留辺蘂山(るべしべやま)(1000,9m)  (登り)東面の直登沢 (下り)頂上北側の東尾根
2人  03,7,21

標高の割りに変化に富んだルートで、滝越えのロープ初体験や下りの藪漕ぎもいろいろ判断を迫られる楽しい冒険もどきの山行であった。
 
7:00 日高ロッジ
7:20 千露呂川林道ちろろ橋
登山
地点
7:35
8:10
9:40
10:22
千露呂川林道ちろろ橋(500m)
ロープ越えの滝(630m)
源 頭(850m)
頂 上
[2:47]所要時間
下山
地点
10:40
11:00
12:25
13:00
頂 上
尾根分岐(980m)
尾根分岐(700m)
千露呂川林道ちろろ橋(500m)
[2:20]所要時間
[5:25]総所要時間(昼食も含む)

14:30 日高ロッジ
15:30 穂別町樹海温泉はくあ(入浴)
20:30 帰 宅

GPSトラックログをもとにしたルート図
(73kb)

 北日高の山に同じ読み方をする漢字の「留辺蘂山」とカタカナの「ルベシベ山」の二つがある。今回はこの漢字の方の山である。「ルベシベ山」は高さも1740mと北日高の主峰のひとつであるのに対して、こちらは千呂露川と額平川に挟まれた東西に連なる尾根上に位置する1000m強の目立たない山である。
 
 なお、この漢字と同じ町名が網走管内にあり、留辺支部と記述される地名が上川町内にもある。これらの語源はすべて「ル・ペシ・ペ〜道・下る・川(峠道の沢)」に由来するらしいが、この山の周りにの地図上には留辺蘂川という名前は見当たらない。

 今回は、昨日の春別岳に誘っていただいた『地図がガイドの山歩き』チームの西條さんと2人だけである。日高町の千栄から、6年前に北戸蔦別岳に登り1967峰と七つ沼をピストンして以来の千呂露川林道を走る。山に入ってから初めてこの川を渡るちろろ橋の手前が今回の東面の直登沢出会いである。橋を渡った駐車スペースに車を置いて出発する。登りは直登沢を源頭まで詰めて、藪漕ぎで頂上に立ち、下りは頂上の北側から東に張り出して延びる尾根の藪漕ぎの計画である。

 岩が切り立つ深い本流の上に懸けられたちろろ橋を戻って(1)、本流に合流する直登沢に取り付く地点に、こんな目立たない山なのに、はっきりとした踏み跡があり、古いテープが付けられているのに驚く。その踏み跡を辿ると涸れ沢に出る。昨日の春別岳と同じく伏流して本流に合流しているらしい(2)。

 その涸れ沢を少し登っていくとまもなく水流が現れてくる。小さな滝も現れるが、580m附近で二股に分かれるが、そこは右側を進む。登り初めて35分ほどして630m附近で6mほどの滝にぶつかる。なかなか手強い滝のようである。西條さんが初めは水流のある方を登ってみるが、上の方で、次の一歩が出ないとのことで下りてくる(3)。次に水流の左側の草付きの岩盤を登って(4)、上からロープを垂らしてくれるとのこと。こちらは、もしかのときのために借りてきた腰ベルトを付けて彼の登り切るのを待つ。

 苦労して、なんとか登り切り、ロープを垂らしてくれる。初めての経験である。どの程度ロープに頼っていいものか分からないので、なんとかホールドを探しながら自分の手と足で登ろうと考えて苦労する。一カ所だけ手が掛からないところがあり、そこだけは彼に引っ張ってもらって乗り切る。ようやく登り切ったら、そのそばの木の幹に新しいho放置シュリンゲンが付けられていた。ということは最近ここを下った人がいるということである。

 休憩も含めて30分近い時間を要してそこを出発すると、650m附近で、初め予定していたルートの方に10mほどの急な滑滝状の滝が現れる。この滝はホールドになるものもなく、岩と崖に挟まれて高巻きもできない(5)。そちらを諦めて、右の沢を選ぶ。再び665m附近で二股にぶつかる。右へ行くと頂上の右側の急な斜面にぶつかるので、ここは左を進む。この辺りになると水流も消えてくる。740m附近の二股はさらに左を選ぶ。上から藪が被さりそれを掻き分けながら登っていく(6)。

 スタートして2時間ほどの850m地点で、はっきりとした源頭にぶつかる。そこからは急な斜面の藪漕ぎが待っている。そこを直登するには余りにも急なので、左側から巻いて登っていく。初めは単なる薄い笹藪の急斜面である。左側には当初登る予定だった稜線のコル附近まで突き上げている沢地形が見える。真上にはこんもりと樹木が茂った頂上が見える。直接頂上をねらって急な林の中に入っていく。岩があったりでそこを巻いたりしながら、藪漕ぎを続けてようやく一番高いところに到着する。そこは全く刈り払いもされていない笹薮で、測量のための自然木を使った三角櫓と三等三角点の標石だけが設置されているだけである。林の中の高見といった感じで、まったく眺望が利かない(7)。

 展望もなく、笹藪の中に座って休んでも落ち着かないので、20分ほどで下山を開始する。頂上からちょっとずれると東側に昨日登った岩崖を巡らせた荒々しい春別岳が姿を見せるが、生憎頂上だけが雲で覆われているのが残念である。昨日は東側から登ったから登れたが、こちらから見える西側からはどこからも登れそうにもない険しい山である。(8)東南の方には主稜線の山が姿を見せているが、ほとんどが雲に覆われて特定することはできない。

 とりあえず、北側の980mピークまで行って、そこから東に延びる尾根を下る予定である。そこまでの稜線は広く笹薮も腰くらいの高さで歩くのには支障がない。20分ほどで、980mピークへ到着し、東に延びる尾根に取り付き、下っていくとやたらと急で、尾根地形ではないようである。変だなと思いながらとりあえずはっきりしている尾根を下っていくと、どうも北へ向かっているようである。磁石やGPSで確かめるとやはりそうである。すなわち国境稜線をそのまま北へ向かっていたのである。早く気付いてよかったと胸をなで下ろして、トラバースしながら東尾根へ乗り上げる。どうも、帰宅後GPSのトラックログを地図上に落としてみたら、この辺りはまだ尾根地形がはっきりしていなくて、真東ではなく南東へ向かった下りたので、急な斜面の上に出たのである。

 地図上に現れるほどはっきりした尾根でなく、磁石やGPSで真東に進路を取って下っていく。藪もそれほど濃くなく、尾根の真ん中は微かに鹿道ができていて、歩くやすく、たまに古いテープも見られる(9)。しかし、だんだん顕著な痩せ尾根になってきて急になってくる。周りに木があるからそれに掴まって下れるが、崖のようなところもあって、結構苦労する。800m附近で、突然岩頭が行く手を遮るように聳えている。その周りだけは植生が違ってやたらと高山の雰囲気である。崖のような左側を木に掴まりながら巻いて突破する。780m附近で尾根が分かれるが、ここも真東へ進む

 やがて、750m地点で、再び木が生えた岩塔が尾根の行く手を塞いでいる。その尾根をまっすぐ下ると林道に下りるところが崖になっているので、その地点から南側に延びる尾根に取り付くが、その尾根は岩稜となって延びているので、細く両側が切り立っていて、とてもじゃないがその上を下ることは不可能である。直ぐに途中から左側の沢地形の斜面に下り、トラバース気味に下っていく。

 登りで使った沢の近くになるとトドマツの植林がされていて、その中を通って沢に近づいたら直ぐ下に車が見え、見事に沢取り付き地点へ出る。きれいに一周した感じである。橋の上に立って振り返ると、多分下りの尾根が延びている980ピークではないかと思われるピークが見えている(10)。地図で予想していたよりも変化に富み、次々といろいろ判断を迫られる場面に遭遇して、大いに冒険心を満足させる山行であった。


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