[83]利尻山(1721m ) [鴛泊コース〜沓形コース] 96, 8, 8 (木)

一人歩き100山目の「海に浮かぶ花の山」の花と荒々しい山容に大満足

5:30 民宿・みさき発
(車で3合目まで送ってもらう)
登山 (鴛泊コース)
5 :35
7 :35
8 :35
8 :45
3合目登山口
8合目長官山
沓形コース分岐
頂上着
[3 :10]所要時間
下山(沓形コース)
9 :30
9 :40
10:10
11:10
11:55
頂上発
沓形コース分岐
三眺山
7合目避難小屋
5合目登山口
[2 :25]所要時間
12:20 (車で拾ってもらう)
12:30 沓形
14:00 鴛泊フェリー
15:40 稚内
19:00 雄武町日の出岬
     (入浴・車中泊)
一人歩きの登山を始めて、ちょうど100山目達成(北海道百名山は83山目)は、偶然にもそれに相応しい山となる。「海に浮かぶ山」「孤高の山」「海抜0メートルからの山」「特産の高山植物の山」などの枕詞に見られるような魅力に溢れた素晴らしい山である。昨年計画し、宿の予約までしていて、母の入院で実現できなかっただけに、悪天候の続く今夏での天候に恵まれた山行は予想を上回る感激の山であった。
海に浮かぶ山
 前日、天塩山地の最高峰・ピッシリ山から下山し、羽幌から日本海沿いを北上してまもなく、まさに「海に浮かぶ山」が見えてくる(1)。写真では何度も目にしているが、実際に目にするのは初めてである。稚内からのフェリーで島に近づくにつれて、山ひだや雪渓などがはっきり見えてきて、否が応でも登行意欲は高まってくる。

 もし、宿がとれなかったら野宿でもしようと思い、エアーマットとシュラフを持ってきたが、フェリー発着所で問い合わせたら、直ぐ近くの民宿「みさき」が空いているという。民宿で7500円は高いが、夏だけの商売である。海のもの主体の食事を楽しみに民宿へ向かう。
鴛泊港と利尻山
 夕食前に風呂に入り、ピッシリ山の汗を流す。部屋の窓から鴛泊港を挟んで夕日に輝く利尻山頂上と北側斜面がくっきりと望まれる(2)。楽しみしていた食事はまずまず満足できる内容である。向かいに座った「東京からきて今日礼文岳に登ったが、腰を痛めたので、明日、利尻には登れないと思う。」と言う40代の男性と山談義をしながら、ビールを飲み、夕食をとる。

 初めは、下から登るつもりでいたが、民宿で「5時半でよかったら、3合目の登山口まで送りますよ。」との思わぬ申し出に感謝し、部屋に戻り、ビールを飲み、9時ごろに就寝。

  興奮してか、疲れているにも拘らず、夜中2時ごろに目が覚め、寝直しもできず、夜明けを待つ。4時すぎに外に出てみる。天候は薄曇りになっていたが、雨の心配はなさそう。フロントのカウンターの上にあるお願いしておいたおにぎりをリュックに入れ、5時半、用意して玄関で待つと、息子さんが眠そうな目を擦りながら、「さあ、行きましょう。」と車に乗り込む。どうやら、私一人らしい。申し訳ない気持ちで送っていただく。結構歩いている人もいる。

 3合目登山口から歩き始める。まもなく楽しみにしていた日本銘水百選に選ばれている「甘露泉」に到着。15名くらいのグループが登り始めようとしている。その人達がスタートするのを待って飲んでみる。トロッとした柔らかい感じがする。それをポリタンに汲んで出発。直ぐに前を歩いているグループを追い抜く。
長官山からの頂上部
  鬱蒼としたトドマツとエゾマツの大木の林の中の快適な道を登る。沓形からの帰りのバスの時刻までは余裕があるので、いつもよりゆったりとしたペースで歩く。お陰で息も切れず、休憩もとらず1時間ちょうどで6合目に到着。それでも次から次とかなりの人を追い越してしまう。上からは長官小屋に泊った人達が下りてくる。予想以上にたくさんの人達が登っていると感心する。いつのまにか周りの樹木はダケカンバとミヤマハンノキの繁みに変わっている。見下ろすと鴛泊の町や姫沼が見える。

 そこから、やや傾斜がきつくなり、ジグを切って登る。7合目からは岩の露出した尾根道となる。6合目からちょうど1時間で8合目の長官山に到着。今まで、長官山の陰で見えなかった鋭く聳える頂上部とその下の荒々しい崩壊地形や稜線上を進む道が見えてくる。迫力ある素晴らしい眺めである(3)。その景観を楽しんでいると、昨日のフェリーで一緒になった男性がもう下りてくる。昨日のうちに長官小屋まで登ったそうである。その男性に頂上をバックに写真を撮ってもらい、別れる。
ローソク岩
 新しく建て直された長官小屋を覗き、頂上を見上げながらの尾根道を進むと雨がぱらついてくる。風も強く、雨具の上を着込む。やがて、右側が火山灰と岩礫の急斜面となって落ち込む稜線上の道を急登となる。この辺からいろいろな花が現れるが、風が強く、道も険しくなり、のんびりと花を楽しむ余裕もあまりない。それでも珍しい花をカメラに収めながら進む。

  8合目からさらに1時間で9合目半の沓形コース分岐に到着。この辺りは、傾斜もきつく、赤茶けた細い軽石状の砂礫の上の登行で、ズルズル滑って歩きづらい。おまけに嫌でも目に入ってくる右側に展開する荒々しい崩壊地形は高所恐怖症の自分にとっては、鳥肌の立つ思いである。それでも、だんだん多くなってくる花々や左側の急斜面に広がる花畑がうれしい。

 そして10分後、最後の急斜面を詰め、立派な社が建つ頂上に到着。数人の人達が強い風を避けるように休んでいる。隣の南峰は行けそうにもないが、こちらより高く見えるので、地図で確かめたら、やはり2m高かった。そしてその横に垂直に聳えるローソク岩の大岩塔(4)を初め、予想以上に複雑で荒々しい頂上付近の地形、足元から切れ落ちるルンゼや断崖、岩塔や岩稜のすざましさ、その真下から海岸線まで続く大空沢などの眺めには、風の強いこともあり、恐ろしい感じさえする。
リシリリンドウ
 それらをカメラに収めると、ようやく周りの花々に目が向く余裕が出てくる。まず、ローソク岩の方へ下りてみる。いろいろな花の中にリシリリンドウ(5)とリシリオウギを見つける。強い風を避けるように反対側の花畑の斜面の大きな岩の上に陣取って休憩する。周りは凄い花の数と種類である。イブキトラノオの赤、リシリトウチソウの白のほかに、ハクサンボウフウ、ハクサンフウロ、アズマギク、エゾツツジ、シコタンハコベ、ハイオドギ
リ・・・・・(6)。
頂上下斜面の花畑
 そんな花々に囲まれて昼食をとるが、寒くてしょうがない。指先の感覚がなくなってくる。隣でお湯を沸かしてコーヒーを飲んでいる夫婦がいる。羨ましそうに見えたのであろうか、「どうですか。」と勧められるが、気持ちとは反対に「ありがとうございます。でも結構です。」と断る。こういう時には、ラーメンでも作って食べたら暖まるだろうにと思い、ガスを持って来なかったことを悔やむ。
「屹立する山塊」
浅地氏画 99.7.21

 花畑の中の踏み跡を辿っているうちに、谷向かいの斜面に黄色の花の群生が見える。多分そうだろうと思い、双眼鏡で覗くとやはりこの山だけのボタンキンバイである。近くで見られなくて残念である。また、登りの途中に咲いているというこの山特有のリシリヒナゲシも見落としたのも心残りである。

 時間的に余裕があるので、もっとゆっくりしたかったが、何しろ寒いし、登りで追い越した人数が次々とやって来ることを考えたら、落ち着かないので、45分後下山開始する。


 下山(沓形コース)へつづく

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