春別岳(1492m)  (登り)東面の直登沢 (下り)東面の東尾根〜直登沢
 4人グループ 03,7.21

まったく人の入った痕跡のない小滝の連続する沢を遡行し、藪を漕いで頂上へ。北日高の山々の眺望を楽しみ、尾根の藪漕ぎで下る。

6:45 日高町千栄(日高ロッジ)
7:10 パンケヌーシ林道・二の沢北電ゲート
登り
地    点
7:27
7:50
10:13
10:50
11:18
12:00
二の沢北電ゲート(600m)
直登沢出会い(二つ目の橋)(690m)
水流消滅地点(1215m)
藪に突入(1310m)
稜 線(1440m)
頂 上(1492m)
[4:33]所要時間
下り
地   点
12:40
14:30
15:03
15:20
15:40
頂 上(1492m)
沢へ向かってトラバース(940m)
直登沢へ合流(760m)
直登沢出会い(二つ目の橋)(690m)
二の沢北電ゲート(600m)
[3:00]所要時間
[8:13]総所要時間(昼食も含む)

GPSトラックログをもとにしたルート図(95kb)
春別岳は、2万5千の地図上に正式な山名として記載されているのはこの山だけである。しかし、エサオマントッタベツ岳とカムイエクウチカウシ山を結ぶ縦走途中に踏まれる主稜線上の1855mピークの通称(シュンベツ川の源流部に由来?)の方が有名であり、HPで検索を入れても登山記録に出てくるのは後者ばかりである。検索でも山名一覧にしか出てこないところを見ると、ほとんど登られていない山であることが窺われる。また、似た名前の春別山は南日高のピリカヌプリから南に延びる尾根上に存在する。

 一度登ったことがあるという私の新ピーク踏破の応援団長を買って出てくれている『地図がガイドの山歩き』チームの札幌在住の西條さんと久野女史に誘われての山である。彼らの昔からの仲間である北見のnaga女史と4人で前日に日高町で待ち合わせ、千栄にある「日高ロッジ」で夜を明かす。

 チロロ岳やペンケヌーシ岳に登ったとき以来のパンケヌーシ林道を走り、二の沢沿いの北電管理の林道入り口ゲートが今回の登山口である(1)。そこに車を置いて準備をする。チロロ岳やペンケヌーシ岳を目指す車が不思議そうな顔をして、スピードを緩めて眺めていく。ヘルメットを忘れてきたことを前もって西條さんに知らせたら、札幌から作業用の黄色のヘルメットをわざわざ買ってきてくれて、大いに助かる。

 二の沢林道を20分ほど歩くと二つ目の橋があり、そこを渡った先の右側の涸れ沢出会いが頂上へ繋がる東面の直登沢である。しかし、本当に小さな涸れ沢で、こんな沢がたくさんの滝を連続して頂上の下まで突き上げているなどとは信じられない沢である。

 しかし、その謎はまもなく解ける。二の沢に合流する前に伏流しているらしく、だんだん高度を上げていくにつれて、顕著な深い沢地形になり、水量がどんどん増えて来るという不思議な沢である(2)。誰も人の歩いたような痕跡もまったく見られない沢である。標高800mを越えた辺りから結構な滝が連続して現れてくる。ほとんどはホールドがあり、高所恐怖症の自分でもなんとか直登することができ、緊張しながらも楽しい沢登りである(3,4,5)。しかし、登って振り返ると恐怖感が襲ってくる。とても下りは無理であるが、下山は尾根の藪漕ぎの予定なので安心である。

 そのうちにどうしても直登できない滝にぶつかる。そこは左側から大きく高巻くことにする。振り返ると急な谷地形の向こうに芽室岳西峰が見えている(7)。そこを越えるとそれほど大きな滝はなくなり、だんだん水量も少なくなり、やがて1215m附近で水流が消える。およそ2時間25分ほどで、標高差525mの沢登りが終わり、この辺りで、頂上直下へまっすぐ突き上げる沢地形とコルへ突き上げる沢地形の分岐があるが、頂上直下はかなりの急斜面なので、コルに近い方の沢地形を選ぶことにする。あとは沢地形が消え、藪斜面に突入する1310m附近まで涸れ沢登りである。

 いよいよ藪に突入である。背丈より高い藪を掻き分けたり潜ったりしながらコルの右側をねらう。3時間弱で稜線へ乗る。稜線へ乗ると最も近いチロロ岳を初めとする北日高の山々がぐるっと見える。稜線もハイマツなどが生い茂り、すっきりと歩くとができない(8)。目指す頂上は見えないが、頂上の隣の北峰から南西へ延びる細く切り立った赤い岩崖を巡らせる稜線がものすごい迫力を呈している。地図を見ても実際眺めても反対側からこの山に登るのは絶対無理な感じがするほど険悪な地形である。ハイマツを潜り頂上だと思って到着したら、その100mほど先にもっと高いピークが見えて愕然とする。そこで一息入れて最後の藪漕ぎをして、一等三角点が設置され、数人が座れるように切り開かれた頂上に到着する(9)。予定通りの12:00である。

 一等三角点の山らしく、360度の展望が見事である。一番近い東側にはチロロ西峰と本峰、その東側には芽室岳やペンケヌーシ岳、南側には1967峰〜幌尻岳までの主稜線の山々とカール群、さらにその南側には二岐岳やその奥に年末に登ったシキシャナイの尖峰も見えている。北側には夕張山系やまだ雪渓を抱いた十勝連峰や表大雪の山々までぐるっと見えている。北峰の1489mピークから東側に延びる切り立った細い岩の稜線は迫力満点である(次ページ)

 名残惜しいが、40分ほど休んで下山開始である。下山は登りで使った直登沢とほぼ並行した東尾根である。もちろん踏み跡などない藪漕ぎである。登りで頂上と間違ったポコまで戻り、そこから急な尾根斜面を周りの笹や木の枝に掴まりながらの下りである。急なところでは後ろ向きになって枝や笹に掴まりながら下る。1250m付近でその尾根は分かれているので登りの沢に近い方を選ぶ。

 850m付近まで下ると、急に尾根がなくなり、急崖のような上に出る。GPSで確かめても登りの沢からやや離れていることに気付く。その高さであれば、トラバースしながら登りに使った直登沢に下りても滝はかわせるであろうと考え、方向を南側に変えてトラバースしながら下る。その途中で林道跡のようなところに出て、それを辿ると登りの沢の760m地点へ出る。もうすでに滝のないところであり、まもなく伏流する地点である。そこから17分ほどで林道へ出る。あとは、林道を辿って、スタートしてから8時間強の充実した山行にピリオドを打つ。

 宿舎となる日高ロッジに戻り、ビールを飲み、沙流川温泉で汗を流し疲れを取りに行く。脱衣場に入った途端、名前を呼ばれてびっくりする。見ると函館近郊で同じ仕事をしているMuさんである。梅澤氏と一緒にチロロ岳へ行って来たとのことで、後ろを振り向くと梅澤氏が服を着ているところであった。昨秋の扇沼山で逢って以来の再会である。懐かしく挨拶をして西條さんを紹介する。


春別岳頂上からの眺望


「北海道山紀行」目次へ   HOMEへ
 

inserted by FC2 system