[73] ウペペサンンケ山(1848m) [菅野温泉東コース] 96,6,8

苔むした残雪の沢コースを詰め、雪渓で道を見失い、薮漕ぎしながらも、大雪・十勝連峰の山々との感激の再対面
十勝三股付近からのウペペサンケ  
6/7 16:30自宅発(八雲)
    22:30日高町キャンプ場 
             (車中泊)
6/8  3:45  〃   発  
登山地点下山
 6:15
 8:10
 8:50
 9:30
10:00
登山口
主稜線
糠平富士
(休憩)
頂 上
12:50

11:10
10:40
10:10
[3:05]休憩を除く[2:10]
 13:20菅野温泉(入浴)     
 14:30  〃   発   
 16:30糠平温泉野営場(テント泊)

 連休を利用して、東大雪で残っているウペペサンケ、西クマネシリ、東ヌプカウシリの3山を計画する。(職場に登山届けを出したら、「外国の山に行くのですか?」と聞かれ、こちらが面喰う。全部カタカナの山ゆえ?)前日の夕方、帰宅後、用意しておいた装備を積み込んでただちに出発。とりあえず日高キャンプ場まで車を走らせ、夜を明かす。早朝、日勝峠を越え、ウペペサンケ山の3本ある登山コースの中で一番変化があっておもしろいと思われる鹿追町の菅野温泉東コース登山口を目指す
 
 心配していた天気であったが、日勝峠から一面の雲海に覆われている十勝平野の彼方に目指す山がくっきりと浮かんで見える。心弾み、霧雨状態の十勝平野を抜け、やがて上空の晴れた鹿追町を通り、菅野温泉までの未舗装の道を走る。途中「ウペペサンケ展望台」から、山ひだに残雪を詰めた長い稜線の独特の山容が望まれる。思ったより雪が少ないようだ。
苔むした小さな滝 
 菅野温泉から5kmほど林道を詰めると、「崖崩れのため通行不能」の看板のぶら下がった鎖で封鎖されている。ボンゴ車が1台駐車しているが、その杭の側を車が抜け、先に進んでいる跡が付いている。 「行けるところまで行ってみよう。」と思い、そこを通過する。やがて、止せばよかったと思うような崖崩れの瓦礫の上を、腹を擦ったり、石を退けたりしながら、登山口へ到着。本来はここまで車で入れたのであろう。駐車スペースが確保されている。
 
 バナナを3本口にして、登山コースになっている小さな沢に取り付く。出発して直ぐに、二人の乗った車が1台到着。ひんやりとした朝の空気や小鳥のさえずりに迎えられ、トドマツ林の中の水が伏流している苔むした岩の上を楽しみながら進む。やがて、水流が顔を出し、その上を残雪が覆い始める。残雪に残る足跡を見ると前を一人か二人が歩いているらしい。その足跡や踏み抜きを参考にコースを辿りながら高度を稼ぐ。途中、苔むした緑一色の崖を落ちる5mほどの小さな滝(2)にぶつかる。鑑賞に値する涼感あふれる光景に思わず小休止。喉を潤し、水を汲む。

  やがて上を見ると、一人の男性の姿が目に入る。挨拶し、追い越すも、雪渓に埋もれたコースを見失ってウロウロする度に追い付かれる。そのうちにいよいよコースが不明になり、二人で協力してルート探しをする。二人になって気持ちが強くなり、「とにかく、上に見える稜線に出ればいい。」のだからと、なるべく薮漕ぎを避け、稜線に繋がる雪渓を探しながら進む。この方とは、下山後、温泉に入浴して別れるまで、ずっと同行させていただくことになる。明日、仲間がこの山に登るが、明日は子供の運動会なので、先に一人でやって来たとのこと。帰りの入浴中に聞いたら、富良野市役所のSさんという方だそうで、大変気遣いの良く回る気持ちの良い好青年である。
 薮漕ぎから解放され主稜線に出る
 大きな雪渓を登り、狙った稜線に出たが、それは主稜線から派生した支稜線で、初めてコースを完全に間違えたことに気付く。そこから頂上に続く主稜線に出るには嫌でもハイマツ帯を漕がなければならない。覚悟を決めて、枝の入り組んだ空間に体を突っ込んで、枝を掻き分けながら、無理やり進む。10分もするとハイマツの丈が低くなり、踏んづけて歩けるようになり、まもなく主稜線の道に出る(3)。二人で健闘を称え会い、目指す頂上への道を眺めながら一息入れる。ようやく展望を楽しむ余裕も出る。
 
 やがて、一足先にガイドブックに「糠平富士」と記されている最初のピークに到着。しかし、標識を見てびっくり、「ウペペサンケ山1834m」と書かれ、そばに一等三角点が設置されている。本峰はもっと奥の稜線上の最高点の筈である。まだ1時間は覚悟していただけにあっけない感じである。しかし、展望が凄い。一番見たかった直ぐ隣りのすでに登っているニペソツ(4)、それに続く石狩岳、音更岳、ユニ石狩岳、その奥にまだほとんど雪に覆われた表大雪や北大雪、そして十勝連峰の山々、速くに日高山脈や夕張山系、阿寒の山々、近くには明日登る予定の西クマネシリ、然別湖の向こうに東ヌプカウシリなどの山々、限下の糠平湖などのこれ以上はないと思われる大展望が広がっている。 8時間も車を走らせてきた甲斐があるというもの。Sさんの到着を待つ間にそれらを写真に収める。
 糠平富士からのニペソツと大雪の山
 Sさんとそれらの大展望をだしに、いろいろな山の話を交流し合いながら、菓子パン、バナナ、トマトなどで腹拵えをして40分程休憩。まだ時間が早いし、ちょっと物足りなさもあって、二人でそこから稜線上に続くいつかのピークを越えた先にある本峰まで行ってみることに意見が一致する。リュックをそこに置いて空身で出発。
 
 狭い岩稜の上や、足元からはるか谷底まで切れ落ちている感じの源頭部の雪渓の上を怖々渡りながら、幾つかの小ピークを越え、30分後、最高点と思われるケルンの積まれた本峰(1848m)に到着。先程の頂上からは見えなかったオプタテシケが整った形で望まれ、十勝連峰の全貌が見える(5)。いつもこの十勝連峰は富良野方面から見ることが多いだけに、反対側の眺めも斬新である。二人とも持ってきたウイルソンで喉を潤し、写真を撮り合って10分程休憩して戻ることにする。途中、出発するときに着いたと思われる若い夫婦連れと出会う。やはり本峰まで行ってくると言う。
十勝連峰の全容 
 糠平富士頂上で再び休憩。無風の上ポカポカして気持ちが良い。まだまだゆっくりしたい気持ちを振り切って下山開始。下りは、登ってきたルートの方が、雪渓を滑り下りることができ、早そうであるが、本来のコースを下り、どこで間違ったかを確認したいこともあり、彼に付き合っていただく。本来のコースを下る途中、登りの自分たちで選んで登ったルートを眺め、彼が「結構いいルートを取っていますよ。」と満足気に言う。確かに苦労したことを忘れるほどの雪渓を繋いだいいルートである。お互い自己満足でき嬉しかった。どうやら、私が真っ直ぐに細長く一定の幅で伸びている雪渓を詰め過ぎて、途中から右側に続いている正規のルートを見落としたらしい。
 
 その後、気温が上がって雪解けが進んだためか、何度も踏み抜きを繰り返しながらも楽しく下山を続ける。5mの滝のところでゆっくり休み、登山口到着。
 
 Sさんを車に乗せ、彼の車のある通行止めまで送り、菅野温泉で彼の到着を待って、一緒に温泉に入る。彼は、昨年一度この山に登るためにやってきて、崖崩れの箇所が人も通れない状態だったので、引き返し、この温泉に入っただけで帰ったとのこと。彼に案内されて、大浴場から一度服を着なければ移動できない露天風呂も楽しむ。
 
 温泉の前で、名刺を渡し、崕山の資料の送付をお願いする。これまで山であった人の中で、一番好印象を受け、これを機会に山を中心としたお付き合いを願いたい思わずにはいられない誰からも好かれそうな人柄である。彼のお陰で、とても楽しい山行になったことを感謝して別れる。(このSさんとは、今もずっとお付き合いをいただいている。)                                   
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