無謀な大冒険「羊蹄山8の字縦走」
真狩コース〜京極コース〜喜茂別コース〜比羅夫コース 単独  17,8、31
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歳甲斐もなく、無謀な大冒険「8の字縦走」を1日で踏破しました。
前夜 真狩登山口(泊)
登下山
地点
 1:20
 5:10
 5:20
 7:25
 7:35
----
9:25
9:50
13:25
14:00
16:40
17:00
----
20:10
真狩登山口
1回目の頂上着
  〃     発
京極登山口着
  〃    発
(車道歩き)
喜茂別登山口着
   〃    発
2回目の頂上着
   〃    発
比羅夫登山口着
   〃    発
(車道歩き)
真狩登山口着
[18:50]所要時間
20:30 真狩温泉(入浴)
21:10 真狩道の駅(車中泊)
                        
 
○プロローグ
 羊蹄山は、日帰り可能な山の中で、もっとも登り応えがあり、体力試しを兼ねて、毎年でも登り続けたい山である。
 今年は、歳甲斐もなく、無謀な大冒険「羊蹄山8の字縦走」を考えた。要は4本ある登山道と車道を繋いで、1日に2度頂上に立ち、8の字を完成するというものである(1)
 この計画はオリジナルなものではなく、HYML仲間のEi-taroさんの昨年の記録を参考にさせたいただいた。Ei-taroさんは、現在は50歳前後であるが、トレイルランにハマっていた10年前に、13時間台で踏破している。当時は、とてもまねができるものではないと思っていた。しかし、昨年、歩きで最挑戦した結果は20時間47分だった。「これなら自分でもできるかも?」と考えた。その根拠は、自分が4年前に「幌尻岳日帰り(北戸蔦別岳経由)」を12時間40分で踏破したが、翌年同じコースに挑戦したEi-taroさんの所要時間は、わずかながらではあるが自分より遅かったからである。

○計画と準備
 自分が立てた計画は次のようなものである。真夜中1:30に真狩登山口をスタートし、頂上でご来光を迎える。その後京極コースを下る。2kmほど遠回りになるがローソンで水とエネルギー補給をする。喜茂別登山口までの車道を歩き(10.5km)、喜茂別コースを登って2回目の頂上へ。そして、できれば明るいうちに比羅夫コースを下り、暗くなってからでも真狩登山口までの車道(14.2km)を歩いてゴール・・・というものだ。車道歩きは、地図を見て、最短距離のコースを考えた。目標は20時間。
 (結果的には、京極登山口で水を分けてもらったので、ローソンへは寄らなかったために、車道歩きは2km短縮された)

<コース取りの決定にあたって>
@2日に渡らないで、1日で歩き通したい。
Aそのためには、どうしても、昼を挟んで、スタートとゴールは夜の歩きとならざるを得ない。そこで、一番長い真狩登山口と比羅夫登案口を繋ぐ車道歩きを最後には持ってきたかった。
 (ちなみに、Ei-taroさんは前日の午後から歩き始めて、登山道歩きのほとんどは日を跨いでの夜間登山となっている。これが自分より所要時間が長くなった要因かも?)
 
<ギブアップライン(ポイント)>
  しかし、過去に1日で20時間も歩いたことはないし、獲得標高差3420m(車道歩きの最低標高と頂上標高との差)というもの初めてだ。無理は承知の上なので、いくつかのギブアップライン(ポイント)も考えておいた。
 @喜茂別登山口まで11:00に到着できないとき
  A喜茂別登山口へ到着した時点で、足の具合や体調で2回目の登山が無理だと思うとき。
  B2回目の頂上で、足の具合や体調で下りが無理な時は、避難小屋で1泊。
 C比羅夫登山口へ下山後、歩きが無理な場合は、予めデポしておくマウンテンバイクで車道を戻る。
 ※万が一のビバークに備えて、ツェルトとビバーク用シート、インナーダウンを持参。

<装備と食糧・水等>
 上記のビバーク用の装備のほかに、軽いサブザック、ポール、ローカットのトレッキングシューズ、短いスパッツ、薄いウインドーブレーカー、手袋、帽子、ヘッドランプ(予備電池)、食糧(どら焼き2個、菓子パン1個、赤飯おにぎり1個、バー類5本)、水(ポカリスエットの粉2g分、グリコのクエン酸BCCAの粉2本1g分 (※結局使用は、ポカリは1g、BCCAを1g))、
 
○行程ごとの記録

○まずは、夜間登山で真狩コースを登り、京極コースを下る

 前日の午後に家を出て、保険のためのマウンテンバイクを比羅夫登山口へデポした。その後、真狩温泉に入り、コンビニで夕食を購入し、真狩登山口で18:30には車中泊態勢に入る。
 5時間ほど眠り、0時過ぎに目が覚めたら、満天の星が広がって、山もきれいに見えていた。菓子パン1個を食べて、準備する。
 

 1時になったら、急に雨が降ってきた。出だしから冷や水!雨の心配ない日を選んだので、軽量化のために雨具は持ってきていない。それほど長雨にならないと思う。案の定、すぐに霧雨状になった。
 0:20、予定より10分早くスタート(2)まもなく雨も上がった。ヘッドランプの光を頼りに進む。やたらと昨年の台風で倒れたと思う太いダケカンバの倒木が多い。
 ロングコースの挑戦なので、ゆっくり歩くことを心掛けた。後ろを振り返ると、真狩市街地を中心とした町の灯が美しい(3)
 5合目を越えた辺りから、ガスに巻かれたり、星が見えたりと、目まぐるしく変わる中を進む。避難小屋との分岐のある9合目で、明るくなり、ヘッドランプは必要なくなってくる。このときはガスの中だった。
 

 火口の父釜と母釜の間を抜けて、東側の稜線へ抜けると、上空は晴れていたが、肝心の日の出側の方は雲が高い。この時点でご来光は諦めて、のんびり進む。稜線の花畑は、すでに草紅葉が始まり、すでに秋の色だった(4)
 5:10、3時間50分で、1度目の頂上に到着(5)頂上には、やはりご来光目当てで京極コースから登って来たという男性が2人。その方に1回目の頂上写真を撮ってもらった(6)
 ご来光もないし、寒いし、長居は無用である。ブログに1回目の到着の速報を入れて、10分ほどで、その2人と相前後して下山開始。

 このコースは、夏はもっとも少ない2回しか歩いていないので、あまり記憶がない。2時間掛からないで下山している記憶だけである。展望もほとんどないコースで、とにかく、今回歩いた4本のコースの中で、もっともぬかるみや泥んこが多かった。靴も泥まみれになり、1度滑って尻もちを付いてしまった。7〜8人が登って来たが、挨拶と一緒に「泥んこが凄いですよ」と告げた。
 登山口に着いたと思ったら、車が全然停まっていない。ずっと下の方に車が見えた。登山口は、以前より下に下がっていたような気がする。


 7:25、わすか2時間05分で、京極登山口に下山。振り返ると、山頂部は雲に覆われていた(7)普通の登山は、ここでゴールである。しかし、先は長い。馬鹿なことを考えたものだ、しかし、それほど疲れはない。
 当初はそこから2kmほど遠回りになるが、水と食糧を仕入れにローソンに寄るつもりだった。しかし、涼しい内の登下山だったので、汗もかかず、水を700ccほどしか飲んでいなかった、まだ800ccは残っていた。食糧も手つかずだった。そこで、少し先に下山していた2人に、ダメもとで、「余っている水はありませんか?もしあったら、500ccほど分けていただきたいのですが・・・」とお願いしたら、「ありますよ」と車の中に積んであった大きなプラボトルから手つかずの水をペットボトルに分けてくれた。「これで、2kmの距離が短縮できます。ありがとうございました」とお礼を言って、喜茂別登山口までの車道歩きをスタート。

○喜茂別登山口までの車道歩き

 ローソンまでの往復が省かれたので、地形図を見て、少しでも近道になる農道を繋いで歩き、交通量の多い京極と真狩を結ぶ道々へ出る。右手に羊蹄山を見ながらの歩きとなる。山頂には相変わらず雲がまとわりついている(8)


 やがて、喜茂別登山口への入口に到着(9)。そこから5分ほどで、9:25、1時間50分で、喜茂別登山口に到着。4コースでもっとも不人気な喜茂別コースらしく、車は2台しか停まっていなかった(9)自分は、コースが荒れてなくて、歩きやすいし、頂上へ直接出るので、4コースの中でもっとも好きなコースなのだが・・・。
 予定より、早く着いたので、ゆっくり腹ごしらえをして、2度目の登り返しに備える。

○喜茂別をコースを登り、比羅夫コースを下る

 4コースの中でもっとも急だが、道が荒れてないので大好きな喜茂別コースである。しかし、体は正直である。2度目の登りとなると、すぐに休みたくなる。普通の登山時は30分ごとに休むことを心掛けているが、そこまで続かない。2年前は3時間掛からないで登っているが、それは到底無理である。10分も経たないうちに、腰掛けやすいダケカンバの幹があると、すぐに一息いれてしまう。

 このコースには、昨年までは合目標識がなかった。そこで、HYML仲間の大魔人が、手製の合目標識を設置してくれた。登山口から頂上までの標高差を10等分して設置したという。20分ほど歩くと、「1合目」の標識があった。休み休みのペースでも20分歩くと、「2合目」が・・・。この20分を楽しみに登り続けた。大魔人に感謝・感謝である。


 喘ぎ喘登っていると、上から50代か60代くらいの女性が下りてくる。早い時刻だったので訊いたら、「2時間半で登って、下りて来た」という。凄いスーパーおばちゃんだ。来年にでも、単独で挑戦してみたいものだ。
 その大魔人手製の「5合目」標識に到着したときには、すでに2時間経過していた(10)しかし、標高差を10等分してあるので、急になると、距離は短くなる。その先は10〜15分ほどで1合ずつ登って行けた。
 8合目を越えると、頂稜が見えてくる。すでに、チシマザクラやナナカマドなどの紅葉が始まっていた(11)
 9合目近くなると、岩が出てきて、落差の大きな足運びが多くなる。ついに、恐れていたことが起きた。ハードな縦走登山などでたまに出てくる内腿の痙攣だ。落差の大きな登りで膝を深く曲げて腿に体重を掛けると、痙攣して激痛が走る。休むと痛みは引くので、その激痛と闘いながら、休み休み、だましだましゆっくりと登って行った。下りでも膝を深く曲げるとでる痛みなので、下山が心配になってきた。


 それでも、13:25、3時間35分で、誰もいない2度目の頂上に到着(12)予定より1時間半ほど余裕があるので、患部に持参したサロメチールを塗り込み、良く揉んだり伸ばしたりして、14:00までゆっくり休むことにした。
 14:00、2度目の下山開始。比羅夫コースの下山口を目指す。山頂はガスが忙しく移動し、展望が限られている。父釜もすでに紅葉が始まっている(13)
 幸い、ゆっくり休んだせいか下山では心配した痛みは出なかった。段差の大きなところはポールを利用して、腿に負担を掛けないように留意して下った。2度目の下りだが、登りと違って全然疲れの影響はない。どんどん快調に下った。


 5合目付近の樹間からは倶知安の町並みとニセコアンヌプリが見えた(14)。その後も快調に下り、 16:40、わずか2時間40分で、比羅夫登山口へ到着(15)。
 最悪18:00に到着すればよいと考えていたので、余裕の時間でもあり、3時間半ほどの車道を歩くのに影響があるほど疲れはない。迷うことなく、ラストウォークになる14.2kmのラストウォークとなる車道を歩き、「8の字縦走」を完成することにした。

○真狩登山口までの車道のラストウォーク

 17:00、比羅夫登山口をスタート。まず、交通量の多い国道5号へ出て南下。ニセコと留寿都を結ぶ道々への近道を通り、道々へ出て真狩登山口を目指す。


 近道の途中に、HYML仲間の様々な泊まりがけの宴会で何度もお世話になっている大魔人山荘(オレンジ色)があった(16)。そこから左手には、夕陽を浴びる羊蹄山が見えた。あの山を2回も登り下りしたことにうれしさがこみあげてくる(17)

ニセコと留寿都を結ぶ道々に出たところで、完全に暗くなり、ヘッドランプを点けて歩いた。休んだのは、ヘッドランプを取り出すときだけで、あとは急ぎ足で歩き続けた。最後の真狩登山口までの2kmの登りがきつかった。

 20:10、18時間50分で感激のゴール(18)。早く着いたお陰で、諦めていた21:00まで営業の真狩温泉にも入ることができた。温泉に入るだけで疲れが抜けて行くような気がする。

 これからコンビニで祝杯用のおでんやおかずを買って、そばの真狩道の駅へ。一番安い発泡酒も極上のプレミアビールよりはるかに美味かった。500cc2本買ったが、1本で十分だった。

 それにしても、行動時間約19時間。歩数計87,705歩、獲得標高差3420m、すべてにおいて、初体験づくし。ある意味、人生最大の冒険だった。時間が経つに連れて、「73歳にして、凄いことをやった」という喜びが強くなってきた。

 
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