横津岳(1167m)-烏帽子岳(1078m)-袴腰岳(1108m)

  [巴スカイラインコース] 1回目 97,11,13(文章のみ)、 2回目 98、9、27(写真のみ・妻同行)

             函館の町を見下ろしながら、開削後まもない、晩秋の巴スカイラインを往復する。
7:50 自宅発
登山地点下山
 8:35
 9:00
 9:35
 8:45
10:20
ゲート
縦走路分岐
烏帽子岳分岐
烏帽子岳
袴腰岳
12:05
11:35
11:00

10:35
[1:45]所要時間[1:30]
               
 天候と日程に恵まれなくて、40日も山から遠ざかり、周りの山々が何度も白くなるのを眺めては、苛々して過ごしたこの秋である。
 
 ようやくチャンスに恵まれ、函館山岳指導会「努の会」が昔の縦走路を今年一年掛けて再開削し、一週間前に開通式を行ったばかりの「巴スカイライン」と名付けられた道を往復し、昨秋、中野ダム奥のコースから登った袴腰岳までの道を反対側から繋いでみようと考えて家を出る。
 新しい縦走路と目指す烏帽子岳と袴腰岳
 平野部の上空は晴れているにもかかわらず、これから辿る稜線は、黒っぽい雲で覆われている。ガスの中の歩きはあっても、雨の心配はなさそうである。今日を逃すと、「これが、今年の登り約めになるであろう。」と思いながら歩くチャンスはもう無いかもしれない。
 
 横津岳スキー場上のゲート前に車を置いて出発。車もまだ無く、ひょっとしたら、誰にも逢わない晩秋にふさわしい静かな山行になるかも知れないと思いながら、横津岳山頂の航空レーダー基地までの緩やかな登りの舗装道路をのんびり歩き始める。周りは、すっかり葉の落ちたダケカンバの白い幹と真っ赤な実だけをたわわに付けたナナカマドとのコントラストが晩秋の雰囲気を演出している。
 コースから望む駒ケ岳
 若い頃は七飯の駅から苦しい七曲がりを通って何度も登った横津岳であるが、今は、航空レーダー基地となり、舗装道路が走り、登山対象の山でなくなったのが残念である。そんな思いを巡らせ、緩やかな大きな斜面に広がる薮の中に微かに残る昔の登山道の痕跡や朽ちた標識などを探しながら、昔の縦走路分岐の直ぐ上にできた新しい分岐まで来る。横津岳山頂はガスに隠れたままである。その分岐から縦走路方面にも舗装道路が引かれ、その先の稜線上に並ぶようにレーダー関係の施設が3つ建っている。その3つ目の施設の裏側が、新しい縦走路の入口となっていた。 開削されたばかりの道へ入って行く。道端には所々に雪が残っているのが晩秋の山らしくてうれしい。まず、昔、この山で遭難して亡くなった2人の営林署員の真新しい鎮魂碑に合掌。そこから姿を見せる駒ヶ岳(2)を初めとする噴火湾側は青空が広がっているが、これから向かう方向は、袴腰岳の頂上部分ぎりぎりまで黒っぽい雲が垂れこめている(1)。
 
 稜線という感じのしない横津岳特有のだだっ広い笹に覆われた大斜面の中に新しい縦走路が続いている。その先に見える烏帽子岳は、袴腰岳や市街地から眺める山容とはおよそ違う頂上感のない形である。緩やかな下り道のせいか寒さを感じ、フリースを上に着る。やがて、小さな湿原の側を通過する。さらに、微かな丘のような地点を越えると、3つの湿原が点在する地点に出る。その中の一つは、小さな沼を抱えている。この沼の側に朽ちた棒抗が2本立っている。この沼の名前でも書かれてあったのであろうか。これらの湿原は、今は、茶色一色であるが、夏なら、湿地性の花も咲いていて、このコースのチャームポイントとも言える場所なのであろう。
 
 そこからは、烏帽子岳に続く緩やかな登りとなる。道は、てっきり烏帽子の頂上を通過して袴腰へ繋がっていると思ったが、手前で分岐となり、烏帽子岳には寄るといった感じになっている。 その分岐から10分程で、真新しい標識が立てられた烏帽子缶頂上に到着。函館山までの市街地の眺めは袴腰岳からのとはとんど同じであるが、袴腰から見えなかった中野ダムが真下に見えるのが新鮮である。平らな頂上部分の真ん中に、何度かの霜や雪のせいで黒っぽくなったコケモモの小さな群生がある。コルを挟んで、山頂付近まで黒い雲に覆われた暗い感じの袴腰岳とその急斜面にジグを切って付けられた道がくっきりと見えている。その縦走路へ直接続くはずの旧い踏み跡を辿ってみるが、途中で薮が濃くなり、やむなく正規の新しい道へ戻り、袴腰を目指す(3)
 烏帽子岳からの袴腰岳への道
 市街地から眺めるとはっきりと見える袴腰岳とのコルを目指して、急な道を下る。コルにはダケカンバの林があり、振り返ると、横津側からは見えなかった小さな崩壊地形もある烏帽子岳の東斜面が見上げられる。その頂上から直接縦走路に繋がる踏み跡の痕跡も認められる。コルからは、袴腰の急斜面に取り付くことになるが、この烏帽子岳と袴腰岳の間の道がこのコース唯一の登山らしい急な道である。それでも標高差100m程度のものであろうか。ほんの小さな岩場らしき部分や再開削時に苦労したであろう木の幹や根っこを跨ぐ部分も、このコースではうれしい存在である。そんな小さな楽しみを味わいながら、2つの小さなピークを越え、昨秋の10月19日に中野ダム奥の反対側のコースから登って以来約1年振りの袴腰岳頂上に到着。やはり真新しい標識が誇らしげに立てられていた。ゲートから1時間45分の楽な行程である。
 
 大した疲れもなく、腹も空かず、直ぐ頭上まで黒い雲が覆っているせいか展望もはっきりせず、反対側のコースを目で辿っても誰も登ってくる気配もない。石に腰掛けてポカリスエットを飲み、お菓子を一つ口にし、背負ってきた水もガスもコーヒーもラーメンもリュックから出すことなく、15分程休んで戻ることにする。
 袴腰岳手前から歩いてきた横津岳方面を望む
 下り始めて、ふと烏帽子岳の方を見ると数人の姿が見える。コルの方からも人の声が聞こえる。最初に出会った4人グループは長万部登山会の男女で、その後、縦走路分岐まで次々と擦れ違うことになる。全部で、10グループ30人程になろうか。往路は、誰とも出会うことのない晩秋に似合う静かな雰囲気に酔い知れて歩いたが、復路は、挨拶や行程の様子や所要時間などの会話を交わしながらの楽しい出会いが続く。天候もそれはど良くないし、こんなにたくさんの登山者と出会うとは思わなかったが、何度も新聞に掲載され、先週開通したばかりという新鮮さが人を引き付けるのであろう。考えてみたら自分も同じ思いであったわけで、その中のひとりでだったのである。
 
 ただ、中に同年代の一人歩きの男性が、ラジオのポリュウムを精一杯に上げ、二つも鈴をぶら下げて、満足な挨拶も返さず、せかせかと通り過ぎて行ったのにはびっくりした。自分も一人歩きにこだわって道内のほとんどの山を歩いてきたが、一人歩きの特権は山の静かな息吹を五感で感じとることであり、出会う人とは、瞬間ながらも山の感動を交流できる楽しみを味わうことであろうにと思い、人それぞれに、いろいろな登山スタイルがあるが、初めて出会うタイプであった。
 
路傍に憩う雪渓(袴腰岳眺望)
[浅地氏画] 99.6.10

 利尻山の下山のときも実感したが、登山靴での下りの舗装道路歩きは、まともにその振動が腿まで伝わって、やはり不快である。道路の縁の草付きの部分を歩いて、車を置いてあるゲートを目指す。途中、横津岳頂上までの散歩程度の軽装で家族や犬を連れた人達とも多数出会う。スタートのときは、自分の車しかなかったゲート付近であったが、20台近くもあったのには再びびっくりする。
 
 今度は、花の咲いているであろう来年の夏の天候の良い日に、急斜面の苦手な妻にも喜んでもらえそうなこのコースを二人で再訪してみようと考え、ゲートを後にする。走り出してまもなく、車のフロントガラスに雨粒が落ちてきた。途中から見上げる袴腰岳は相変わらず黒い雲に直ぐ下に頭を見せていた。

※次の年の9月27日に妻を同行して、同じコース(4,頂上手前から横津岳方面をバックに))を再訪する。

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