○濃いガスの中、幌尻岳を目指す

 夜中に雨が降る予報だったが、降らなかった。朝にテントから顔を出すと、十勝側の展望が広がっている。雨さえ降らなかったら決行する予定で、パンだけの朝食を終えると、いつの間にか日高側からの濃いガスにずっぽりと包まれている。

 雨が降ったらその時点で戻ろうと考えて、テントを畳み、リュックをデポする。カッパを着込んで食料と水とヘッデンだけをランニングザックに入れてスタート。

 残念ながら、視界は20mほど・・・しかし、一度歩いているコースなので、特に心配はない。

 下ってゆくと、一面キバナシャクナゲの群落に出くわす。ここは日当たりがいいのか全部が咲きそろっていた(1)。やがて、戸蔦別Bカール壁上の稜線となるが、東側は急な雪渓の頭部分を渡るように滑落に注意して進んでゆく(2)
やがて、赤褐色の橄欖岩の岩場が続く岩稜帯となる(3)この辺りは夏には特異な花が多いところだが、わずかにミネズオウとコメバツガザクラの花やタカネオミナエシの蕾が見られる程度である(4)

 銀色に輝く花があるので、何かと思ってよく見たら、ミネヤナギの葉にガスの水滴が付いて光っているのだった。中には穂を咲かせているのもあった(5)

  35分で、1881峰(通称・中戸蔦別岳)から六の沢への下り口に到着。ここから七つ沼カールの下り口までは2回歩いている。さらに登りに掛かる。

  前回は確か戸蔦別の頂上をショートカットできるコースがあったのだが、それを探しながら登っていくと、いつの間にか頂上に到着してしまった。ちょうど1時間であった(6)。本来であれば、頂上を彩るはずのミヤマキンバイが水滴を重たそうに抱えて下を向いていた(7)

 今度は向きを変えて、七つ沼カール壁の稜線を目指して下っていく。一瞬の晴れ間からそれが覗く(8)

 やがて、七つ沼カールへの北側の下り口へ到着。カール底はまだほとんど雪で覆われていた。このカールへの斜面も夏は一面にシナノキンバイで覆われてているところなのだが、まったくその気配すらなかった(9)ここまで、1時間半で距離的ちょうど半分である。幌尻まで3時間の予定が立つ。

 ここから先は、ハイマツと岩の稜線で、カール壁を越えると、急な登りになる。その先はいくつかのピークを越えていかなければならない辛いところである。


 次々とボヤッと現れるピークをモグラ叩きのように潰しながら進んでいく(10)3時間が近くなり、今度こそと思うと、まだ先にボヤッと次のピークが現れる。こんなことを何度も繰り返しながら、3時間05分でもちろん誰もいない2度目の頂上へ到着。額平コースから登った秋晴れの前回からすでに13年の月日が経過していた頂上標識は古くはなっていたがその時のままであったのがうれしい(11)

○横殴りの雨の中、北戸蔦岳へ戻り、下山

 腹ごしらえをして休んでいる内に雨が降ってきた。もともと風が強かったので、日高側からの横殴りの雨になる。幸い、それほど寒くはない。あとはひたすら来た道を戻るだけだ。風が避けられるところで休むようにして黙々と歩く。

 来たときより10分早い2時間55分でリュックの待つ北戸蔦別岳へ到着。ここまで来たら雨が止む。あとは惰性で下るだけだ。4時間を目標にして歩き始める。昨日は元気だったカムイコザクラも雨でしょぼんとした感じだった。急な下りは雨上がりなので、実に良く滑る。いくら気を付けていても、何度もズルッと滑って尻餅をつきそうになる。

 ちょうどトッタの泉で昼になり、残っている行動食と水で腹をきつくする。この辺りまで来ると、ガスも取れて、周りの景色が少しずつ見え、ときどき太陽が顔を出すようになる。デポしておいたアイゼンを撤収して再び下る。

 予定より10分オーバーの4時間10分でゴール。2日目の行動時間は10時間に及ぶハードなもので、結構ダメージの大きいゴールだった。しかし、癌摘出後3ヶ月半で、この様なハードスケジュールをこなせたことに大満足であった。

 長い林道を走り、日高町に戻り、まずは沙流川温泉に直行。じわっとお湯が疲れた体にしみ込み、疲れが抜けていくような感じがうれしい。その後、鍵を返して、登山道の状況や整備の必要な箇所をカメラで画像を見せながら報告する。直ぐに帰路に就き、どこかで夕食を摂って車中泊をしようと思ったが、明日中に帰ればいいのだから、無理することはない。道の駅に車を置いて向かいのラーメン屋へ・・・野菜チャーシュー味噌ラーメンとビールを注文。

 携帯からHYMLへの報告とブログの更新を終えても、まだ17:30だったが、横になっている内に眠ってしまった。目が覚めたら1:30だった。8時間も眠って二度寝できそうもないので、帰路に就く。
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