2巡目の43日間にわたる四国遍路を振り返る
〜88ヶ所+別格20ヶ所・逆打ち〜



bufore 2日目の87番長尾寺にて(3/12)

after 43日目の1番から再び戻った88番大窪寺にて(4/22)


退職した14年前の88ヶ所の順打ちを終えたときには、近いうちにもう一度・・・と思ったまま14年の年月が経っていた。
その間、日本三百名山踏破のほか、熊野古道、大峯奥駈道、中山道、東海道などの歩き旅はしてきた。
しかし、四国遍路は最もまとまった日数が必要である。

 昨年ようやくいろいろな役職から解き放たれたことを機会に、今回の計画を考えた。
前回は秋だったので、「今度は春に、しかも別格20ヶ所も含めた108ヶ所の逆打ち」に挑戦することにした。

今回も、1200年以上も昔から脈々と受け継がれて来た、
お遍路文化にどっぷり浸かった43日間の贅沢且つ快適な旅だった。

前回とは違って、別格も加えた108ヶ所を逆打ちしたが、
前回同様、霊場巡りは手段として、目的は、点と点を繋ぐ線をできるだけ太く豊かにするような歩き旅である。
一期一会の出会い、北海道では触れることのできない歴史、文化、植物、風景などとの出合いを楽しむことだった。

これまでの人生も他人に支えられ生かされて来たことは実感しているが、
前回よりも、自分の人生訓としてきた「挑戦と感謝」の大切さを実感できた感じがする。

旅だけでなく、連日800人〜1000人ほどの人が、毎日のようにブログを読んでくださり、コメントもいただき、大きな励みとなった。
旅でいただいた「心」のほかにも、このような応援団の「心」も受け止めて、
今後とも、「人生即遍路」の意味をじっくり噛みしめながら生きていきたいものである。

<前もっての準備とその結果>
 準備で、今回留意したことは、逆打ちへの対応である。一番の武器は、前回同様『四国遍路一人歩き同行二人<地図編>』(へんろみち保存協力会編)である。(今回は、こちらで購入する前に法起坊見習いさんが送ってくれた)

 そのほかに、現在地が分かる登山でいつも持ってるいているGPSも持参した。これは歩行距離の測定にも役だった。

 しかし、結果的に助けられたのは、たまたま出発の1週間前にネット上で見つけた「おへんろ電子道標」である。これをスマホの地図アプリ「MAPS ME」にダウンロードしたものを持参した。これは、お遍路道が紫色で表示され、常に自分の現在地が分かるので非常に助けられた。

 靴のレインカバーは、雨の日がわずか連続した4日間だけだったが、それなりの効果はあった。ただし、4日目の雨は靴を買い替えた(法起坊見習いさんのお接待)ばかりで、まだゴアテックスが利いているので使わなくてもよかった。

 荷物の重さはリュックと山谷袋を合わせて6kgに抑えた。衣類は、パンツは4枚、ほかは2組と長そでシャツ、長ズボン、インナーダウンで。汗をかかないときは、パンツ以外は2日続けて着たりして、洗濯は2〜4日に1回で間に合った。


<歩き遍路と外国人の増加について>
 車遍路、団体バス遍路、自転車遍路・・・今回もいろいろな多くのお遍路さんに出会った。しかし、数は少ないが、遍路本来の姿である「歩き遍路」は、もっとも贅沢な旅のスタイルである。ある程度の体力、時間的余裕、経済的余裕が必要なことはもちろんだが、なんと言っても、@歩き遍路でなければ通れない1200年以上も続いてきた昔の街道や山越えの峠道、昔からの参道などの遍路道で、いにしえの時代にタイムスリップできる楽しみ。生活道路でも、昔の街道筋の狭い道路が多く、その古い家並みや町並みをじっくり楽しむことができる。 Aじっくり、ゆっくりその土地ならではの風土、歴史、文化に触れることができること。B地元の人や歩き遍路同士のふれあいの機会やお接待の機会が圧倒的に多いこと・・・が、そのメリットである。特に、独特の文化であるお接待は、歩き遍路に対してのみの文化と言っても過言ではない。

 14年前には歩き遍路は増えていると聞いた。しかし、今は減りつつあるという。それに代わって。外国人の増加には驚いた。14年前との一番の違いはそのことである。だいたい毎日出会うお遍路さんのうち、1/4強は欧米系の外国人である。いずれは、高野山や熊野古道のように、日本人より外国人の方が多くなるといった現象が生まれそうだ。

 歩き遍路は、一人歩きが圧倒的に多い。多くても3人までだが、珍しい。ただ、観光会社企画の歩き遍路ツアーが前回より増えていた。

<逆打ちの難しさについて>
 「逆打ちは難しい、苦労する」 と聞いていたが、道路の分岐などの標示や案内が、順打ち用に付けられているので、標識の必要のない順打ちの出口がこちらの入口になる。その入口を見落とすことが多かった。標識を当てにしないで、地図を頼りに歩くように努めた。なんといっても一番役に立ったのは、「電子遍路」だった。常にこれを見ながら歩けば良いのだが、スマホの電池がすぐに減ってしまうので、確認するときにしか使わなかった。それでも、遍路道から外れているときは非常に役立った。ただし、別格の遍路道は載っていない。
 
 それでも、道端に昔から建てられている遍路標石や丁石、電柱などの貼られている遍路マーク、分岐に建つ標識、「四国のみち」標識、山中の「遍路道」などと書かれたプレートなどは、心強い道案内であった。また、地元の人が黙っていても詳しく先の道を教えてくれたり、ちょっとでも外れたところを歩いていると声を掛けてくださることが多かった。

 逆打ちと順打ちの一番の違いは、「孤高お遍路」ということである。前回は、歩くペースが同じような人で気の合う人とは何日も一緒に歩いたり、話しながら歩くということが多かったが、逆打ちの場合はそのようなことはまずない。ただし、前から来る順打ちの人との挨拶が楽しみだった。面白いのが、奥の院の前を通ってから本堂へ行くとか、裏口から入って仁王門から抜けるといったことも多かった。

<参拝と納経について>
 本来の目的である88ヶ所の霊場のお寺の本堂との参拝が祈りのときである。このときは厳かな気持ちで臨んできたつもりである。しかし、自分の場合は、そこがメインでないので、特に今回は、般若心経の読経は本堂のみで行い、大師堂では省略した。さらに、今回は88ヶ所の納経帳は持参せず、納経所に寄るのは別格だけにした。そのことで、時間と納経料(300円)の節約に繋がった。特に前回は、納経所でバス遍路にぶつかると、30分以上も待たされることがあった。

<歩きのペースについて>
 これまでの登山やジョギングなどの経験から脚力には自信はあった。ここ数年中山道と東海道の歩き旅で、1日にどのくらい歩けるか、分かっていたこともあり、宿の関係で均一には行かないが、だいたい40km前後で計画を組んだ。距離が長くなるときや、山越えなどがあるときは、早くスタートしたり、距離を抑えて計画を立てたりした。ブログ更新の時間も欲しいので、遅くとも16時半には宿へ入りたかった。ただし、自分の年齢を考えると、自分でもうれしいくらいのスピードで長い距離を歩くことができたと自画自賛している。

 朝はやはり快調で、3時間くらいは休憩を取らずに歩き続けられた。しかし、午後からはやはり疲れを感じることが多く、午後に10〜15kmほどを残すようにして朝早く出る方が、精神的にも肉体的にも楽であった。

<心に残った光景など>
  北海道では目にできない様々な光景や植生にが印象に残った。特に、ひと月も早い桜、ツツジ、ツバキほかの花々は、まさに「花へんろ」そのものだった。あとは、山の斜面や標高の高いところで生活する山村の集落形態、生まれて初めて目にしたハクサイとキャベツ、ブロッコリーの花は新鮮な驚きだった。白いタンポポやレンゲの群生も印象深い。

<多くの人々の「心」に支えられて>
 この旅も「他人の心に支えられ、励まされて結願できた旅」である。特に、道中でのお接待は、前回同様、あちこちで、いろいろなものをいただいた。「心」をいただくことに徹して、すべて素直にありがたくいただくことができた。
 特に松山市のお接待大師こと法起坊見習いさんには、ことのほかお世話になった。旅の最中に買い替えるつもりでいた靴までお接待という形でご迷惑を掛けてしまった。また、自分一人で行くことやすることのできなかった場所への車等での案内はうれしかった。
 
 また、今回もお接待のために14年ぶりの再会に出向いてくださった趣深山さん、讃岐富士さん、前回もお接待をいただいた喫茶店のママさんとの再会、ブログを見ていて、追っかけお接待をしてくださった、徳島市のゴロスケホッホさんとSachikoさんなどなど・・・。あと、行き交う地元の人からの挨拶や励まし、道の案内もその類として、うれしく受け止めることができた。

 宿での同宿者との交流のほか、宿(民宿、旅館、ビジネスホテル)は、それぞれ違いはあるものの、遍路を対象とした宿が多く、概ね歩き遍路に対する細やかな心遣いの行き届いた宿が多かった。宿泊者が少ないときは、その宿の主人や女将さんと話できる機会が多く、いろいろなお遍路さんのエピソードや情報・助言をいただき、とても楽しかった。

 最後になったが、ブログへの訪問者の数字、コメントなどは大きな励みとなった。特にコメントレギュラーとなった感じの法起坊見習いさん、oriaiさん、u-nikoroさん、ライフ海野さんには心から感謝している。

 このブログにお付き合いいただいた方々にこの場を借りて、心から感謝申し上げたい。
「本当にお世話になりました。ありがとうございます。」



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