<札内岳〜札内分岐>
札内岳から札内分岐とエサオマントッタベツを望む ここまで6時間の予定だったが7時間以上を要してしまう。暗くなるまでに札内分岐まで行ければいいと1時間のんびり休むことにする。荷物を少しでも軽くするために昼食は一番重いカレーライスにする。これから辿る札内分岐までの稜線とエサオマントッタベツ岳(1)幌尻岳と戸蔦別岳(2)、カムエク方面などの展望(3)を楽しみながら休憩する。1時間経っても後続者が誰も来ない。予定の13時になったので、出発しようとしているところへ、後続の男性が到着する。彼は、「もう限界なので今日はここまでにします。」とのことである。「私はどうしても月曜日に下りなければならないので・・・」と言って、今日のテン場である札内分岐を目指して出発する。
札内岳から幌尻と戸蔦別を望む
 稜線は、踏み跡はしっかりしているが、上をハイマツなどの藪が覆い、手で掻き分けなければ歩けないが、前半は主に下りモードであるので、それほど気にならないし、時折南側に広がるお花畑が疲れた体を慰めてくれる。花畑には当然熊の掘り返しがあちこちに点在する。笛も鈴もないので、大きな声を上げて進む(4)。

 中間地点までは2時間も掛からなかったが、後半は登り返しが長く、それを越えても次々と小さなピークが目の前に現れる。頭の高さを超えるハイマツやダケカンバ、ミヤマハンノキの太い枝が踏み跡を覆い、それをひとつひとつ手で掻き分けなければ進めず、こんなに上半身が疲れる藪漕ぎははじめてである。ヘルメットが藪漕ぎに役立つとは思わなかった。しかし、稜線のあちこちに咲いているクルマユリが心を慰めてくれる。たまに稜線の北側に回ると日が当たらないし、涼しい風がささやかではあるが谷から上がってきて気持ちよい。後半は5分進んでは2分ほど休むといった苦しいペースである。
札内岳からカムエク方面を望む
 北東カールを見下ろすとテントが二張り、宴会モードが始まっている。札内分岐にも人の姿が見える。札内分岐が近くなってくると、それまで無かった苦手な岩場の稜線越えが現れる。疲れているのでバランスに自信がない。どうしても低い姿勢で恐る恐る通過する。そこを下り、小さなピークを2つ越えると、札内分岐はもうすぐである。北東カールへ下りる最も易しいルート分岐の赤いテープからは一昨年歩いているので、気持ちが軽い。
札内分岐までの稜線の南斜面に広がる花畑
 札内分岐のすぐ下の一昨年テントを張ったところは空いている。もし上がダメならここにしようと思い、一応札内分岐まで上がる。休み休みではあったが、札内岳からの稜線は予定通りの4時間30分であった。分岐には単独行の男性が一人テントを張っている。側に張って張れないないことはないが、石が出ているので、下に張ることにして、その男性とお喋りしながら目の前に広がる展望を楽しむ。
札内分岐からの暮れなずむ日高主稜線
 その男性が「熊が5頭ほどいますよ」と言う。指の先を見ると、札内分岐の下の稜線の西斜面に親子熊やその下の方にそれぞれ離れて3頭ほどの姿が、言われなければ分からないほどの大きさではあるが確かに認められる。念願の山での熊の姿との初出会いではあるが、カメラにも写らないほどであまりにも遠くで感激も薄いのが残念である。

 下のテン場に戻り、テントを張り、温いビールを飲むがいつものおいしさが無く、食欲もない。それだけ疲れたということなのであろう。夕食にラーメンを食べるのに精いっぱいである。おまけに6月末の野塚岳〜十勝岳縦走のときのスパイク地下足袋での稜線歩きでは何ともなかった足の親指の爪が痛い。左足の方は内出血をしているようで、これ以上無理はできない。明日のカムエクへの縦走を続けるかどうか悩む。夕焼けに染まる展望は無理なようなので、暮れなずむカムエク方面の様子(5)夕日に輝くエサオマン頂上(6)をカメラに収め、テントに潜り込む。
夕日に輝くエサオマントッタベツ岳
 薄暗くなってから二人の男性がテントのそばを通り、「今晩は!」と声を掛けてくる。空気窓から顔を覗かせると、なんと3月に美笛峠から漁岳へ縦走したときに途中であった札幌のSaさんである。向こうでもびっくりしている。その同行者の音更町のtoさんもまたmyHPの愛読者とのことで感激している。彼等はガケの沢から札内岳に上がって、同じ稜線を歩いてきたのだそうである。

 彼等が札内分岐のテン場へ上がって行った後、「明日は彼等と同行して、エサオマントッタベツ川を下りよう。そうすると、ピリカペタヌ沢の車止め地点にデポしてある車のところまで送ってもらえるであろう。」との結論に達する。2泊3日以上の行動で、1日目の13時間行動は明らかに計画ミスである。今度は、時間的にも楽なエサオマントッタベツ川から登り、リベンジを果たすことにし、眠りに就く。


つづく


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