ピヤシリ山(987m)  
<ピヤシリ川〜西尾根ルート> 単独 山スキー  15,2,4
A13,6,29「観光道路コース」  @98.6,28「下川コース」
全道的な好天予報の中、思いつきではるか道北の極寒の山へ向かい、期待通りの展望と滑りを楽しんだ

6:00 名寄道の駅発
登山
地 点
下山
 7:00
 8:10
 9:40
11:20
ピアシリスキー場下
西尾根取り付き(311m)
31番標識(640m)
頂 上
13:25
13:00
12:30
12:10
[4:20]
所要時間
[1:15]

13:40 なよろ温泉(入浴)
18:00 恵庭道の駅(泊)
 名寄市街地の北東部に位置する山である。山名の由来は「岩のある山の意」らしい。下から見る限り、岩は見えないのっぺりとした山だが、登ってみると頂上の手前と東側には大岩がある。

 この山に初めて登ったのは98年6月、下川コースからだったが、天候に恵まれず、展望も登った山の姿も目にすることはできなかった。その時以来、いずれは名寄側の観光道路からでも良いので、頂上からの展望とピヤシリ山の姿を見るために再訪しようと思っていた。しかし、それが叶ったのは15年後だった。

 その時に、次は冬山と決めていた。自分も著書の一人である「北海道雪山ガイド」に載っている一番北の山である。しかも、執筆者は、過去に知床岳、神威岳〜ソエマツ岳縦走、ピリカヌプリほかの難しい山にお付き合いしていただいている盟友・名寄のOさんである。敬意を表して何としても登らねばならない山だった。

 昨年も2/23の「湧別原野オホーツククロカン」で85km走った後、名寄の道の駅に泊ったが、天候が悪くて諦めている。今回、2/1の「札幌国際スキーマラソン大会」に参加し、2日後に十勝晴れの北日高の剣山に登った。翌日の天気予報を見たら、名寄の方も好天予報だった。まったくの思いつきで、さらに250km北上して、この山を目指した。

 家を出るときは全く考えていなかった山なので、詳しい情報も地図も用意してきていない。「雪山ガイド」で読んだ記憶のピヤシリ川沿いを源頭付近まで詰めること以外なにも情報はない。「地図入りのGPSもあることだし、行けば何とかなるだろう」と考えた。

○極寒の中、観光道路からピヤシリ川沿いの林道を進む

昨年同様名寄の道の駅で-22℃の寒い朝を迎えた。放射冷却現象なので天候は心配ないようだ。冬の登山口となっているピヤシリスキー場を目指す。
 
 
 到着したら-27℃まで下がっていた。人生初体験の気温だ(2)条件的にはサンピラーが出現しても良さそうな天候だ。日の出前に、割りと多く見られるというスキー場に着いたが、それらしい雰囲気はなし。いつもより中に上下1枚ずつ多く着込んだ。しかし、まったく風がないのでそれほど寒さは感じない。手の冷たさは今シーズンから重宝している「充電式ほっかほっかインナー手袋」のお陰でまったく心配ないのがうれしい。

 
 7:00、なよろ温泉の駐車場に車を置いて、山スキーを履く。スキー場の下から朝焼け雲の下に頂上を見せるピヤシリ山を目指してスタート(1)
 スノーモービルランドになっている観光道路を30分ほど進む。右へ曲がる観光道路から離れて、右岸に続く林道を直進する(3)期待したトレースはない。20cmほどのラッセルをして進む。
  30分ほど進むと林道がなくなる。その先で両岸が崖状になり、川幅が狭くなる。川沿いにこだわれば、その中を進まなければならない

○西尾根へ取り付く

。様子見で左岸へ渡りその先の急斜面を登ってみる。その地点が地図上の692ポコから派生する西尾根の末端の311地点だった。そこから再び沢沿いに下って川岸をトラバースしながら進むか、遠回りではあるが、西尾根を登るか悩んだ。結局、源頭部から先のルートに自信がないので、地形の読みやすい西尾根を登って、692ポコの北側からコル部分の観光道路へ合流するルートを狙うことにした。


 ラッセルをしながら、西尾根をジグを大きな切りながら登って行く。帰りには快適なパウダー滑降を楽しめそうな疎林の尾根である(4)
 c400を越えると、斜度が緩み、広い尾根となる(5)


 692ポコの北側のトラバース地点から目指すピヤシリ山が見える。まだまだ遠く感じる。少し下って、コル部分の観光道路を狙う(6)

○観光道路を辿り、頂上へ

 9:40、観光道路へ合流。そこには、「ピヤシリ山登山道31」の道路標識が立っていた。期待していたスノーモービルのトレースは古いものしかなく、ほぼラッセル状態である(7)
 あとはこの道路を辿ってすすむことになる。GPSで測ったら、直線距離で3km以上はある。「帰りは速いので、昼までに着けば良い」と思いながら進む。
 

 1時間ほど進むと、キタキツネ?の足跡が続く道の先に頂上稜線と避難小屋がが見えてくる(8)。さらに、35分後、教会のようにも見える雪氷に覆われた避難小屋に到着。ここまで来るともうすぐだ(9)


 一面にスノーモンスターに覆われた頂上斜面の先に、やはり氷雪で覆われた頂上標識が見える。いかにも極寒の道北の山らしい眺めだ(10)

○360度の大展望と感動の出会いの頂上


 11:20、4時間20分を要して頂上に到着。氷雪で覆われた頂上標識の東側に、ここより高い最高峰の991ピークとそこまでのスノーモンスターに覆われた尾根が広がる(11)
 頂上標識の反対側に回ってみたら、氷雪が付いていなかった。そこで、まずは、三脚を立てて記念撮影(12)

 それにしても、風もほとんどなく、−10℃ほどだが、陽光が暖かく感じるほどだった。これ以上の天候はないと思われるような快晴の下に360度の大展望が広がる。思いつきながら、函館から遠く離れたこの地までやってきた苦労が報われる。


西側には、名寄盆地と名寄市街地、その奥に衝立のように連なるピッシリ山を最高峰とした天塩山地の山並み(13)。


南側には、天塩岳〜表大雪〜十勝連峰の連なりも(14)


東側にはオホーツク海が見え、流氷帯も見えている(15)これらのほかに北側の函岳や低い道北の山並みが見える。


 一通り写真を撮り終えたところへ、一人の男性が登ってくる。札幌の方で、私より30分後にスタートして、ルートの自信がないので12kmある観光道路をずっと辿ってきたとのこと(16)

 さらに、いかにもベテランという赤づくめの出で立ちの私より明らかに年配の男性が到着。「傘寿を迎えた記念に登って来たけど沢の中は雪が深かった」と涼しげに話す。しかも、私が逃げた西尾根でなく、沢ルートにこだわってラッセルしながら登ってきたとのこと。
 「80歳ですか、お元気ですね〜。私もあやかって、あと10年は頑張らなくては・・・」と敬意と感動を込めてご挨拶。士別の方で、何度もこの山に登っている大ベテランだった。かねがねいつも80歳までは登っていたいと思っていただけに、やればできる自信が湧いた。

 札幌の男性に聞いたら道新をとっているとのことだったので、「ほっかいどう山楽紀行」のことを話したら、「えっ!坂口さんですか。いつも楽しみに読ませていただいています。こんところでお会いできるなんて・・・。一枚記念に撮らせてください」とカメラを向けられた。
 こちらも、「平日なので、誰も登って来る人はいないだろうと思っていたのに、3人ものにぎやかな山になるとは思いませんでした」とお二人を入れた頂上写真を撮らせていただいた(17)

○西尾根でパウダー滑降を楽しみ、登りの1/4の時間で下山

 避難小屋の陰で昼食を摂るお二人に別れを告げて先に下山を開始。観光道路も思ったより良く滑り、わずか20分で31番標識の地点に到着。
 その先で、シールを着けて登り返すか、シールを着けないで等高線上を辿るか悩んだが、結局ソールを着けて、来た時のトレースを距離にして500mほど登り返した。一番の理由は、標高差350mほどの西尾根のパウダー滑降を楽しみたいからだった。


 お陰で、川までの標高差350mの程よい深さのパウダー滑降を楽しむことができ、大満足だった(18,19)
 登りで4時間20分を要したところを約1/4のわずか1時間10分で、賑わっているピヤシリスキー場へ到着することができた。なよろ温泉で疲れを癒して、恵庭道の駅で車中泊して、翌日帰宅した。

○帰宅後のルート確認

 帰宅して「雪山ガイド」を見たら、400m付近の滝があるところまで川沿いに進み、そこから左側の左尾根を登り、38番標識の立つ林道分岐へ登るようになっていた。距離的には遠回りでああったが、下りは、自分が往復したルートになっていた。あながち間違いでもなかったということである。ただし、結果論だが、西尾根から31番標識の地点までは、帰りに登り返さなくても良いように630mの等高線上を進めばなお良かったと思われる。 


 
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