シキシャナイ岳(1058m) (日高町・岩内川石切場からのルート)  3人  02,12,29 

「ぜひsakagさんをこの山に」という誘いに乗り、その存在すらも知らなかった、とんでもないマニアックな尖峰の頂きに立つ。

登山地点下山
 6:55
 8:45
 9:50
10:20
10:30
11:05
石切場
c846m地点
コル(c900m)
スキーデポ(c1018m)
(休憩・下山時昼食)
頂 上
14:14
12:57
11:45
11:35
11:15
11:10
[4:10]所要時間(含・昼食)[3:04]
14:45 振内(シキシャナイ岳の全容を眺める)
16:00 樹海温泉 はくあの湯(入浴)
18:00 札幌
23:30 函館(帰宅

 今年になって相互リンクを結んで以来、ネット上でいろいろお付き合いをいただいている、私など足下にも及ばない岳人(『北海道の山と谷』にも協力者で名前が掲載)であるにもかかわらず、私のHPの熱烈なファンを自認し、私が登ったことの無いようなマニアックな山ばかりアップしている『地図がガイドの山歩き』のsaijyoさんから「北海道300山を目指してほしいsakagさんをぜひお連れしたい山がありますが、いかがですか?」というメールをいただく。その山が、シキシャナイ岳という、その存在すら知らなかった山である。予定が空いていたので、初対面の楽しみもあり、二つ返事で応じる。

 前日の夕方、日高町のセイコーマート前で待ち合わせして、初対面の挨拶をする。同行者は、いつも彼と同行することが多い久野女史(道新発行の『北海道の百名山』の「十勝幌尻岳」の執筆者)という豪華メンバーである。その後、国道237号線を南下して登山口となる岩内岳の南斜面の石切場まで彼の車の後について走る。岩知志ダムに注ぐ岩内川沿いの除雪されている立派な道を6kmほど入ると、大規模な日高橄欖岩の石切場に到着する。早速、私の車の後ろを倒して宴会モードに突入、3人で山談義に花が咲く。意外に早い21時過ぎには次の日に備えて、満天の星空の下で、それぞれの車での車中泊である。

 saijyoさんは3回目であるが、久野さんも初めての山だそうである。まだ薄暗い7時前に出発する。天候は時折青空が覗く程度であるが、大きく崩れる心配はなさそうである。当初の予定より西寄りの林道から取り付く。彼から前もって教えていただいた情報をもとに自分なりに地図上でルートを決め、GPSに入れて置いたのを見てもらうが、まさにその通りのルートだそうである。この辺りは顕著な尾根が存在せず、小さな沢が複雑に入り組んでいる非常に分かりづらい地形である。その中をコル近くまで延びている林道と小さな尾根(1)を繋いで登るルートらしい。スタート地点はすでに500m地点なので、標高差558mである。しかし、最後の詰めがもの凄い急斜面でスキーでは無理であるとのことである。彼曰く「中国の桂林の写真に出てくるような鋭い山だが、樹木が生えているので、何とか登れる」山なのだそうである。

 車のデポ地点の直ぐそばの林道を少し進み、両側に沢が発達している細い小さな尾根に取り付く。尾根上は雪が少なく、笹やブッシュが濃く、すんなり歩くことができない。キャリアもレベルも全然違う二人に案内される最高齢者なので、すっかりゲストに甘んじて、ラッセルもすることなく最後尾を付いていく。変化のない緩やかな地形や植生の中に縦横無尽に走る林道やトドマツの植林地の中を少しずつ高度を上げていく。彼は地図で確かめるわけでもないのに、私がGPSに入れてきた通りのルートをきちんと取っている。
 
 1時間ほど歩いて大きなトドマツを見ながら最初の休憩。上空はだんだん暗くなり、雪もちらついてくる。さらに1時間ほど歩き、846m地点で2回目の休憩。振り返ると大規模な石切場の削り跡が痛々しい岩内岳が見える(2)。そこから緩やかな尾根に取り付くと、「こんなところまで?」と驚くような里山状態のトドマツの幼木の植林地の中を通過し、900m付近から緩やかな広い尾根に取り付く。950付近からコルを狙うらしいが隣の1039ピークの方へ行きすぎてしまい、Uターンする形で、コルまで下りる。

 コルに下りようとすると、樹間からちょうど太陽の光を浴びて真っ白に輝く、とんでもない尖峰との対面である。それが、目指すシキシャナイの頂上である。彼の話から抱いていた予想を遙かに凌ぐ、まさに屹立するピークである(3)。今まで登ったことの絶対無い斜度である。「この高所恐怖症の自分があそこを本当に登るのか」と信じられない思いに駆られる。彼は「木が生えているので大丈夫です。」と涼しげに話す。

 両側から沢が詰めている平坦なコルに下り立つ。いよいよあの尖峰へのアタックである。スキーで行けるところまで、小さなジグを切って登って行く。膝頭くらいのラッセルであるが斜度が凄い。山回りのキックターンは難しいので、鮮やかに上の足を引いてスキーの先から平行に入れるキックターンを決める久野さんの真似をぎこちなくしながら、斜度が50度を超すであろうクニックの1018m地点までなんとかスキーで上がる。そこにスキーをデポして、あとは頂上までの標高差40mは体全体のラッセルとつぼ足での登りである。

 saijyoさんが人間ラッセルでまず、顔の高さくらいになる目の前の雪を両手で崩し、その下を体と足で掻き分けて泳ぐように一歩一歩登っていく(4)。私と久野さんは申し訳ないが彼の一歩一歩の前進をを待って休んでは進むという状態である。周りに手頃なツツジ科の灌木が生えているから、それに掴まって登れるが、何もなかったら、高所恐怖症の私は絶対無理な登りである。後ろを振り返るのが怖いくらいの傾斜である。我々が通った跡には、樋状の小さな雪崩が続いている。

 やがて、シャクナゲの樹が目立つようになり、頭の上が明るくなり、「頂上近し!」の感がすれどトップを切るsaijyoさんだけは疲れて思うように進まないらしい。標高差40mを35分掛けてようやく、待っていたように太陽が覗く狭い頂上へ到着する。あいにく日高山脈の主稜線は雲の中である。その方向には糠平岳が覗き、北東側にはハッタオマナイ岳。南側には上の方は雲の中に隠れている貫気別岳方面の大きな山塊が覗く。頂上へ着いた途端、太陽が隠れ、黒い雲で覆われてくる。記念写真を撮っただけで(5〜手前saijyoさん、右私)、昼食はスキーデポ地点で摂ることにして、直ぐに下山である。

 急斜面の下りは心配だったが、掴まる木の枝や幹のお陰でそれほどでもない。ただ、自分たちより遙かに速いスピードで踏み跡を川のように雪が流れて行くミニ雪崩に吸い込まれそうな錯覚に陥り、自分も流されていくような気がする。35分掛けて登った斜面をわずか5分でスキーデポ地点へ下り立つ。昼食を摂り、汗が冷えて寒くなってきたので、そそくさとスキーを着けて狭い樹間をシールを付けたまま下る。樹がなければコルまでは深雪滑降を楽しめる最高の急斜面であるが、私と久野さんは樹が気になって斜滑降&キックターンで下るが、さすがsaijyoさんは百戦錬磨の強者である。狭い樹間を縫うように滑っていく。

 コルに下り立ち、910ピークの右を通る最短距離を下りようと北西へ進路を取るが、深い沢で遮られて、いつの間にか緩い丘のような地形をぐるっと回って登りのトレースにぶつかってしまう。かなり無駄な距離を歩いたことになり、そのことに直ぐに気づかないで狐にだまされているような顔をしているsaijyoさんがおかしかった。それでも、登りで行き過ぎた部分をショートカットした地点でシールを外し、登りのトレースを外して深雪滑降を楽しんだりしながら、600m付近まで下りる。そこからは藪が濃く小さな登り返しのある細い尾根を嫌って谷地形へ下りて行く。ところが、その沢がだんだん深くなり、大きな岩だけの沢になり、進退窮まる。スキーを脱いで左岸の尾根に登り、当初登りで取り付くはずだった地点の道路に出る。

 スキーを担いで道路をテクテク5分ほど歩いて車デポ地点へゴールインし、7時間15分のマニアックな山旅は終わる。その後、この山の全容を眺めたくて、国道237号線へ出て振内まで南下する。途中から眺める確かに異様なほど尖がって天を突くその山容は、やはり異様であり、とても我々凡人には登山の対象として見ることのない山である(6)。今から数時間前にあのてっぺんに立っていたと思うと信じられない感じがするとともに、あのような山に誘い、案内してくれたsaijyoさんに改めて感謝の意を強くした次第である。

 彼とのネット上での出会いが無ければ、絶対登ることはおろか、その存在すら知らないで終わったかも知れない超マニアックな山である。その後、穂別町の樹海温泉・はくあの湯で汗を流し、彼らと別れ、札幌に向かい用事を足して、その日の内に函館まで帰る。 

saijyoさんのぺージも見たい!

○ハッタオマナイ岳情報
 この前日、単独で平取町と穂別町の境界線上に聳えるハッタオマナイ岳に、『ガイドブックにない北海道の山50』(八谷和彦著)のルートを参考にアタックしましたが、吹雪模様になってきたので、標高600m付近で撤退してきました。ただ、地図にも載っていて、彼が利用したペンケポロカアンベ沢川沿いの320m二股までの林道は、現在はほとんど決壊していて、流木の山をかわしながら岩だらけの川の中を歩いたり、右岸の斜面をトラバースしたりとかなりのアルバイトを強いられました。帰りは雪が少ないこともあり、スキーの滑走面やエッジが傷だらけになりました。
 前日のものと思われるトレースが、ペンケポロカアンベ沢川の林道がまだ残っている標高200m付近に延びる右岸の尾根に取り付いていました。帰宅してからゆっくり地図を見ていましたら、この尾根は、この沢と平行して618ポコへ繋がっていますし、斜度も緩やかなので、現在は荒れた沢の中を歩くより、こちらの方が楽なような気もします。そこから八谷氏が「見晴台」と書かれているc690の肩に取り付くのも選択肢の一つだと思いました。いずれ再挑戦のときにはこの尾根を使い、そこからあとは、八谷氏と同じく987ピークを狙い稜線上に頂上へと考えています。
03,02,16にこのルートを使い、無事登頂してきました。


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