乙部岳(1016.5m)B九郎岳(969.7m)    
[登り〜尾根コース、下り〜沢コース]  単独 06,6,03
96,5,26の沢コース往復へ
尾根コースを登り、10年ぶりの乙部岳を越えて、鍋岳を目指したが、強烈なネマガリ藪に断念して、帰りに九郎岳に寄って沢コースを下山
3:00 自宅発
4:40 尾根コース登山口
登山
地点
下山
5:00
---
5:40
---
6:35
7:00
尾根コース登山口
 沢コース登山口
連絡路分岐
九郎岳
2コース分岐
頂 上
11:15
11:10
10:35
9:25
8:50
8:25
[2:00]<所要時間>[2:50]
7:10
7:35
頂 上
管理道路813コブ
8:15
7:50
厚沢部町清水〜木間内経由
13:00 北斗市・しんわの湯(入浴)
14:00 帰宅

 この乙部岳は乙部町と厚沢部町の境界線上に聳える1000m超峰である。乙部町側は姫川が深い谷を形成し、厚沢部町側は急な崖となっている山塊である。鍋岳はその北側に吊り尾根で繋がっている山で、九郎岳は同じ稜線上の南端のピークである(1)(厚沢部町清水〜木間内間で撮影)。

 乙部の語源は、オ・トー・ペ(川口に沼のある川)である。しかし、乙部川という名前の川はなく、姫川がその川であろうか?九郎岳の由来は、乙部岳山中に九郎判官源義経が開いたと伝えられる山岳信仰の九郎嶽社が存在したことに因り、もともと乙部岳を九郎岳と呼んだらしい。姫川の由来は、義経に逢えないことを悲しんで静御前が身を投げた川との伝説に基づく。姫待峠の由来も義経が静御前に逢えないで越した峠ということである。

 数日前に、誰も登れないような道南の秘峰狙いのSHOさんから「6/4に乙部岳経由で鍋岳を計画していますが、ご一緒しませんか?」との誘いを受ける。しかし、当日は都合が悪いので、前日偵察登山を兼ねて単独で10年ぶりの乙部岳再訪となる。

  10年前はまだ沢コースしかなく、今回はその後にできた尾根コースから登り、帰りは沢コースを下りる計画で出かける。鍋岳の藪漕ぎ覚悟で早朝に家を出て登山口を目指す。沢コース登山口の500mほど奥にトイレと駐車場が完備された尾根コース登山口がある。

○まずは、初めての尾根コースを辿る

 山中で発見されたという九郎嶽社の鳥居を潜って、5時ちょうどに出発する(2)沢コースは後半に急登が続くが、こちらはいきなり前半に急登が続く。道端にはチゴユリの群生(3)、ユキザサ(4)、フギレキスミレの群生(5)などが目に付く。

 一気に標高差400mほどの急登を続けると、600m付近で斜度が緩み、613コブに到着する。ここに沢コースとの連絡路分岐がある。この連絡路の途中に九郎嶽社と奇岩があるという看板が立っている。

 少し下って、再び周りに岩が目立つ急登が続き、平坦なところへ出る。右手前方に迫力ある断崖とその右側に沢コースを登り切って稜線に出る付近のピークが見えてくる(6)

 そこから、950m付近までは、途中ロープの張られた痩せ尾根もあるが、おおむね緩やかな登りが続く。左前方に雨量観測レーダーの立つ頂上が見えるようになる(7)

 左手にまだ残雪が目立つ遊楽部岳を眺めながら、最後の急登を登り切ると稜線上へ出て、沢コースからの登山道と合流する。
 
 目指す頂上は、帰りの登り返しがきつそうな下りを越えた先に見える。その右手に目指す鍋岳も覗いている(8)稜線上の道端にはタカネザクラ(9)とサクラソウ(10)すでにピークを過ぎたカタクリが目に付く。

 2時間ちょうど、まだ7時という早い時刻であるが、誰もいない一等三角点の頂上へ到着する。沢コースよりはかなり近道のようである。頂上標識は10年前ものとは変えられているようである(11)

 快晴で、しかも、霞もなく、かなり遠くまで360度の展望が広がっている。東側には駒ヶ岳と横津岳が(12)、北西側には小鉾岳の後ろに砂蘭部岳、その左手奥にはまだ白い狩場山塊も見えている(13)日本海には奥尻島が、南には、大千軒岳や下北半島も見えている。噴火湾は海霧に覆われているようで、羊蹄山はその上に見えている。 


○鍋岳を目指すが・・・
 しかし、今日は、ここがゴールではない。頂上の少し北側の残雪の上から目指す鍋岳を見る。尾根には期待していた残雪は全くない。しかも、尾根上の樹木の下や、頂上斜面は一面ネマガリダケ(チシマザサ)の海のようである(14)まだ時間は十分ある。その尾根が繋がる813コブを目指して、くねくねと続く舗装されたレーダーの管理道路を下っていく。

 25分ほどで813コブの下に到着する。法面の端から813コブを目がけて藪を漕ぐ。ここは、背丈ほどの細いクマザサと灌木であっさりと登り切る。しかし、そこから先が背丈の倍ほどもある隙間もないほどの濃密なネマガリダケである。潜り込んでみたが、前が全然見えない。掻き分けるのも容易でなく、足で踏みつけても戻される・・・眼鏡や帽子が飛ぶ・・・20mほど進むのに10分も掛かった。この調子で1.2kmは、時間がいくらあったとしても、気力と体力も持たない。敢えなくギブアップ!脱出して、再び管理道路に戻る。ジャージのポケットに入れておいた地図も防虫ハッカ湯もなくなっていた。
 
 1時間少しで、標高差200mほどの頂上戻り、果てしなく広がる展望を楽しみ、10分後に下山を開始する。

○九郎岳に寄り、沢コースを下る
 尾根コースと沢コースの分岐の雪の残る岩場でまだ開き切っていない太いギョウジャニンニクの群生を見つけて山菜採りモード突入。15分ほど道草をして、稜線上の沢コースを進み、稜線から下りに入る地点から200mほど先にある九郎岳を目指す(15)

 道端にリュックを置き、カメラだけをポケットに入れて藪に突入する。背丈ほどのクマザサと灌木を掻き分けて10分ほどで頂上に到着。笹を掻き分けて三角点を探すがなかなか見つからない。それもそのはず、すっぽり苔に覆われた石だと思ったのがそれであった。苔を剥がしてカメラに納める。三等三角点であった(16)

 行きと同じ10分で戻り、急な下りに入る。途中、このコースのシンボルでもある下から見上げるとロウソク岩のような奇岩のそばを通る(17)。この周辺にはシラネアオイの群生が周りに点在する(18)沢に下りるまでずっとジグを切る標高差450mほどの辛い下りが続く。

 尾根から沢に下りて、沢沿いの道を下っていくと、尾根コースの連絡路分岐がある。尾根コース上の分岐とは標高差が100mもある。そこにも九郎嶽社と奇岩の案内板があるが、距離が書いていないし、また登って行くのが億劫でそのまま下りを続ける。その直ぐ下に行者洞がある(19)

 何度も渡渉を繰り返し、頭上から被さるように見える尾根コース下の断崖を見上げ(20)、足下に群生するタチカメバソウ(21)を愛でながら沢コース登山口を目指す。

 最後は杉林を抜け、登山口に出る。入山届けを見ると、昨日に東京の2人が、一昨日には中標津の人が登っていたようである。結構遠来の登山者にも人気のある山のようである。

 尾根コースができて、雰囲気の違う2コースを利用しての一周登山が楽しめるようになったのはうれしいことである。ここは、登りに尾根コース、下りに沢コースを利用した方が楽なようである。毎年登山道整備をしている乙部登山愛好会に感謝して5分ほど林道を歩くと、車を置いてある尾根コースの登山口に到着した。駐車場には函館ナンバーの車が1台駐まっていた。

 下山後、東側からこの山を眺めたくて、厚沢部から落部へ抜ける道を走る。途中から国道227号線の鶉ダムの手前に抜ける道があるので、その道を走ると、断念した鍋岳も合わせて初めてその全貌を目にできる地点があった。それが、このページの最初の写真である。


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