利尻山(1721m )A
4:50 民宿「マルゼン」発
(車で送ってもらう)
登下山 | 地 点 |
5:00
6:20
7:20
8:55 |
3合目登山口
6合目
8合目長官山
頂 上 |
[3:55] | 所要時間 |
9:15
10:25
11:55
13:00 |
頂 上
三眺山
5合目登山口
沓形市街地 |
[3:45] | 所要時間 |
13:30 沓形バスターミナル発
14:15 民宿到着
15:30 利尻富士温泉(入浴)
19:00 民宿マルゼン(連泊)
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まさに「海に浮かぶ山」そのもので、深田久弥の『日本百名山』に最初に登場するのが、この利尻山だ。氏は利尻山を「島全体が一つの頂点に引きしぼられて天に向かっている。こんなみごとな海上の山は利尻岳だけである」と称賛している。別名利尻岳とも利尻富士とも呼ばれる。
アイヌ語でリイシリは「高い島山」を意味する。明治23年(1890)ごろ、修験者・天野磯次郎が鴛泊(おしどまり)から利尻山頂上まで登山道を開削したと伝えられている。
この山に初めて登ったのは、山を始めてちょうど100座目の記念すべき山だった。しかし、その後何度も稚内まで来たり、島に渡ったりしたが、天候に恵まれず、空振りに終わり、再訪が叶わず、19年が過ぎていた。2年前には、雨に降られて避難小屋で撤退している。
今回はこの山だけのピンポイント狙いで、天気を狙っていた。前日の3時に函館を出て、最短距離の556kmを走って、その日の内に利尻島へ渡った。宿は、前夜急に決めたので、素泊まり専門の民宿「マルゼン」にした。4500円だった。
翌朝、港から眺める利尻山は、すっきりとした姿で朝日に輝いていた(1)。
19年前は、鴛泊コースを登って、沓形コースを下りているので、反対回りをしたかった。しかし、フェリーやバスの時刻の関係で、同じ回り方をせざるを得なかった。
○沓形コースを登る
4:50に宿の車でほかの宿泊客と一緒に3合目登山口まで送ってもらう。登山口へはほかの宿の車も次々やってきて、多くの登山者が準備をしている。
5:00に登山口をスタート(1)。
10分ほどで日本名水百選にも選ばれている甘露泉に到着(2)。ここで、スポドリの粉を入れて来た2本のペットボトルに水を汲む。
しばらく展望のない中を黙々と登る。4:00ごろに送る宿もあるらしく、先行者を次々追い越しても、際限ない感じだ。平日にもかかわらず、さすが人気の山だ。本州からの登山者が圧倒的に多い感じだ。
「これで日本百名山97座です。こんな海から直接聳えている山はほかにないですよ。しかも形が良い。実に素晴らしい山です」と感激していた新潟の方もいた。
6合目の第一見晴台まで来ると、展望が開け、ハイマツで覆われた長官山への斜面が見える。風は強いが、上空の澄み切った青空がうれしい(4)。
振り返ると、眼下に鴛泊市街地と海の向こうに礼文島も見える(5)。
6.5合目には携帯トイレブースが設置されていた。ちなみに、避難小屋よ9合目にも携帯トイレブースが設置されている。19年前にはなかったものだ。携帯トイレは宿やコンビニなどで400円で売っている。
そこから振り返ると、6合目で休んでいる登山者やその上の登山道を登ってくる姿も見える(6)。
スタートから2時間20分で、8合目の長官山(1218m)に到着。ここまで来て、初めて山頂部との対面である(7)。
ここには、一等三角点が設置されていて、点名は「利尻山」である。ちなみに、頂上(北峰)には二等三角点が設置されているが、点名は「利尻絶頂」という凄い名前である。しかし、三角点自体は亡失となっている。
長官山から少し下って行くと長官避難小屋が建っている。そのそばは風が当たらないので、その小屋の前のベンチに腰掛けて朝食をとった。
9合目付近からは頂上右側斜面となる沓形コース側の崩壊地形が目に入ってくる(8)。19年前より整備が進んで登りやすくなっている。
9合目を過ぎると、ミヤマアズマギクやエゾツツジを初めとするいろいろな花が多くなってくる(9)。俄然登るスピードが遅くなり、花に興味のない人にどんどん追い越されるようになる。
なんとかしてリシリヒナゲシを見たくて、目を皿のようにして、ザレ場を眺めながら登る。
ほかの人は気付かなかったようだが、沓形コース分岐から少し登った右側のザレ場の離れたところに、7〜8本の花茎を立てた株が見つかった。ズームで引っ張って、ようやくそれと分かるような画像が撮れた(10)。
いろいろな花をカメラに収めながら登って行くと、このコース一番の難所であるガレ場となる(11)。深く掘れているところは、階段状に工夫された整備がなされていて、前回より数段登りやすかった。
4時間弱で、多くの登山者がくつろいでいる頂上に到着。ここは北峰(1718.7m)で、利尻神社が祀られている(12)。風も弱まってきて、それほど気にならなくなっていた。
南側には、危険なので通行禁止になっている最高峰の南峰(1721m)とそのそばにロウソク岩がにょっきりと聳えている(13)。
山頂部はお花畑になっていて、リシリオウギ(14)を初めとする多くの花が咲いていた。
もうひとつの目的だった、やはりこの山の特有種であるボタンキンバイは、西斜面に大群落は見えるものの、近くで目にすることはできないのが残念だった(15)。
○沓形コースを下山
20分ほど休んで、下山を開始。頂上直下のガレ場で気をつけてはいたが、砂礫に足を取られて転んでしまう。多くの人が転ぶところらしい。
分岐から沓形コースへ入る。歩く人が極端に少ないようで、道もせまく険しい。ロープが設えたところも多い。しかし、北斜面なので、鴛泊コースではもう終わっていた花々がまだ咲いている。
やがて、崩壊地形のガレ場をトラバースするコース最大の難所「親不知子不知」である。滑落しないように恐る恐る通過(16)(通過後に撮影)。
そこを通過して安心する間もなく痩せ尾根を越えると、三眺山までの間が「背負子投げ」の難所である(17)。
そのコルへ下って行く途中で、道端に咲く10株ほどのボタンキンバイが咲いていた。近くで目にすることはできないと思っていただけに、非常にうれしかった。八重咲き状の花びらと中心部の赤が可愛い(18)。これで、前回目にできなかったこともあり、今回目にしたいと思っていたリシリヒナゲシ、リシリオウギ、ボタンキンバイを目にすることができて大満足だった。
緊張を強いられる歩きが終わって、三眺山に到着(19)。このコースを往復するという同年代の岐阜から来たという男性が休んでいた。
結局、このコースで出会った人は5人だけだった。鴛泊コースは数百人はいた感じだったのに・・・。結局この難所と交通の便の悪さがそうさせているのであろう。
落ち着いて頂上を見上げると、前回もそうだったが、崩壊が進んだ荒々しい地形は鳥肌の立つ思いである(20)。
ここまで来るともう怖いところのない快適な尾根歩きとなる。下って行くと、登山道の続く尾根とその先にゴール地点の沓形漁港が見える(21)。
5合目登山口から町までも歩くつもりなのと、鴛泊へ戻るバスの時刻が13:30なので、大急ぎで下って行く。
登山口に到着したのが、12:00だった。あとは5.5kmほどの下りの舗装道路歩きである。ここも速歩でたまに入ったりして下った。
バス停のある利尻富士町役場へトイレを借りに寄ったら、まだ13:00だった。30分あるので、ビールを飲みたくてコンビニを探して行ったら、その隣がバスの始発地点のターミナルだった。
ビールで喉を潤してバスに乗り込んだら、前の4列は「お年寄り優先席」だった。思わず後ろへ下がろうとしたが、考えてみたら、年齢的には立派な年寄りだ。遠慮しないで一番前に座った。
バスの窓から眺める利尻山は、鴛泊から眺める角度と90度ほど違うようだ。左の尾根が鴛泊コースで、崩壊地形を挟んだ真ん中の右尾根が沓形コースのようだ(22)。