3:30]所要時間[2:15]

13:40 真狩温泉(入浴)
17:15 帰宅
 天気予報のよさと夜中に目覚めた勢いで、急遽思い立ち、4コースのうち、まだ歩いていない喜茂別コースから、これも初めての6月の羊蹄に花を楽しみ向かう。真狩の手前から朝靄の中に端正な姿を現す。
 
 真狩から、羊蹄の裾を巻いて京極へ通じる道々に登山口の標識が立っている。昔の分譲地の入口らしい。登山口は、その道を600mくらい入ったところのゲートである。すでに車が1台止まっている。まだ奥に真っ直ぐ続く立派な作業道らしい道を進む。正面の朝靄の上に朝日を横から浴びて輝く頂上部が覗く(1)。
 登山口から望む羊蹄
 地形図やガイドブックでは、登山道がその道の延長上に真っ直ぐ続いているように記されているが、その作業道はカーブしている。標識もなく、果たして登山道に続くのか不安になってくる。つづら折りになって上に延びている作業道を前の人の足跡を励みに3kmも歩いた地点の砂防工事現場の手前で、それらしい尾根取り付き部分を見付けるが、倒木で塞がれるようになっている。半信半疑でその中に掻き分けて入って行くと、尾根に続く踏み跡状態の道が続いていて、急斜面にロープが下げられていて、ようやくほっとする。
 
 ダケカンバの大木の林の中に両側に一面マイズルソウの群生が続く急な道を淡々と登る。休むきっかけになるような変化もなく、登山口から1時間の地点でまず休憩。右手に深い谷が覗く。どうやら、この谷の縁の尾根稜線沿いに道が続いているらしい。 やがて、ダケカンバの丈も低くなり展望も開けてくるが、下界はガスの下で、そのうえに尻別岳が意外に高く頭を見せている。
 
 標識もまったく無く、変化もなく、竹の子状態の若竹が道ににょきにょき生えているところを見ると、あまり利用されていないコースなのであろう。そんな急な道を2時間ほど登り、他のコースならそろそろ森林限界に出てもいいころなのに、まったくその気配がない。
 やがて、道に岩や木の根が現れだし、傾斜が増し、大きくジグを切り出すころ、前を歩いていた60歳前後の男性が休んでいる。「4時にスタートしたが、尾根と利付き部分が分からず、作業道を奥の方まで進んでしまって、戻ったりしてだいぶ時間ロスをした。」とのことである。こちらは、その形の足跡のお陰で迷わずに住んだだけに、追い越すのが申し訳ない気がした。
エゾノツガザクラの群生 
 まもなく、ハイマツが顔を出し、ミヤマキンバイの花や雪渓の詰っ源頭部にようやく高山の雰囲気が感じられるころ、右上に頂稜が覗く。森林限界を抜けたところの岩場に、このコース初めての標識・「九合目」が設置されている。イワベンケイ、ハクサンチドリ、エゾノツガザクラ、キバナシャクナゲ、まだつぼみ状態のイワブクロなどの花々に心躍る。ゆっくり休んで、頂上の急登に備える。
 
 それらの花を楽しみながら、露岩帯の中の道をジグを切って続く道を登る。喜茂別峰直下の岩を覆うような黄色と白の絨毯状態の花が見える。近付くとミヤマキンバイ、イワウメ、コメバツガザクラの大群落であった。その喜茂別峰から北側の斜面に大きな雪渓を残し、底に雪解け水を溜めた父釜を右手に見ながら、岩稜伝いに火口壁の頂稜の踏み跡を辿り、頂上を目指す。
 
 登山口から3時間半、女性が一人休む頂上へ到着。京極コースから2時間半、真狩コースでも外輪山まで2時間半に比べると、かなりきついコースということになる。確かに、前半の長い九十九折りの作業道歩き、変化のない直登に近い急な尾根道などこれまでで一番きついという実感はある。

 これまでは、秋ばかりのこの山であるが、今回は念願の花の山である。頂上の下で、食事をとり、リュックをそこに置いて、1時間ほど花の稜線探索を楽しむ。真狩コースや比羅夫コースから次々と沸き出すようにたくさんの人たちがやってくる。
 花は、エゾノツガザクラ(2)、ミヤマキンバイ、キバナシャクナゲ(3)が主で、道端にはこの山が南限のメアカンキンバイが目に着く。コケモモはまだ蕾状態である。雪渓の残る窪地にはヒメイチゲやタカネグンバイの質素な姿を見せている。キバナシャクナゲの群生
 
 11時、下山開始。急な登りは下りも辛い。9合目の下の谷地形の方から、この山では決して耳にしたことのない水流の音がする。この時期だけの贈物である。迷わず空のペットボトルを手に、藪を漕いでその音のする方へ行ってみる。ちょうど雪渓の下が露岩帯になっていて、その窪みの部分を雪解け水が勢いよく流れているのである。早速飲んでみる。冷たくおいしいことはいうまでもない。この山の登山道近くで水場があるのは、この時期のこの場所くらいのものであろう。
 
 あとは、ひたすら急な辛い下りから解放されることだけを楽しみに、忍の一字でどんどん下る。敷き詰められているダケカンバの枯葉のお陰で滑ることもなく、登りの約半分の1時間半で作業道へ出る。その地点から頂上を振り仰いで見たが、すでにその部分だけがガスに覆われていた。
 
 先に下りていた、登りで追い越した札幌の男性にまた追い付き、二人でいろいろ山の話をしながら、蝉時雨の中の作業道をのんびり下る。二人で共通したこのコースの印象は「作業道歩きが長く、時間も掛り、標識もなく、変化のない急登が続き、4コースの中で一番きついコース」ということである。利用する人が一番少ないわけが分かる気がする。 この作業道ができる前は、真っ直ぐな登山道があったのであろう部分は、すでに草で覆われていてその面影が微かに残るくらいである。
 
登山口でその男性と別れ、いつも混んでいるが、露天風呂から間近にこの山を望める「まっかり温泉」で汗を流し、帰路に就く。

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