羊蹄山(1900m) [一泊登山]  98、10、10〜11 [真狩コース]

念願の夜間登山と避難小屋での1泊、翌朝のご来光鑑賞を実現。
3合目付近の紅葉
登山 地 点下山
15:10
16:45
18:30
(泊)
5:00
5:30
登山口
5合目
避難小屋
  〃
避難小屋
頂  稜
9:20
8:05
7:00
(休)
6:30
6:00
[3:50]所要時間 [2:50]

札幌へ
天気予報がバッチリの秋晴れの2日連休、朝のうちに上ノ国町の七ツ岳に登り、車で4時間半掛けて移動し、真狩コースの登山口に到着。
 予てからの念願の避難小屋での1泊とご来光の鑑賞は、避難小屋が閉鎖する今年最後のチャンスである。そして、登り始めの時間からして、途中から夜間登山になる楽しみも合わせて、登山口を出発する。

 裾野の紅葉は今が最高潮であるが、今年は遅いし、あまり綺麗でないような気がする。次から次と満足感に満ちた顔で下山してくる人達と挨拶を交わしながら、ゆっくり歩を進める。 いつもは、他人より早い時間に登るよう心掛けているが、今回は、多分一番遅い時間の登山者であろう。5合目を過ぎ、下山してくる人も絶え、太陽が西の空を茜色に染め、釣瓶落としの日没ショウの準備に掛かっている。
日没寸前の太陽
 この辺りから、登りも急になり、4リットルの水とビ−ル500ml とウイスキーのハーフ瓶の重さが徐々に体に応えてくる。考えてみると、今年は、8月以降の2か月間以上も仕事と天候のバイオリズムが合わず、山らしい山に登ってないのにこの重さである。昨年日高の1839峰を目指して4.5 リットルの水とテントを背負ってコイカクシュサツナイ岳の夏尾根を登ったときの苦しさを思い出し、ちょっと心配になる。

 6合目を過ぎた辺りで、ゆっくり休みながら、日没ショウを鑑賞する。代わって、眼下の真狩やニセコの町並みの灯が浮かび上がり、頭上には星が瞬き始める。月明りを期待したが、月は出てこない。いよいよ、初めてのヘッドランプの明りを頼りの夜間登山となる。しかも、このコースで一番きつい6合目から8合目、そして一番危険な8合目から9合目が舞台である。 しかし、風もまったくなく、クマの心配もなく、コースもだいたい頭に入っているだけに、不安感よりも新しい体験へのワクワク感が上回っている。落差の大きい岩とダケカンバの幹を跨ぐ登行に荷物の重さが加わり、休憩のテンポが速くなる。その度ごとに、夜空を彩る星が増えて、北斗七星やオリオン座(これくらいしか分からないが)、天の川などが直ぐ頭上に輝く。下から漆黒の闇に浮かぶ町並みの灯も鮮やかになってくる。

 いよいよ、急な登りから開放される8合目辺りから、今度は崩壊地をトラバ−スする道である。昼ならともかく、ライトに照らし出される白いペンキとロープがなければ、まったく迷ってしまうようなコースである。転倒したらはるか奈落の底である。一歩一歩慎重に歩を進めるも、ゴールが近いのと、このあとそんなに急な登りはないはずという解放感がうれしい。

 ついに、9合目でうっすらと明りの漏れてくる避難小屋が見えてくる。沢か踏み跡か分からないような道を辿り避難小屋に到着。車座になって盛り上がっている人達に「こんな暗い中、一人で?」と言う言葉とともに温かく迎えられて中に入る。「星と街の明りがきれいでしたよ。」と答えて静かな2階に陣取る。2階でも同じように迎えられて、同じように答える。
夜明け前の尻別岳とホロホロ岳 
 まず、ビールで一人で乾杯。気温が低いので冷たいままである。うまい!一気の飲み干し、いざ、夕食をと思ったら、ガスコンロが見当たらない。ガーン!忘れた!ガスを使わなくても食べるものはあるが、辛い思いをして4リットルも運んできた水が恨めしい。近くの人に「厚かましいお願いですが・・・」とヘルプを求めると快く応じてくれる。お湯を沸かすだけにしてカップ麺を主食に夕食を済ませ、ウイスキーの水割りを飲みながら、しばし、近くの方々と山談義に興じる。

  その途中で、トイレに立とうとしたら、なんと内腿の筋肉が両方とも吊って歩けない。痛くて思わず座り込み、ストレッチをする。よく山で足が吊る話は聞くが、初めての経験である。思わず年を感じてしまう。

 8時半ごろ?には寝袋に入る。いつものことであるが寝たのか寝ないのか分からない状態で、真っ暗な4時ごろから周りが動き始める朝を迎える。 朝食は、ご来光を見て戻ってから非常食で間に合わせようと思い、ゆっくり寝袋に入ったままおとなしくしている。4時半起床、リュックのパッキングを済ませ、他の人達より遅れて小屋を出る。
ご来光
 まだヘッドランプが必要な暗さである。水が染み出ている部分は白く凍りついているし、10cmほどもある霜柱が立っている。それらを踏みながら、東の空が明るくなるのに急かされて、東側が良く見える南側の岩を伝う頂稜へ急ぐ。 一面、高い峰々だけを浮かべた白い朝靄のベ−ルが広がり、舞台は完璧状態である。赤く染める東の空の雲海の上ににシルエットを連ねる日高山脈。その南側からご来光ショウの始まりである。それぞれの岩場の上に陣取って、その瞬間を待つ人々の姿が浮かび上がる。絶対BGMが欲しい場面である。いよいよ赤い頭を見せたと思った瞬間、白い朝靄の上を眩しい光線が走り、目に突き刺さる。声を上げる人、じっと見詰め入る人、様々な人達に迎えられて完全に顔を出し終わるまでのほんのわずかな瞬間である。下界では何度も目にしているこの瞬間も、山頂で経験するのとはではまったく違う厳かさが漂う。
朝焼けの中に浮かぶ日高山脈
 ほっと一息着くと、隣の岩の上に陣取っていた若い外人さんが、流暢な日本語で「羊蹄の影が!」と仲間に大きな声で叫ぶ。うしろを振り返るとニセコ連峰の左側にスマートな二等辺台形の「影富士」を映し出している。その影を眺めながら小屋に戻る。太陽の高度に連れて、その形が徐々に短くなる。当たり前のことであるがそんな発見も新鮮である。

 小屋へ戻り、簡単な朝食を摂る。辛い思いをして運び上げ、コンロを忘れたがゆえに余った2リットルほどの「真狩湧水」を山に戻そうかと考えたが、雨水を溜めている小屋の水ガメに寄付して、小屋を後にする。 あとは、素晴らしい秋晴れに誘われて頂上を目指す物凄い数の人々と朝の挨拶を交わしながら、下山を続ける。

 このホームページの手製のチラシを、小屋でも、インターネットをやられている方や勤務先で見られるという方に5枚程差し上げたが、登山口の登山届けの箱の中に20枚程入れてくる。そのチラシを見て、アクセスしてくれた方、ぜひメールください。


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