本倶登山(ポンクトサン)(1009m)   倶知安大和ルート  単独(山スキー)  03,4,29

以前から山名が気になっていた倶知安の山に「晴れのち雨」の予報を信じての早朝登山

28日 18:00 自宅発
    22:00 大和(国道393ゲート)
登山
地点
下山
5:23

6:12
6:53
7:27
7:57
車デポ地点(280m)
(林道歩き)
尾根取付地点(450m)
670ポコ東コル
859ポコ
頂 上 
9:03

8:48
8:39
8:32
8:20
[2:34]所要時間[0:43]

10:00 蘭越町営温泉「幽泉閣」
    (500円 入浴)
13:15 帰宅

GPSトラックログ(98kb)
(登りは赤色、下りは青色)
 この山名に対する興味がこの山(下山後、倶知安町瑞穂から撮影(1))を知ったきっかけである。尻別川の支流のポンクトサン川の源流の山ということで「本倶登山」の漢字を当てたものであろうが、同じようにサンに山の漢字を当ててそのまま山名になっている「恵山」がある。しかし、アイヌ語のサンは山という意味ではないのだが、山の名前になってしまったのがおかしい。アイヌ語で山はシリである。その場合、全部と言っていいほど「○○シリ山」とか「△△シリ岳」となっている。これは、厳密に言えば、「○○山山」「△△山岳」と言っているようなものである。また、登山という漢字を使用していることにも面白みを感じていた。この山に登ることを「本倶登山登山」というのだろうな・・・という子供のような思いつきである。
 
 なお、このポンクトサンの由来は、アイヌ語でポンは「小さい」という意味で、クトサンは@  ク・サン(岩棚を下る=円筒kutの処を流れ出している) A ク・サニ(泥土の濁り川)等の説があり、後者の説は倶知安町の町名発祥の一つと言われている。

 もう一つ、この山への興味はこの山の東側の本倶登山湿原附近に、北海道では初めての「揚水発電所」という聞きなれない発電所が建設中だということである。発電所の名前は「京極揚水発電所」であり、泊原発の3号機の夜間の余剰電力を利用して、地下水をくみ上げ、上池(地下プール?)から下池へ水を落として発電する水力発電所で、2006年に稼働予定らしい。計画通りに稼働すれば、道内最大の水力発電所になるらしい。貴重な湿原やすでに伐採されている国有林などの環境保全からの反対運動もあったようであるが、ほとんど知られていないのが実態ではなかろうか?

 そんな興味から夏道のないこの山に登ってみたいと思っていたが、登山記録を目にしたこともないし、登ったという話を聞いたことがない山であった。検索を入れたら、ようやく国際農機の会社のHPの中の「北海道の山」のページにそのルートが分かる記録を見つけることができた。今回は、それを参考に、距離はあるが、急な尾根や登り返しもない緩やかな登りが続くであろうこのルートにした。しかも、斜度があまりないので、真冬はラッセルが深いのと、帰りの滑りが楽しめないであろうと考え、この残雪期をねらっていた。

 当日の天気予報が「晴れのち雨」である。早朝登山が可能と考え、前日の退勤後に家を出て、ポンクトサン二号川沿いの林道入り口のある倶知安町字大和まで走る。そこまでの道路が、なんと赤井川村の轟との間が寸断されたままの国道393号線である。その国道を走っていくと、冬の間の除雪最終地点のところに開いたままのゲートがあり、その先は舗装が切れている。そこから右に続くポンクトサン二号川沿いの真っ暗な林道にも入ってみるが、予想に反して、わずか500mほどの端のところから雪で覆われていた。さすが豪雪地帯の標高280地点である。その近くで車中泊して朝を迎える。

 上空は晴れているのだが、朝靄のようなガスの朝を迎える。まず、林道に入ってすぐ左側の地図上にもある温泉マークのところに建っている屋根の潰れた廃屋に入ってみる。男湯と女湯と書かれたドアがあり、中に入ってみると、3人くらいは入れる湯船に30度くらいの温い温泉がこんこんと流れ出ている。夏なら入れるがそれ以外は温すぎるので、潰れたのであろうか?(2)

 「晴れのち雨」の天気予報の読みから、5時前には出発したいものと思っていたが、もたもたして5時過ぎになってしまった。端の手前に車をデポして、長い林道歩きを覚悟して、まだ見ぬ頂上を目指してスタートする。この林道はスノーモービルのルートらしく、古いトレースが残っている。歩くスキー状態で50分ほど林道歩きである。後半は一帯がやけに大木のないはげ山状態が広がり、伐採後なのであろうか、大規模な植林がなされているらしい看板があちこちに目立つ。

 やがて、コンタ300地点で林道から離れ、頂上へ繋がる緩い尾根に取り付く。この尾根も670ポコの下までは、灌木帯の間や整地された平坦な地形にトドマツの幼木が頭を出している状態である(3)。灌木のあちこちに赤いテープが目に付くようになる。後ろを振り返ると、羊蹄山が頂上までくっきりと端正な姿を見せている。この頂上が見えている内は雨の心配は内であろう。後ろから見守られている感じがうれしい(4)。ニセコ連峰はガスった感じではっきりと見えない。

 ピーク附近に黒い岩を見せている670ポコの斜面からは普通の樹林帯となっている。そのピークをかわして右側のコルをねらう。スノーモービルの道ができている感じで、結果的にその多くは頂上まで続いていた。次の地図上の736m地点の手前は小さな沢が複雑に入り組んでいて、上に繋がる細い小さな尾根を選んで歩く。次の835ポコは広い尾根の一番高いといったところである。この辺りはダケカンバ林であるが、割とすっきりと伸びた端正な木ばかりで気持ちのよい林である(5)。

 突然、奇異な音が聞こえてきて、それがだんだん大きくなってくる。スノーモービルではないし・・・と不思議がっていると、突然オレンジ色の雪上車が姿を現してびっくりする。そのまま頂上の方へ向かって行ったが、何の目的で入ってきているのか予想も付かなかったが、頂上へ着いて初めてその行き先が分かることになる(6)。

 尾根に取り付いてから、ずっと直線的に頂上ピークをねらって登ってきたが、少しカーブするように925ポコを経由して、頂上の東側のコルをねらう。スノーモービルのトレースもみな同じるーとをねらっているようである(7)。この頂上稜線に乗るところがこのコースの一番急な登りかも知れない。全く木の生えていない頂上稜線を東側から頂上に向かう(8)。雪上車は頂上へは行かないで、その稜線を越えて北側へと向かって下っていた。

 ちょうど歩き出してから、2時間半で、大した汗もかかなかったせいか、持ってきたスポドリも一度も飲まず、何も食べずの頂上着である。頂上は非常に風が強くなっており、羊蹄山やニセコ連峰は頂上部分を薄い雲で覆われてきており、上空は高曇り状態で、余市岳や無意根山〜中岳〜喜茂別岳なども見えるが、やや霞んだ感じである(9)。ふと、東側の地図上の本倶登山湿原の方を見ると、湿原の向こうの緩やかな高原状の全く木の生えていない広い部分が見える。その下に建物がいくつか建っており、湿原部分にもなにやら黄色いテントのようなものが建っている。どうやら、そこが「京極揚水発電所」の上部調整ダムプールの工事現場のようである(10)。

 のども渇いていなし、腹も減っていないので、口に何も入れず、20分ほど休んでそのまま下山開始である。下りは速いし、変化に乏しい地形なので、少しし方向を間違っても下りすぎてしまう。ときどきGPSのトラックログを確かめながら下る。林道までは、緩いなりに斜度があるので、結構ターンを楽しんだりすることができるが、林道に出たら、特に後半は斜度がほとんど無いので、歩くスキー状態でストックに頼るので疲れてしまう。車が見えた頃に、雨がポツポツ落ちてきた。なんとタイミングのいい天候であろう。

 緊張場面やきつい登りもない山スキー登山の初級者にはお誂え向きのルートかも知れない。雪上車以外誰とも会わない静かな山行であった。あと2週間もすれば、車でずっと入れて、林道歩きが必要なくなるかも知れずもっと楽に登れるかも知れない。また、反対側の双葉ダムの方から入って、今の「京極揚水発電所」の工事現場までの道路を通してもらえれば、もっと簡単に登れるかも知れない。


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