オプタテシケ山(2013m)  トノカリ林道ルート  単独・山スキー  04,5,09
94,7,24の白金温泉から日帰りの「オプタテシケ山」

昨年、下ホロカメットクの帰りに眺めて以来、今シーズンの山スキー納めの山と決めていた・・・懐かしい再会や新しい出会い、2013mの頂上からの滑降を楽しむ。

3:00 音更(別宅)発
4:30 トノカリ林道除雪最終地点(入口から800m)
登山
地点
下山
4:55
6:20
8:20
----
9:50
除雪最終地点(530m)
林道終点(825m)
1380m地点
(下山・45分休憩)
頂 上(2013m)
12:45
11:45
11:30
10:45
10:30
[4:55]所要時間(休憩除く)[1:30]

13:30 トムラウシ温泉・東大雪荘(入浴)
16:00 帰宅

十勝連峰の北端に位置するこの山の名前の由来はアイヌ語で (槍がそこで上にそれた)の意で、嫉妬に狂った山が槍を投げつけたがそれてしまった山というアイヌ神話に由来しているとのことである。

  美瑛側から見た北西面は、その先が頂上である中央稜を挟んで深い谷に抉られて迫力があるが、反対側の新得側から眺める南東面は、頂上が西端に位置し、やはり深い谷に抉られていて迫力の点では北西面に劣るが、やはり迫力のある山容である(1)。

 この山に初めて登ったのは、10年前の7月である。そのときは夏道を白金温泉から日帰りでピストンし、下山途中に美瑛富士も踏んでいる。積雪期や残雪期は、今回利用したトノカリ林道(トムラウシ温泉へ向かう道路の10kmほど手前から入るシートカチ林道4.5km地点に分岐あり)から、日帰りで直接頂上を目指す今回のルートがよく使われているようである。

 今回の山行は、昨春、シートカチ林道から下ホロカメットク山と境山に登り、その下山後、トノカリ林道の偵察に入った際、林道の先に聳えるこの山とその斜面を見て、「来年の今頃にこの山に登り、山スキー納めにしよう」と決めていたことによるものである。

 昨年は、4kmほども除雪されていたトノカリ林道であるが、今年は800mしか除雪されていないとのことである。長い林道歩きを覚悟して、3時に音更を出て、トノカリ林道の除雪最終地点を目指す。すでに、前日に入って夜を明かしたと思われる車が7台ほどもあり、多くの人が出発の準備をしている。予想以上の人数にこの山の、この時期の山スキー登山人気の高さが窺われる。車を止めた隣の車は、なんとHYML仲間で、これまでニセコなどで3度ほどご一緒したことのある帯広労山のSaさん一行の車であった。その中のO嬢とも懐かしい再会を喜び合い、出発の準備をする。地形図で見ても、実際に眺めても頂上は近くなるに連れて斜度がかなり急になるので、雪が凍っていれば頂上までのスキーは難しいと考え、念のためにピッケルを持参する。

 5時少し前、一番先にスタートしたSaさん一行に少し遅れてこちらも出発するが、直ぐに合流し、同行の形となる。ところどころ路面が出ている林道を15分ほどスキーを担いで歩くが、雪がまだ凍っているので非常に歩きやすい。その先は、昨年は4km地点まで車で入れた長い林道をスキーで進む。林道の先にこれから目指す頂上がときどき姿を見せる。頂上直下の急斜面に、果たしてスキーで行き着けるであろうかと不安になるも、「雪が溶けていれば大丈夫ですよ。」と言うSaさんの言葉に、今日の気温の高さであれば何とかなるであろうと期待は膨らむ。

 登山口となった除雪最終地点からさらに5.5kmほどの林道を1時間25分も掛けて歩き、ようやく林道終点に到着である。そこには北海道開発局の雨量観測所が設置されている。そこで、最初の休憩となるが、目の前の林の上には、真ん中が深くえぐれた谷と両側の稜線が端正に延びるオプタテシケが姿を見せるいいロケーションである(2)。その先の林の中には、昨日の内に入って泊まったと思われるテントがひと張り見える。

 いよいよ、トドマツとエゾマツの林の中を進む。あちこちに赤いテープがぶら下がっている。1000m附近までは沢の右岸を進むが、この冬に倒れたと思われる倒木が異常に多いのにびっくりする。枯れ木なら納得できるが、トドマツの大木が根元から、あるいは根こそぎ倒れているのである。今日の天候からは予想もつかないようなかなりの強風が吹き抜けるところなのであろうか?

 やがて、1200m附近になると、濃い林を抜けてエゾマツだけの疎林帯となってくる(3)。その上の平らなところで、2度目の休憩となる。その一段上のダケカンバ林からの上はほとんど樹木の生えていない帰りの滑りのおいしそうなデルタ状の斜面が斜度を増して頂上まで続いている。

 そこの休憩地点で、リーダーのSaさんの腰の調子が思わしくないことや頂上まで見通しが利くことなどから、「それぞれ自分のペースで登ってください」ということになる。その中でもっとも健脚の同じ道南の熊石町出身というNaさんの後ろについて登っていく。二人と後ろのメンバーとの間がどんどん開いていく。それにしても、もう35年ほどの登山歴という50歳後半のNaさんは、これまでは自分より速く登る人にあまり出会ったことのない自分であるが、後を付いていくだけで精一杯の健脚振りである。

 1300mを越えると遮るものが無くなり、後ろにはやや霞みがちなニペソツ山を初めとする東大雪の山々が、右手にはトムラウシ山(4)が、左手には昨年登った端正な円錐形の下ホロカメットク山と境山(5)や荒々しい稜線を巡らした美瑛岳が見えるようになる。十勝岳の頂上は美瑛岳の陰になってまだ見えない。

 1400mを越えると、斜度は急激に増し、大きくジグを切って進むことになる。下界の5月3,4日の雨が、ここでは雪であったらしく、真っ白な斜面で、雪解けの具合も程良く、凍っていたら滑落の危険性のある斜度であるが、シールがしっかりと利くのがうれしい。Naさんに煽られてどんどん登っていく。「羊蹄山の斜面とどちらが急であろうか?」と思いながら登っていったが、羊蹄ほどではないようである。下を見下ろすと、次々と登ってくる人の姿とその下に頂上稜線まで深く抉って突き上げる沢地形が見える(6)。

 頂上に近づくと斜度も少し増し、幅も狭くなってくる。風も強くなってきたので、ヤッケを着て、念のためにスキーアイゼンも装着する。その間もNaさんは休むことなく黙々と登っていく。

 2分ほど先に登頂したNaさんに迎えられて、予想しより速い5時間弱での頂上到着である。頂上標識が頭だけを出している頂上は、山容から予想していたとおり、反対側も足下から切れ落ち、高所恐怖症の自分は腰を伸ばして立てないくらい狭くてどこにいても腰がむずむずしてどうも落ち着かない(7)。

 眺望は高曇りのせいで遠くの方は霞んでよく見えないが、西側の下ホロ〜十勝岳の頭〜美瑛岳〜美瑛富士〜石垣山〜ベベツ岳が(8)、反対の東側にはトムラウシまでのいずれ繋いでみたいツリガネ山やコスマヌプリ、その奥の表大雪の山々が霞んで微かに見えている(9)。

 

 
  30分ほどして、次に同じ仲間の女性が到着する。下を見ても、Saさんを初めとする残りの3人が登ってくる気配が見えない。風も強く、体も冷えてきたので、Naさんと二人で、彼等を探しながら滑り降りることにする。雪どけが進み、横滑りは不可能な重く深い雪である。急なところはジャンプターンで切り抜け、ある程度スピードが付くとスムーズなターンができるが斜度の割りにスピードは出ない。あとから登ってくる人に気の毒なのは、二人がターンするたびに、雪がバームクーヘン状になって転がり落ちていく。下から見上げると、一番おいしい斜面が雪崩のデブリ状のように見える。現に「あれはデブリでないですよね?」と聞いた人がいたくらいである。

 登ってくる人の顔を見ながら二人で3人の仲間を探しながら重い滑降を楽しむ。上を見上げると多くの人が登っているが(10)、全員確かめたはずなのに見当たらない。かといって、先に滑り降りた痕跡もない。とうとうデルタ下の1400mの下まで滑り下りてしまう。上を見上げてしばらくすると、上から見えなかったハイマツの下から立ち上がり、登り始めた3人の姿を発見する。スキーを脱いで立てかけ、それを背もたれにして長期戦の待機体制に入る。

 45分ほど待ったが、3人が頂上まで到着して、滑り降りてくるまでにはまだ1時間以上は掛かりそうである。Naさんの「彼等と同じ車でないし、もともと別行動なのですから、先に下りられてもいいですよ。」という言葉に甘えて、Saさんに申し訳なかったが、先に下山させてもらうことにして、Naさんと分かれれてさらにトレースを辿りながら滑降を続ける。

 斜度のある林道終点まではあっという間まであったが、そのあとの朝は凍っていて歩きやすかった林道であるが、雪解けが進んでいるだけに、その長さが余計に身にしみる。雪が切れている最後の15分くらいはスキーを担いでゴールである。その後、トムラウシ温泉に入って疲れを癒し、帰路に就く。


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