[97] ピヤシリ山(987m) [下川コース]  98,6,28(日) [天候/ガス]


展望のないガスの中、小さな変化を探しながらのピークハンター
               
4:15  名寄駅前発    
4:50  下川営林署(入林許可証)
    (林道を間違いうろうろ)  
6:20  登山口着     
登山 地点下山
6:30
7:05
8:00
登山口 
ピヤシリ湿原
頂 上   
9:20
8:55
8:05
[1:30] 所要時間 [1:15]
10:00  五味温泉(入浴) 
15:00  札幌着 
21:30  帰宅    

 遠い道北にあり、頂上まで名寄から観光道路が引かれ、スキー場で有名なこの山も、『北海道百名山』に選ばれていなければ、おそらく登ることのなかった山であろう。しかし、下川町からの自然一杯の登山道があることが分かり、礼文岳の帰りに、『北海道百名山』の97山目の山として寄ることにする。単なるピークハンターだけの山行に終わらせないためにも、晴れてくれることを祈って、名寄駅前の駐車場で朝を迎える。

 簡単な山でもあり、初めから雨の中でも決行するつもりだっただけに、雨も上がり、上空が晴れそうな気配に迷わずに登山口のある下川町へ向かう。あらかじめ電話で聞いておいた下川営林署へ寄り、入林届けを済ます。
 登山口の看板
 国道から目印となるサンル牧場入口から入ったはいいものの、登山口へ続く林道の分岐を見落し、まっすぐ別の林道を15kmも進んでしまいウロウロする。間違いに気付いて国道まで戻り、地図をゆっくり検討して、登山口への林道を確認する。

 ガイドブックで、40分程の林道歩きを覚悟していた林道終点ゲートには鍵が掛けられておらず、登山口まで車で入ることができ、迷って損をした時間は取り戻すことができた。 「ピヤシリ自然休養林」の看板があり、そこが登山口と分かる(1)が、その先にも林道は続いている。上空は晴れそうな気配であるが、周りは濃いガスに包まれたままである。ウグイスの声に迎えられて、雨上がりの道対策として、雨具の下を着け、ダブルストックでスタートする。もちろん、まだ誰も入っている気配はない。
 御車の滝
 林道をそのまま進むと、すぐにカーブし、その外側の小さな沢地形のところに登山道の入り口を見付け、その踏み跡に入って行く。展望の期待できない今日の天候でのこのコースの楽しみは、「御車ノ滝」「ピヤシリ湿原」「ヌカライネップの岩」だけであろう。初めは沢ぞいの道を進み、やがて急な尾根道となる。                             
 
 登山口から30分で、その急登の途中でゴーゴーと滝の音がしてくる。最初の楽しみであった「御車ノ滝」が眺められる地点に到着(2)。結構な高さを流れ落ちる感じの涼しげな滝である。一息ついて、周りを眺めるが、上空だけは薄日が漏れているが、風が強く、ダケカンバなどの木々から雨滴がばらばらと落ちてくる。展望はまったくなし。 
ピヤシリ湿原
 その地点から続くこのコース最大の急斜面を登り切ると、平坦な道になり、「ピヤシリ湿原」へと入って行く(3)。どこの高層湿原も似た感じであるが、やはりこの山でも最大のチャームポイントであるに違いない。トドマツが林立し、綿毛を着けたばかりのワタスゲ、慎ましやかなツマトリソウ、まだ蕾のままのエゾカンゾウのほか、チシマキンバイ、ミヤマキンポウゲなどの花が咲き、大きな水芭蕉の葉に囲まれた小さな沼。その中に続く踏み跡を靴を濡らしながら進む。
 ヌカライネップの岩
 湿原を抜けると、再び急な登りとなる。その急登を登り切ると、目の前にライオンの顔のようにも見える「ヌカライネップの岩」が迫ってくる(4)。その根元を巻いてまもなく、周りがお花畑の様相を呈した、岩場の下に出る。その場所だけはなぜか風もなく、上空から薄日が差していて、別世界でのようである。一面ハクサンボウフウの白い花の中に、青いチシマフウロの花、エゾカンゾウの蕾、これからは、一面黄色の花畑になるであろうと思われるくらいのハイオドギリの蕾・・・。
 
 その岩場からは、傾斜も緩み、展望がないのでよく分からないが、なだらかなササとダケカンバだけの稜線の道となる。展望は相変わらずまったくなし。きれいに刈り払われた笹藪の中の道の真ん中にダケカンバが一本立っているのが印象的である。まもなく、道はこの辺りから下って行くような気がする。変だなと思って地図を確かめると、このコースの最高地点の991mであり、頂上は987mである。納得しながら、広いなだらかなハイマツ帯の中を下り気味に進んで行く。頭上は相変わらずのガスの吹雪状態である。                             
 
 最後はやや登りとなり、ハイマツのトンネルの向こうに、小高い丘のような草地が目に飛び込んでくる。トンネルを抜けると、そこが頂上であった(5)。 立派な頂上標識が立ち、小さな岩場が頂上の雰囲気を醸し出しているが、強い北風にガスが流れ、時折覗くなだらかな斜面に一面濃い緑のハイマツ帯が覗くほか、展望はまったくない。方位を示す展望案内板が設置されてあるが、今日は、まったくの役立たずである。
 頂上の様子
 風を遮るものもなく、展望もなく、写真を撮っただけで下山を開始する。下川中学校のふるさと学習で作成した様々な温かみのある標識を楽しみながら下山を続ける。 帰りもやはりヌカライネップの岩の手前の岩場の根元の花畑状態のところだけが風が遮られて、陽光がさし暖かい。ここで初めて腰を下ろし、花を眺めながら、ゆっくり休憩する。
 
 その後、ピヤシリ湿原の上と下の急な下りで、一度ずつ滑って転げてしまい、雨具の下をすっかり泥だらけにしてしまう。湿原を抜けたところで、子供連れの5人グループが登ってくるのと擦れ違う。こんな天候の中、この山に登るのは自分だけだろうと思っていただけに、うれしかった。
 
 とうとう、下山しても、自分の登った山の形さえ分からないまま、登山口を後にする。途中、下川町の五味温泉に寄って、2日間の汗を流す。この温泉、珍しい天然炭酸泉で、飲んでみると、まさに甘みのないサイダーそのものである。
 
 下川町を後にして、何度も山の方向を振り返っても、雲に厚く覆われたままである。函館から 500km以上も離れたこのピヤシリ山を目にし、あの山に登ったのだと確認できるのはいつのことであろうか。ちなみにこれまで登った山で、その山を目にしたことがないのはこの山が初めてである。                    


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