○知床沼〜1132ピーク(迷って約1時間)1132ピークへのハイマツ潜りの踏み跡
 知床沼を3分の2周ほど巻いて、湿原から1132ピークへの広い斜面に取り付くが、湿原からの取り付きの踏み跡が不明瞭である。迷って20分ほどロスする。1132ピークの斜面は主に背の高いハイマツやダケカンバ潜りが続く(1)。途中でOさんがデジカメを落としたことに気づく。帰りに探す目安に気づいたところの枝にテープを巻いて置く。途中の水場で飲み水を汲んで、登り続ける。
ようやく姿を見せた知床岳
○1132ピーク〜1243ピーク(2度迷って2時間)
 1132ピークに登ると、オホーツク海側も見えてくる。そちらはガスが懸かっていなくて、青いオホーツク海が広がっている。しばらくは、左側が足下からすっぱり切れ落ちるウナキベツ川の源頭の稜線を進む。一つ目のコルを越えたところで、途中で踏み跡が2つに分かれている。稜線から離れる方の踏み跡を選んで進むが、この後、踏み跡を見失いハイマツ帯の中を20分以上右往左往する。迷いテープと迷い踏み跡と思われるものがあちこちにある。「迷ったら元に戻れ」を実践、弱気になっている私を尻目に、Oさんがルート探索に精を出す。そもそも、ルート図ではこの先に見える1243ピークを通ることになっているのだが、それを頂上と勘違いし続けていたことも現在地を見失う遠因であった。

 ようやく稜線沿いの踏み跡を見つけて、「また、迷うかも知れない。3時まで頑張って目途がつかなかったら、戻ろう」ということで、再び元気を出して藪漕ぎを続ける。やがて踏み跡は稜線から離れ、1243ピークの方へ向かう。湿原のお花畑を2カ所通過する。この辺りで、1243ピークが頂上でないことにようやく気づく。まだ頂上はその陰で見えない。この湿原から藪へ入る踏み跡やテープが何ヶ所かあり、入っては戻ってと迷いを繰り返す。帰りも心配なので、自分達のテープも付けて進む。ここでも合計20分ほどロスする。
硫黄岳、知円別岳方面
 いよいよになったら、この湿原でビバークすることにして、がんばり続ける。藪も浅くなってきて、迷走の末、遂に1243ピークに立つと、ようやく、逆光の中に右側が垂直状態に切れ落ちる崖を抱いた聳える知床岳との感激の初対面である(2)。また、左前方には知床硫黄山、知円別岳、東岳の山塊が見えてきて(3)、感嘆の声をあげる。
足下まで切れ上がるホトヒラベツ川
○1243ピークから頂上(35分)
 もう迷う心配はない。1時間は掛からないであろう。なんとか暗くならない内に知床沼へ戻れる目途が立つ。源頭部が足下から崩れ、広く長いホトヒラベツ川の涸れ沢がオホーツク海まで続いている(4)。その崖稜線の上を木の枝に掴まったりハイマツを漕いだりしながら、15:10、一等三角点の標石と杭が待つ頂上へ飛び出す。早朝、歩き出してから10時間30分の末である。自動シャッターで二人の記念写真を撮り(5)、休憩する。
 
 知床岬までの山々(6)や周りの山々見渡しても、林道がひとつも見えないのが不思議な眺めである。これまで、登って来た山では絶対あり得ない眺めで、最果ての秘境の山を再認識する。知床硫黄山に登った時は、ここが自分には最東の山であろうと思っていたのが、嘘のような感じで思い出される。
知床岳頂上の二人
○頂上から知床沼まで下山(2時間40分)
 もっともっとゆっくりしていたかったが、知床沼までの戻りがある。暗くならない内に辿り着かなくてはならない。やり遂げた満足感や充実感に酔いながらも、まだ帰路での迷いの不安もある。案の定、登りでは印象のない湿原に出る。しばらくウロウロするが、ここでも「迷ったら元に戻れ」を教訓に少し戻ると登りで印象のある踏み跡が見つかる。
知床岬を俯瞰する
 その後は順調に下山を続け、登りで3時間40分要した道のりを2時間40分で知床沼へ到着する。途中で古い使い捨てカメラを拾い、Oさんの落としたデジカメも見つかる。1243ピークや1132ピークからは、知床沼と我々のテントがはっきりと見え(7)、その先に知床岬に向かって踏み跡が見える。知床沼から知床岬まで縦走した記録もあるので、結構な人が歩いているのであろう。
 
○快適なテントサイトでの一夜
 沼に到着し、楽しみに沼の岸に冷やして置いた缶ビールと水筒が見当たらない。抑えて置いた石は沼の中に落ちている。熊の仕業か? それにしてもウナキベツの川口以降、全然その痕跡すら見当たらない。変だなと思い、沼の縁をちょっと歩いて見ると、20mほど離れたところに浮いていて、ホッとする。

 夕食を食べ、夕闇の中でくつろいでいると、南の方からガスが上がってくる。寒くなりそうなので、早々とそれぞれのテントに潜り込む。うつらうつらしていると雨の音で真夜中に目が覚める。「今日中に無理して登ってよかった」と安心して夜明けを待つ。
1132斜面の途中から知床沼を見下ろす
○知床沼から相泊まで下山(5時間10分)
 朝になったら、雨も上がり、上空は晴れ間も覗いている。鏡のような沼に、1132ピークと1243ピークが写っている(8)。濡れたテントを畳み、朝食を摂り下山を開始する。濡れたハイマツや木々の枝から水が滴り落ちるので、上は雨具を付けての歩きである。ポロモイ台地から崖尾根に下りる地点では靴を脱ぎ、中に溜まった水を抜き、靴下を絞って履き直す。

 崖尾根を下つ途中の700m付近で昨日と同じようにガスの中に入る。沢に近くなった辺りで登りでは気が付かなかった沢方向への踏み跡が何度か出現して、3度ほど尾根ルートの踏み跡を見失いウロウロする。ここでも、「迷ったら元に戻れ」はすっかり身について、二人でルート探しをしながらなんなく突破する。
早朝の知床沼に姿を映す1132ピークと1243ピーク
 ウナキベツ川口に出て、ホッとし、観音崎の岩越えの手前で、天然昆布漁の様子を眺めながらゆっくり休憩。気が付いたら、そばに石の観音像3体ほどと、その岩のピークにどのようにして設置したのか思うような金色の観音様が安置されている。

 充実感と満足感に身を任せ、のんびりと海岸の岩の上を伝い歩き、番屋の前を通り、10時過ぎにゴールイン。羅臼の知床観光ホテルのだだっ広い温泉で汗を流し、街で昼食のラーメンを食べる。私のレンタカーを借りる中標津空港までOさんに送ってもらい、そこで別れる。

 その後、明日の1日3山の計画の内の武佐岳と標津岳の登山口を確認し、宿泊予定の養老牛温泉のホテル大一に向かう。


★お薦め日程
  このコースに挑戦する方は、知床沼に2泊ののんびり計画がお薦めです。我々体力だけが取り柄のコンビは、『北海道の山と谷』の「ウナキベツ川口〜3時間〜ポロモイ台地〜3時間〜頂上」を鵜呑みにして、1泊2日の計画で行きましたが、かなりきつい時間設定です。知床沼から頂上までは絶対迷いますので、 その時間を計算しておく必要があります。おかげで、1日目の行動時間は13時間30分ほどになりました。これははっきり言って異常です。真似しないでください。
  正直言って、情報を提供してくれたYoさんの記録もインターネットで調べた記録も2泊3日以上の記録ばかりでした。相泊から知床沼まで8時間ほど、次の日に頂上までのピストンに8時間以上、もう一泊して、のんびり下山・・・・これがベストでしょう。
 

もどる



「北海道山紀行・目次」へ      HOMEへ  

inserted by FC2 system