羊蹄山大滑降(真狩・墓地の沢ルート)  00.4.30
  
最高の天候に恵まれ、スキー登山及び火口底へと標高差1500mもの大滑降を楽しむ。
自宅発        3:30
 
[スキー登山]
共同墓地前発  7:25
砂防ダム渡渉   8:00
950m地点休憩  9:20
1200m 地点   10:30
1400m 地点   11:15
頂稜着       12:35
 (休憩・昼食) 
所要時間    [5:10]
[滑降]
火口底       13:30
頂稜着      14:05
 (休憩)
頂稜発       14:25
共同墓地前着 15:20
所要時間    [0:55]
 真狩温泉   15:40
 解散      16:40
 帰宅      19:40

参考にしたHP
『北海道のクロカン事情』
「山スキールート・羊蹄山」
 
 羊蹄山頂稜からの標高差 1500mの大滑降・・・長いスキー人生であるが、インターネットでの山仲間との交流を始める前には考えてもみなかったことである。しかし、山スキーヤーの間では結構メジャーなことであることが分かり、新しく山スキーを用意した今シーズンの春山のメイン山行に計画していたことである。
夜明け前の噴火湾越しの羊蹄山
  初めは一人でもトライするつもりでいたが、「北海道の山メーリングリスト」に呼び掛けると、2月の三段山に同行した山スキーヤーのSaさん、KuさんとテレマーカーのKaさん、koさんの札幌の4名が応じてくれた。とくに心強いのは、この大滑降を何度か経験済みで、この冬3度目の山スキーの同行となる還暦を越えているのが絶対信じられない師と仰ぐ山スキースーパーおじさん・Saさんの存在である。
 
 北海道ほとんどに晴れマークが並ぶ天候に恵まれ、夜明け前に家を出、白々と明ける国道5号線を北上する。噴火湾には、夜明け前からの物凄い数のホタテ養殖関係の漁り火が浮かび、その向こうに目指す羊蹄山が見えている(1)。

 真狩で待ち合わせの札幌組と合流し、まだ雪のある共同墓地前で、これから登る陽光に輝くまだ真冬状態の大斜面を眺めながら(2)準備する。長谷川@栗山さんの山スキーガイドHP「北海道のクロカン事情」を参考に、まずは林道をSaさんから野鳥の鳴き声を教えてもらいながら歩くスキー状態で進んで行く。
春陽に輝く羊蹄山と滑降コース
 30分ほどして、林道が不明になる450m辺りで左側に沢が見え、赤いテープがぶら下がっている。そちらへ向かうと案の定砂防ダムがある。まだ雪で埋まっているその沢を越え、広い通称「墓地の沢」に出、しばらくそれを詰めて行くと二股にぶつかる。右側の沢を少し詰め、右側のガリーとの間の支尾根斜面に取り付く。この斜面がデルタ斜面下部へと続く地点である。ここで、安心し、最初の休憩をする。私は暑いのでTシャツになり、ズボンの裾もファスナーを開けて風が入るようにする。

 後は、頂稜まで続く斜面をひたすら登るだけである。だんだん木が少なくなり、おいしい大斜面が広がり(3)、傾斜の緩いうちはシールに任せて直登し、だんだん傾斜が増してくるにつれて、大きくジグを切って登るようになる。デルタ斜面下部から頂上をバックに
 
 歩き始めて2時間、950m付近の大斜面のダケカンバの根元で本格的な休憩を取る。ウグイスの声がどこからともなく聞こえ、無風で気温が15℃もある暑いくらいの陽光を浴びながらスキーを外してのんびりと15分ほど寛ぐ。眼下には噴火したばかりの有珠山の新しい噴煙も見え、その向こうにまだ雪を覆った横津連峰も見えている(4)。左側の真狩コースの夏道をスキーを背負って登っている一団も見えている。

 そこで、Koさんはテレマークスキーをリュックにくくり付けて歩いて登るという。あとの4名はそれぞれのペースで黙々とシールを利かせた直登やジグ登りを続ける。ジグを切って登るのはクロカンモードでそれほど辛くない登りであり、いつの間にか、みんなのトップを登っている。だんだん傾斜がきつくなり、デルタの上部に近付く1200m 付近で、下を見るとKoさんとKaさんがお休みモードになっている。間もなく、スキーをそこに置いたKoさんが登り出したので、Kaさんはそこで止めるものと判断してまた休み休み登りを続ける。
眼下に見える有珠山の噴煙と噴火湾越の横津連峰
 上を見上げると、おいしい斜面が広がり、頂稜の岩稜がモンスター状に覆いかぶさるように盛り上がり、それを目指して登っている数人が見え(5)、もう下ってくる人もいる。いよいよ夏道と合流するデルタ上部の1400m 地点の一番狭い地点辺りからは傾斜もきつくなり、40度近くはあるのではないかと思われる。これだけ急な斜面での踵の上がるスキーでのキックターンは初体験で、なぜか左側へのキックターンだけで3〜4回も転んでしまい、滑落を防ぐために必死となる。幸い雪解けが進んでいるので滑落は免れたが、すぐ下を登るSaさんに笑われながら起き上がるのに必死である。
1200m地点から見上げるおいしい斜面
 だんだん頂稜が真上に迫って来るに連れて、立ち止まって休む回数も多くなる。ツボ足のKoさんは同じ位のぺ−スで登ってくる。Kuさんは多少遅れながら下の方からスキーで登ってくる。この辺りになると、誰もスキーで登っている人もなく、Saさんに「スキーを担ぎませんか?」と聞くと、これまで何度も登っているが、スキーで登った方が疲れないとのことである。確かにツボ足で直登するより、足へのダメージは少ないようであり、滑る体力も残して置かねばと納得して登り続ける。

 最後の標高差100mほどのところは、岩が露出したりして下りも滑りを楽しむような所でもなく、つい弱気になり、「スキーをここにデポしませんか?」と言うと、「火口の中は滑らないのですか?」と来る。本当に信じられないスーパーおじさんである。「そうだった」と気を持ち直すが、ついにSaさんに先に譲ってしまい、私が後に着く情けない形になる。慣れているとはいえ凄い体力である。こちらがもたもたしているうちにSaさんが、続いてツボ足のKoさんが、2分遅れで私が頂稜に到着する。

 初めて目にする真冬状態の頂上の様子、とくに氷雪で覆われて凄味さえ感じる火口壁の東側の岩稜の様子(6)、南側に広がる展望・・・まだ、真っ白な峰を青空に突き上げる徳舜瞥岳とホロホロ岳、オロフレ岳、噴煙を上げる有珠山と洞爺湖、噴火湾の向こうの駒ケ岳、はるか彼方に大千軒岳、遊楽部岳、狩場山塊など道南の白い山々を眺めながら、標高差100mほど下を黙々と登ってくるKuさんを待ち休憩する。噴火口の中を覗くと、北側の火口壁に数本のシュプールが着き、底に一人の男性が休んでいる。暖かくて、夏山スタイルのままの休憩である。
頂稜にて
 Kuさんの到着を待って昼食にする。昼食を終えて、いよいよここまでは何度か来たことのあるSaさんでもまだトライしたことのないという火口壁滑りである。比較的斜度の緩い北側の火口壁を降りることにする。それをカメラに収めてから下山すると言うKoさんを残してそちらへ移動する。どうやら日当たりのせいで新雪がクラストしているようであるが、ターンできないほどではなさそうである。「お先にどうぞ」とトップを譲って下さるSaさんに先立ち、ジャンプして斜面に入り、大きなパラレルターンを刻み火口底を目指す。最高の気分である。あとの2人が後に続く。はるか上を見上げるとKoさんの姿だけが覗く以外 360度真っ白な火口壁と白い岩稜に囲まれ、上空は丸い青空という生まれて初めて味わう光景である。夏には上から見下ろした火口底に立っているのが信じられない不思議な気分である。

 腰に巻き付けてきたシールを張って登るが、クラストしているために斜度がきつくなってもジグを切ることができない。スキーを担いで歩き始めたら、なんと両腿の内側の筋肉が吊って来る。ちょっと休んだら直ってホッとする。滑った火口壁を登り終え(7)、昼食を取った地点で休憩し、苦労して登ってきた急斜面の大滑降に備える。
火口壁を登るスキーヤー
 いよいよ、下から見上げた長く急な斜面の大滑降の開始である。頂稜から気分良く飛び込んでいったら、予想していたより雪が腐っていて、しかも先に降りた人のトレースで斜面が荒れている。ほとんど上の急斜面はジャンプターンで滑り降りるしかできなく、登りで描いていたイメージにはほど遠いターンであるのがちょっと悔しい。元気なSaさんがトップを切って安定したジャンプターンでどんどん滑り降りる。遅れがちなKuさんとの間を繋ぎながら私が下る。登りで眺めたデルタ地形の急な長い大斜面がどんどん後ろへ消えて行く。下に行けば行くほど腐れ具合が凄く、滑っていても疲れてくる。休み休み下る。
 
 標高800m辺りになって、墓地の沢ルート方向への疎林地帯の上辺りからトレースが無くなり、斜度も少し緩み、ようやくイメージ通りのターンができるようになり、気分いい最後の長距離滑降を楽しみ、少しは欲求不満が収まる。そして、林の中に入って行く。あとは、雪面を覆う落枝や黒くなった雪の上を登りのトレースを探しながらの滑りである。

  最後の林道滑りをのんびり楽しみ、頂稜から55分で先に降りた二人の待つゴールに到着。雪の状態がもっとよかったら、もっと速く降りられ、気持ちのよいターンが刻めたであろうという贅沢な思いは残るが、これ程の長距離のしかも標高差1500m もの大滑降はこれまでの長いスキー人生で初めてである。滑り降りてきた頂稜までの急斜面を下から眺め、 「良く登って滑ってきたものだ。」と全員大満足の顔である。
 
 その後、全員で真狩温泉へ向かい、露天風呂の中から再び羊蹄山の全容と滑り降りたルートを眺めながら仲間と感動を語り合い充実感と満足感に酔う。これまで8度ほど登ったこの山に新たな思い出を共に刻むことができた仲間に感謝して帰路に就く。

 この大滑降は絶対癖になる・・・来年の目標は、夜明けと共に登り、雪が腐る前の誰もがトレースを刻んでない大斜面を滑り降りることである。しかし、これだけの天候に恵まれることはそう無いであろう。

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