どこでもホテル・・・車中泊のススメ
2010,3,16更新

私にとって、山旅の一番の相棒は、何と言っても愛車である。
登山口へのアクセスはもちろんであるが、あちこちの山を登り歩くには、
経済的にも、行動時間の有効活用からも、車での移動と車中泊が最適である。
冬山もスキーマラソン大会の参加のときも、車中泊で対応している。
とくに、退職後は、「日本三百名山巡り」で、2週間以上、最大ひと月もの山旅をするようになって、その効果は大きい。

よく、質問をされることがあるので、これまでの経験から、その効用や工夫について、整理してみたい。



1,車での移動と車中泊の効用

○何と言っても、低コストが一番  
  ここ数年は、数週間からひと月もの山旅をすることが多く、車中泊も年間100日近くを数えている。公共の交通機関やホテルなどを利用していたら、経済的にとても持たない。ましてや、年金生活者である・・・金はないけど、時間と体力はある・・・道内はもちろん、道外へも足を伸ばしてあちこち登り歩くには、ひたすら車を駆っての車中泊しかない・・・。 

  職場の長だった現役のころ、「車で寝泊まりしている。」と話したら、山のことを知らない女性職員に「貧乏くさい!」と笑われたことがある。まあ、出張のときも、車中泊をして旅費を浮かせていたこともあるので、それだけを考えると、我ながらちょっと貧乏くさかったかもしれない。

  現役時代に「日本百名山完登」をした方が、ひたすら飛行機と公共交通機関とタクシー、さらには、ホテル利用だったので、一山当たりの単価が莫大高く付いたと話されていた。その点、完登が見えてきた私の「日本三百名山」は、一山当たりの単価がかなり安上がりのはずだ・・・。

○時間の有効活用
  何と言っても、山は、「早発ち・早下り」が原則である・・・遠い山の場合は、可能な限り前夜のうちに登山口かその近くへ着いていたい。その点でも、車での移動と車中泊が最も有効だ。さらに、買い物や温泉探し、観光なども、効果的で、自由気ままな移動が可能である。

○安上がりの道路やフェリー利用の工夫
 高速道路は、昨年からのETC休日割引が導入されたが、道内の場合は、時間のない時以外はあまり利用しない。高速走行の燃費の悪さと一般道路も空いているので、そんなにメリットがないからである。しかし、本州の場合はそうはいかない。道内の国道は50km/hの計算が立つが、本州は30〜35km/hがせいぜいで、燃費も悪い。ましてや、青森から一気に南下するときなどは高速利用なしでは考えられない。昨秋、ETCを忘れて青森から富山まで1000円で済むところを、涙を流して16,000円も払った・・・16回分!
 
 車の移動で、もっとも高いのが、本州へ渡るためのフェリー料金である。青森へ渡るのには、2010年現在で、津軽海峡フェリーの大間行きと青森行き、青函フェリーの青森行きがある。この中で最も安いのが、青函フェリーで、webクーポン券を利用すると、1割引で15,985円。妻が同乗すると、乗客料金も1割引で1,490円である。ちなみに、大間行きは16,000円と2,200円、青森行きは20,000円と2,700円となる。おまけに嫌でも往復しなくてはならないので、最低でも10日以上の日程が取れないときには計画を組まないようにしている。
 あと、小樽か苫小牧まで北上しなければならないが、新日本海フェリー新潟や舞鶴や敦賀までの直行便が不思議なくらい安い。これは、快適な船旅が楽しめ、運賃が時期によって3段階に変わるが、一番安いときで、新潟便20,000円、舞鶴・敦賀便で29,500円・・・これまで何度も利用してきた。
 青森へ渡るか、小樽や苫小牧から乗るかは、そのときの行き先、日程、運賃、ガソリン代や高速料金、時間、単独か妻同行か等を比較計算して、使い分けている。
   
2,車の選び方

<私の場合、車の選択に当たっての条件は、次の5点である>
 A 車庫に収まること 
 B 車中泊に便利なこと
 C 山道・林道の走行性が良いこと(最低地上高と4WDなど)
 D 経済的であること(燃費など)
 E 日常の利用にも適していること
左記のBとCの条件を満たすには、大きめのワゴンタイプが最適な場合が多い。また、Bだけを優先にすれば、高価な小型のキャンピングカーなども考えられる。しかし、我が家の車庫は、2間幅で広さは十分だが、シャッターの高さが170cmしかない・・・。屋外駐車できるスペースはないし、鉄筋コンクリートなので、改造は不可能である。そこで、当然、車庫に収まる車の中からの選択となっている。そのことが、DとEの条件を満たすことにも繋がっている。
 
  山を始めた頃の車は、燃費重視でディーゼルのセダンであった。そのころは、せいぜい1〜2泊程度だったので、助手席の足元に荷物を置いて、シートを倒しての車中泊だったり、登山口へテントを張ったりということが多かった。しかし、登山口のテントは、朝露に濡れたのを畳むのが面倒だったり、夜間の天候の悪化や滅多にないがクマの恐怖などで、多少寝心地が悪くても車中泊の方が安心だった。しかし、その車は、山道や林道を走っては、腹を擦って、たびたび修理に出すことも多かった。

 その点、昨年まで10年間で27万km以上も走ったホンダのCR-Vは、車庫に収まり、最低地上高も高く、オート切り替えの4WDで林道走行にも適していた。そして、一番の決め手は、助手席も運転席も後部シートを後に倒すと繋がって、多少斜めではあるが、シートがフルフラットになって、快適に寝ることができた。

 そして、今のニッサンのX-TRAIL(画像1)を選んだのも、アウトドア仕様優先の車で、前駆と4WDを選択できて、最低地上高も高く、車庫にも収まる。一番の決め手は、後部座席を前に倒すと、長さ174cmのフルフラットのスペースができ、さらに、その後部座席が簡単に取り外せて、180cmに広がることであった。しかも、胡座をかいて座っても、頭が天井にぶつからないことも助かる(画像2)ただし、前の車と違って、寝るのはシートの上でなく、堅い平面なので、快適に寝るためのベッドメークの工夫が必要となったが、簡単な炊事やくつろぎ等の生活空間は前の車より広く便利になった。また、燃費も前の車より良くなって、大満足である。

3,車中泊の場所

 車中泊で熟睡するには「安心して眠れる」ことが第一である。あと、最低でもトイレと水道があれば言うことなし・・・・。

○道の駅
 自分の山旅で圧倒的に多く利用するのが、「道の駅」である。特に快適なトイレ等の設備が整っていて、明るく十分な安心感もある。とくに虫の入っているトイレが嫌いな妻が同行のときは、最適な場所である。
 町に近いことが多く何かと便利で、温泉が併設されているところも結構ある。すぐ近くにコンビニやスーパーやコインランドリーなどがあったら、もう最高である・・・たまにこのような条件の揃った道の駅もある。また、日中は、食堂や売店や展示スペースなどが充実していて、早く着いたときや雨の停滞日などを過ごすときも非常に便利である。カーナビのTVの電波が届き、携帯も通じることが多い。
 ただし、夏のハイシーズンには多くの旅行者が利用して混雑することと、長距離トラックの出入りも多いので、駐車するときは大型車のアイドリングから離れるようにすることが大切である。一度だけだが、オフシーズンに、警察に夜中に起こされて免許の提出まで求められて、職務尋問を受けたことがある。熟睡している真夜中で、非常に腹立たしかった・・・。

○登山口
 翌朝の行動にはもっとも便利である。単独行のとき(妻同行以外)で、近くに適当な場所がなく、翌朝の移動に時間が掛かりそうなときは登山口に泊まることが多い。有名な山の登山口は設備も整っていることは多い。それ以外の山では、トイレがなかったり、あっても汚かったりということが多く、周りも暗かったり、平日は寂しいことが難点である。また、携帯が通じないことも多い。
 本州の夏の場合は、平地では暑くて眠られないことがある。そのようなときは、登山口まで走り、そこで泊まることが多い。概ね、登山口は標高の高い山中なので、涼しく眠れることが多い

○トイレ付きの公園駐車場や公共駐車場
 カーナビで探すのはなかなか大変だが、夜間も開放しているところが多く、車中泊の利用者も多い。コンビニやガソリンスタンドで聞くと教えてもらえることが多い。しかし、若者がたむろしたり、スケボーの遊び場だったり、暴走族のたまり場になったりすることもあるので要注意である。それらが気になって、夜中になってから移動したことも何度かある。
 公共の駐車場は観光地に多いが、夜間の閉鎖や有料の場合も多い。また、夜になると暗くなるところもあるので、誰も泊まっていないときなどは要注意。一度、パトロールの警察に職務尋問を受けたことがある。

○高速道路のPAやSA
 道の駅と同様、車中泊環境には最適である。高速道路走行中の利用は多いが、一般道路走行中でも、適当な場所がないときに、一区間だけ乗って利用することもある。 

○JRや鉄道の駅前駐車場
 都会の駅は不適だが、地方の駅やローカル線の駅は利用しやすい。

○24時間営業スーパーの駐車場
 「道の駅」は都会やその近くにないことが多い。そのときに、たまに、利用するのが、24時間営業スーパーの駐車場である。トイレと買い物に便利である。
 ただし、夜間になると、閉鎖されるスペースもあるので、注意が必要。一度、夜間に閉鎖されて、開店の10時まで出られなかったこともある。また、冬場は、除雪車に起こされることもある。

○その他
・広い駐車場をもったコンビニ〜お願いすると、利用させてくれるところもある。これまで何度か利用している。
・有料駐車場〜都心部での車中泊はこれしかない。20:00以降は、夜間は1時間100円になるところが多く、札幌などでは、24時間まで最大1200円で済むところもある。立体駐車場にはトイレ付きのところもある。トイレがない場合は、近くのコンビニを利用している。山旅よりは、旅先での飲み会や会議出張のときに多く利用している。
・キャンプ場の駐車場〜シーズン中は、夜遅くまで賑やかなことが多く、オフシーズンは寂しいところが多いので、あまり利用することはない。
田んぼや畑の脇、空き地、除雪終点、温泉の駐車場〜これまで、何度か利用したことがある。

4,快適な車中泊の工夫

 不思議なもので、慣れてくるとあの狭い空間が心地よく、家にいるときよりもよく眠れるくらいである。そのためのいくつかの工夫を述べてみたい。

○目隠しと遮光・断熱
 快適な空間を確保し、熟睡するためには、窓の目隠しが不可欠である。前の車は、厚手の生地でカーテンを作り、マジックテープで止めていたが、現在の車は、キャンプ用の断熱銀マット(厚さ8mm)を窓の形に合わせて切り取り、真ん中に100円ショップで買った吸盤を取り付けてガラスに吸い付くようにしている。窓より2〜3mmほど大きく切り取ると、窓枠にきちんと填って外れづらいし、断熱効果や遮光効果や外からの防音効果もあって、とても気に入っている(画像3)

○快適な寝具の工夫
 前の車は、シートの上に寝ることができたので、上から寝袋を被るだけで良かったが、現在は、下に大きなキャンプ用の断熱銀マットを敷き、その上にエアマット、さらには幅70cm×長さ175cmのソファー用の長座布団を重ねているので、非常に快適なベッド仕様となっている(画像4)上は、夏用、3シーズン用、冬用(−17℃対応)の3種類の寝袋を季節に合わせて、掛けたり、中に入ったりしている。
 真夏は、タオルケットで済ませることもある。真冬は、室内で結露した水分が凍るので、寝袋に寝袋カバーを重ねている。それでも寒いときは、衣類を重ね着している。中に重ねることができる小さな毛布があればなお結構。
 
 なお、妻が同行のときは、エアマットも長座布団ももうひと組あるので、それを使い、プラボックスを重ねて足元の端に置き、他の荷物を助手席に置くことでで、二人ゆったりと寝ることもできる。

○安上がりで簡単な食事の工夫
 旅の楽しみの一つに、その土地ならではの郷土料理を食べることがある。しかし、外食ばかりしていたら、とても経済的に持たない。だからといって、狭い空間で本格的な炊事というのも面倒だ。そこで、私の長い山旅のときの基本パターンは次のようにしている。

 朝食と昼食〜登山用炊飯鍋(ライスクッカー)で、ご飯を2食分炊く。米は研がずに済む無洗米。朝食は、レトルトカレー、缶詰とインスタント味噌汁、お茶漬けなどである。残りのご飯で昼食のおにぎりを作る。おにぎりの素を混ぜてサランラップで握り、塩海苔で巻いてできあがり。なお、食器やライスクッカーやコッフェルはお湯を入れてティッシュで擦って拭くだけで洗うのはときどき。
 ※平成27年から「朝食抜き健康法」を実施しているので、朝はコーヒーだけや、果物、ヨーグルトだけなどが多く、朝食の煩わしさから解放され、すぐに行動できるようになった。山などでも、山頂まで何も食べないで登っても、特に体力的には支障がない。昼はコンビニのおにぎりやパンで済ませるか、前日の夕食でご飯を炊いた時は、翌日のおにぎりも作る。

 夕食〜疲れていることも多いので、外食かコンビニ弁当やスーパーの総菜や弁当を利用することが多い。このとき、留意するのは、野菜を多く摂ることと栄養が偏らないような料理や弁当や総菜を食べるように心掛けている。スーパーは遅くなると、弁当や総菜の安売りをしていることが多いので、非常に助かる。ビールも飲みたいので、外食の場合は、食後に運転しないで済む場所が望ましい。しかし、外食と生ビールの組み合わせは高上がりになるので、たまの贅沢のときのみである。普段は、弁当や総菜と安上がりの第3のビールの組み合わせが多い。寒い時期になると、スーパーで売られるようになる鍋セットなどは野菜も多く大歓迎である。 

○車中泊グッズ
 特別なものは用意せず、ほとんど山の道具で間に合わせている。簡単な炊事用具は、山用のガスコンロと卓上カセットコンロの併用。鍋類は、ライスクッカーとコッフェルとフライパン(画像5)。 インバーターと電源タップ (DC12V→AC100Vで、携帯電話、カメラ、GPS、PC等の充電に利用)。大きなプラスチックボックス(衣類用と炊事・生活用品用)と食料専用ボックス(クーラーのときもあり)。1gと2gの水用のポリタンク。温泉・洗顔セット。ハンガーや洗濯バサミなどなど・・・・。

○ルームランプのLED化
 真ん中のルームランプと運転席の上のランプをLEDに変えたら、凄く明るくなり、本も読めるようになり、食事の時も気持ちよくなった。これで、バッテリーにも優しいとなればうれしい限り。

○コインランドリーの利用
 山旅は、汗を掻くので、毎日温泉や銭湯を利用し、着替えをマメにして清潔で快適な生活に心掛けている。洗濯物が溜まったときには、コインランドリーをよく利用する。

○夏季と冬季の工夫
  アイドリングの禁止と燃費を抑えるために、エアコンやヒーターの利用はなるべく控えるようにしている。

 夏季〜北海道の場合は心配ないが、本州の場合は暑くて眠れないときがある。そのようなときは、標高が高く涼しい登山口へ移動することが多い。しかし、どうしてもダメなときは、眠る前までエアコンで室内の温度を下げておいて裸で寝ることもある。窓を包むタイプの網でできた袋状のものを使うこともある。
 冬季〜走行して泊まる場所へ到着しても、室温が高いままなので、すぐに寝る態勢に入ると、夜中や朝方に寒くて目が覚めることが多い。その較差を味わいたくないときは、着いたらすぐにエンジンを止めて、室内が冷えてから寝るようにしている。あとは、着るもので調節したり、朝方にエンジンを掛けてヒーターを効かすしか方法はない。頭が寒いときは、寝袋にスッポリ入ったり、毛糸の帽子を被ったりしている。

 このような簡便車中泊生活をひと月ほど続けても、まだ一度も体調を崩したこともない。今後とも、大いに自由気ままな車中泊旅を謳歌するつもりである。

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