知床岬海岸トレッキング 
 相泊から  4名  12,7、31〜8,2
愛媛県松山市の法起坊見習いさんの長年の夢を叶えるべく、山仲間3人がフォロー旁々実に楽しい冒険トレッキングとなった
7/30
14:00 中標津集合
        (買い物)
16:00 相泊漁港
     (夕食・車中泊)
7/31(晴れ)
時刻地点
 4:30
 6:10
 6:50
 8:30
 9:20 
11:00
11:30
14:00
相泊漁港
観音岩
トッカリ瀬
タケノコ岩
モレイウシ湾
ペキンの鼻
近藤ヶ淵
滝の下番屋前
[9:30]所要時間

8/1(雨)停滞

8/2(霧雨のち曇り)
時刻地点
 6:00
 6:30
 7:30
 9:10
 9:20
10:00
10:45
11:30
11:50
12:25
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13:30
滝の下番屋前
念仏岩
カブト岩
赤岩着
 〃 発
知床岬灯台
アブラコ湾
文吉湾着
 〃  発
アブラコ湾
(海岸歩き)
赤岩着
[7:30]所要時間
 14:30 迎えの船に乗船
 15:30 相泊漁港着
 16:30 峰ノ屋ホテル(入浴)
 18:00 羅臼道の駅
         (打ち上げ)


○プロローグ

 「なんとしても自分の足で、北の地の果て・シリエトク岬に立ちたい」・・・これは、一昨年に引き続き、6月に来道して10月下旬まであちこち登山や観光を楽しんでいる愛媛県松山市の法起坊見習いさん(私の四国遍路のときにお世話になって以来のお付き合い)の長年の夢だった。

 その夢を叶えるべく、自分がリーダーとなって、やはり四国遍路仲間の68歳トリオの千歳のたかさんに加えて、中標津の岳友のMiさんとMoさんの5名で、昨年から計画を立てていた。しかし、たかさんは体調が思わしくなく、4名で実行することになった。全員初体験である。

 いろいろ調べていると、網走の岳友・伊藤正博さんの『知床の山と沢』にもその記録が載っているし、ネット上にも結構多くの記録が見られる。一番の課題は、帰りの船のチャーターであった。伊藤さんから「羅臼遊漁船組合に連絡を取ってみると、なんとかなりそうです」との情報をもらう。そこに連絡したら野田さん(ライダーハウスMAXのオーナー)を紹介していただいた。

 総合的には、環境省の「知床半島先端部地区利用の心得」が非常に参考になった。特に、役に立ったのが、p11〜12に掲載されている「リスクの軽減及び利用に関する情報〜海岸トレッキング利用における危険箇所・通行困難箇所」である。そこには、難所とされている箇所の通過方法と留意点が詳しく書かれてある。

 日程の決定は、法起坊見習いさんが、潮の干満を調べて、8/2の大潮の前後に設定した。天候で後ろへずれても良いように、予備日も入れて7/31〜8/2の2泊3日で計画した。結果、中日に雨に降られて丸1日停滞したが、無事念願を果たすことができた(1)

○前日 7/30

 14:00に中標津の大型スーパーに集合、そこで、買い物をする。羅臼町瀬石まで走り、あらかじめ連絡取っておいた迎えの船のオーナー野田さんの所へ寄り、計画書を提出し、いろいろ打ち合わせをする。迎えは8/2の16:00、予定が変更になったときには、携帯が通じないので、赤岩の昆布番屋の小倉さんの衛星電話を利用することなど・・・。

 その後、ちょっと戻って、環境庁の「ルサフィールドセンター」へ寄る。「知床半島先端部地区に立ち入る方へ」のパンフをもとに簡単な説明を受ける。「今年は熊の出没が非常に多いので十分留意するように」とのことだった。

  国道の終点には、「これから先へ行かれる方へ」という看板が設置されていた(2)相泊漁港で、車中泊の準備をして、ジンギスカンパーティで、明日からの好天を願い、健闘を誓い合う。

○7/31(晴れ) 4:30スタート


 8:30頃の干潮の時刻を挟んで、トッカリ瀬と剣岩の渡渉を済ませたいので、朝靄の中を4:30にスタート。 法起坊見習いさんと自分は沢靴で通すつもり。中標津の二人は沢靴持参で登山靴という出で立ち。船で採った昆布を洗う作業に勤しんでいる人に挨拶をして通過(3)。さらに進むと、今度は、洗った昆布を並べて干す作業をしている(4)


 この辺りは崩浜というという地名らしい。しばらくの間昆布番屋が続き、昆布作業をしている人たちで賑やかだ。こちらは遊びなので、なんか気まずさがないわけでもない。仕事の邪魔にならないように端の方を歩くように努める。

 番屋が少なくなると、熊の糞や鹿の骨がやたらと多く目に付く。

○観音岩(高巻き) 6:10

 スタートして1時間半ほどで、ガスの中に最初の高巻きの難所・観音岩が見えてくる。ここは、10年前の同じ頃、知床岳へ登るときに通過している。

 しっかりとした固定ロープが設置されているし、足場もしっかりしているので、安心して登って下ることができる(5)

 観音岩を越えると、足元に3体の観音像と遙か頭上のピークに金色の観音像が設置されている。これは10年前と変わっていない(6)。玉石の海岸の先に見える先端はトッカリ瀬(7)

○トッカリ瀬(渡渉とへつり) 6:50

 やがて、次の難所・トッカリ瀬に差し掛かる。ここは岩礁の上を渡渉して、その先はへつる箇所だが、潮が引いていて、岩礁の上は難なく通過することができた。しかし、その先を巻いた所は細い入り江になっていて、底の見えない海面のすぐ上をへつらなければならない(8)。幸い、ボコボコの黒い溶岩が足場やホールドになって、それを頼りになんとか通過できた(9)


 トッカリ瀬を越えると、化石浜の海岸に出る。昆布漁の船が5隻ほど。その先の突端にタケノコ岩が見えている(10)。海岸の上の山肌は黄色一色のトウゲブキで覆われている(11)タケノコ岩のそばは、岩に空いている穴の中を通過。その先はへつりや岩礁歩きや巨岩の間の歩きが続く。

○モレイウシ南側(高巻き・へつり) 9:05

 タケノコ岩を越えると、今度は、モレイイウシ南側の高巻きが待っている。ここも登りも下りも固定ロープが設置されている(12)。コルから眺めると、紺碧色の海面が美しいモレイウシ湾とそこに建つ番屋が見えてくる(13)

 先に下りていたMoさんが、「先に熊がいる」と言って、みんなが下りてくるのを岩の上で待っている。

 見ると、番屋の前にテントを張っている「知床ふるさと少年探検隊」のスタッフに追われてこちらに向かっているとのこと。こちらから笛を鳴らして近づいていく。熊も挟み撃ちにあったようで、しかたなく、山の方へ逃げていったようだ。

 自分は熊の姿を見ることはできなかったが、先に下りていたMoさんが写した貴重な一枚(14)

 モウレイウシ湾には、30年続いているという「知床ふるさと少年探検隊」の黄色い大きなテントがたくさん張られていた(15)ここに泊まっているのは、ここから戻る班で、今朝方、別の班はこの先へ向かって出発しているとのこと。

○剣岩(渡渉) 9:30

 モレイウシ湾の北側にある剣岩の岬は、干潮時は岩礁の上を難なく歩けるが(16)満潮時は人の丈以上の水深になるらしい。潮回りの計算をして来ないと、ここで、1泊することになることもあるらしい。我々も最悪の場合、それを覚悟した日程を組んできた。しかし、もっとゆっくり歩きたいであろう法起坊見習いさんには申し訳なかったが、干潮時に間に合うことができ、水面に出た岩礁の上を快適に歩くことができた。ここを越えると、すぐにメガネ岩の岬が見えてくる(17)

○メガネ岩(穴の潜り・へつり) 9:50

 メガネ岩はその名の通り、穴が空いていて、その中を通ることができる(18)。しかし、そこを抜けた後のへつりが怖かった(19)。船泊という地名の浜でゆっくり休憩(20)

○ペキンの鼻(高巻き) 11:00

 ペキンの鼻は、コルを越える踏み跡を辿るだけのところだった(21)。ここを越えたら知床半島の最果ての山・双耳峰を持つウイーヌプリが見えてくる(22)

○近藤ヶ淵(へつり・高巻き) 11:25

 ペキンの鼻を越えて、砂浜を進む。途中の新しい無人の番屋で、滔々と流れ出る冷たい湧水を見つけて飲む。やがて、またまたへつりで越えなくてはならないところへぶつかる。ここもホールドのしっかりしている岩に助けられる(23)その先が近藤ヶ淵で、湾を形成する岩崖の北側が垂直の壁になっている。ここは高巻かなくてはならない。踏み跡を見つけて急斜面をよじ登ると、急な細い尾根の上に出る(24)しかし、その尾根の上にも踏み跡が続いている。どうやらペキンの鼻のコルから稜線上を辿ってこの尾根へ下りてくるコースもあるらしい。よく見ると、草の斜面に右側の沢地形に向かってトラバースするような踏み跡がある。それを辿ってみると、固定ロープがあった。その先の踏み跡を辿って下ると海岸へ下りることができた。

 ちなみに、ここの由来となっている近藤さんは、今回の知床ふるさと少年探検隊のスタッフの中にいて、彼が数年前の探検隊の引率のときに足を滑らせて海に落ちたことが由来とのことだった。あるネットで「近藤さんが落ちて死んだことが由来」と書いてあったが、「本人はまだ生きて、ここにいます。足もついています」と笑われた。


海岸へ下り立って、下ってきた沢形を見上げる(25)。その先の海岸は、抉れたような穴の空いた巨岩が続き、それを伝い歩かなければならない。その先には滝川の岬とカブト岩の岬が見えている(26)

○今日のゴール・滝の下 14:00


  少し進むと、滝川の手前の砂浜に小さな熊が見える。笛を吹くと、茂みの中へ隠れてしまったので、笛を吹きながら、そこを突破する。滝川の岬を回り込むと、海へ落ち込むような滝が見えてくる。その手前に滝ノ下の大きな番屋が見えるので、そこを今日のゴールとして、最後のがんばりで歩を進める(27)この時点で、法起坊見習いさんはかなり疲れているようだった。

 番屋に着いたら、今朝モイレウシ湾を発った「知床ふるさと少年探検隊」の子供11名と同数のサポーターが泊まっていた。ここは昆布番屋ではなく、定置網の番屋でアキザケ漁が始まるまでは使われていないので借りたとのこと。倉庫の前にテントを張り終えたら雷雨が降ってきた(28)しかし、夕方にはその雨も上がり、外で夕食を食べることができた。夕暮れになって外で楽しそうに遊ぶ子供たちを眺めてのんびりとする(29)

 明日の天気予報は雨である。幸い、今日は余裕を持った計画の2日分の行程を1日で歩いたことになる。最悪の場合、停滞しても3日目の行動には一切差し支えないので、安心して眠りに就く。案の定、夜半から強い雨が続いた。

○8/1(雨で1日停滞)
 朝を迎えても雨脚は衰えず。自分たちも停滞を考えていたが、探検隊も1日停滞とのこと。
 
 しかし、男滝の下でテン泊していたカヤックのメンバーは雨の中元気に出発していった(30)
 
 雨はほとんど止まず、テントの中で1日いっぱい体を横たえて、疲れた体を癒した。



8/2へつづく



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