[2] 雄鉾岳 (999m) 2回目 1998,5,24(日)

  6年振りの再訪であるが、やはり、険しい変化に富んだルートに大満足
4:30 自宅発 
登山地 点下山
6:25
6:40
7:30
8:25
9:05
車止め
登山口
雄鉾沢出会い
崖 下
頂 上
13:05
12:50
12:00
10:30
10:00
[2:40] 所要時間[3:05]
13:30おぼこ荘入浴
16:00帰 宅 

 この山の魅力は、何といってもむき出しの大岩壁と鋭い岩峰(1)、そして、沢沿いの変化に富んだ登りとロープを頼りのルンゼを抜けると太平洋と日本海が両方とも望まれる珍しい展望である。

 ここ6年間毎年、登山道の途中の雄鉾沢出会いの上まで竹の子採り に入っているが、八雲にいた3年間にも一度もなかった頂上への6年振りの再訪である。朝4時に目覚め、予報に反した良い天気がもったいなく、先週竹の子採りに入ったばかりであるが、帰りに、おいしかったフキとあわよくばウドと竹の子採りもできればと考え、まだ寝ている妻に書き置きをして出発する。
 雄鉾岳の勇姿
 登山口の1kmほど手前で、5月2日の大雨で道路が崩壊して、車止めとなっている地点に駐車し、登山口を目指す。まだ、車は一台もない。
 登山口で記帳して、昔、同じ職場の4人グループであちこち歩いたA氏が、2日前に登っていることを発見する。昔のを経験をもとに、皆それぞれのスタイルで、現在の山を楽しんでいるのである。私の一人歩きも然り、この山だって、20年以上も前に私もA氏(はがきの墨絵を送ってくださり、このHPに掲載している昔の職場仲間)も初めて連れてきてもらった山である。妙に懐かしい思いに浸りながら、まだ、誰も入っていない登山道に取り付く。
 ウポポウシの滝
 朝露で、ズボンのスパッツから上がすぐに濡れてしまう。いつもは長靴でざぶざぶ漕いで渡る最初の渡渉地点は、登山靴でも渡れるように、石を並べてある。竹の子採りのときは、目もくれずに行くマクンベツの滝とウポポウシの滝(2)をカメラに収めたりしながら、先週も歩いた雄鉾沢出会いまで進む。いつも竹の子採りをする地点に、昔は登山に活躍し、今は竹の子採り専用になったキスリングを隠して、6年振りとなるその上の道を進む。まもなく、表面にこの山のシンボルともいえる大岩壁の全容が見える「いっぷく峠」に到着。

 6年前は、一人歩きを始めて2つ目の山であった。夢中になって登ったのであろう、最終水場までの険しい変化に富んだ沢の様子はほとんど印象に無く、天候も曇り空で、狭く深く暗い谷の上、時折覗く大岩壁の迫力に押し潰されるような不安感は、まったく初めて歩くコースと同じである。だんだん狭くなって、傾斜も急になってくる沢の中の踏み跡を、右や左に何回も渡りながら登って行く。
 
 沢がルートになる日高の山もずいぶん登ったが、これだけきついルートはあったろうかと思われる程である。定山渓天狗岳のルートにも似ているなと思いながら登り、家へ帰ってからガイドブックを見たら、同じことが書かれていた。 やがて、見覚えのある「水場」を通過して、わずかながら水が流れる深い急な岩だらけの沢を登って行く。頭上には大岩壁が迫り、6年前は1日違いだったにもかかわらず大雪渓で埋まり、迷いつつも一歩一歩キックステップしながら登った急な斜面も、今日は、涸れ沢の中の急な道である。周りには大きなコゴミが葉を広げ、オオサクラソウの花も見える。
 
 その涸れ沢は、初めは岩壁に向かって真っ直ぐ登って行くが、だんだん左側にカーブし、岩壁の根元に沿って、雪渓跡をトラバースする形で続いている。途中小さいながらも雪渓が残り、その周りはまだフキノトウが顔を出す早春のたたずまいである。帰りに採ろうと思っているウドも顔を見せている。岩壁をバックに、目の前に広がる展望を楽しみながら、10分程休憩。

 岩壁の根元を辿り、ルンゼの下に到着。固定されたロープを頼りにというより、そのロープに命を預けて、狭い岩の割れ目を登って行く。途中一か所平らな場所があり、そこから上を見上げると「海見平」の出口が見える。
そのルンゼを15分程で登り切り、崖の上に咲く満開のタカネザクラに迎えられ、 「海見平」へ出る。冷たい風が日本海から吹き付け、汗で濡れた体が一気に冷える。そこから笹藪の中に頂上への道が見える。6年前はもっと遠かったように思ったが、15分で誰もいないきれいに刈り払われた頂上へ到着。
雲海に浮かぶ峰(浅地達夫氏画)
 鋭い西峰の向こうに、山ひだに雪を詰めて聳える遊楽部岳、その横に白水岳、前に冷水岳とこれまでに登った山々が望まれる(絵)。汗で濡れたシャツを脱いで乾かし、ゴアの雨具一枚羽織ったが、風が冷たく結構寒い。平坦な頂上は、あの岩壁の上という感じはないが、灌木の間から東側の足元を覗くと確かにはるか下の林しか見えず、垂直に切り立っている岩壁の上であるということを実感する。
 
 1時間近く寛ぎ、誰も到着しない頂上を後にする。「海見平」の手前で、一人の男性と出会う。「クマがいるって聞いて来たけど、全然それらしい痕跡が無いですね。」と言う。確かにそうである。大千軒岳や遊楽部岳、白水岳などは必ず目にする糞や掘り返しを目にすることはない。ちょうど手頃なウドを採っていると、その男性の連れが登って行く。
 
 「海見平」からルンゼを下って行くと、周りにウドが結構生えている。それらを採りながら、ロープを辿って下って行く。真下の上り口に10人くらいのグループが休んでいるのが見える。全員ヘルメット姿の仰々しいスタイルである。 壁の下で、またウドを採って、急な涸れ沢を下る。年輩の夫婦が登って来るのと出会い、さらに7人程のグループとも出会う。この山にしては珍しく賑やかである。  「いっぷく峠」で表面に見える大岩壁の写真に撮っている男性とも出会う。「この上に、まだこの山の姿が見えるいいところはありますか。」と聞かれ、「ここが最高です。」と答えると、「ここで戻ります。」とのこと。
 別れて、少し行くと、どうも見慣れたところを歩いている。と言うことは、キスリングを置いた地点をはるかに越えてきている。リュックを置いてあわてて戻ると、下りてくる写真の男性に出会う。
 そのあと、フキとウドを採りながら、歩き慣れたとは言っても、5月2日の大雨で崩れてずたずたになり、新しい踏み跡になった箇所が多い道を下る。
 御馴染みの八雲温泉・おぼこ荘の温泉で汗を流す。露天風呂で10年振りに従兄弟と出会い、懐かしく歓談し、帰途に就く。                   


 1回目 1992、5、24/5,31  [八雲W・Vコース]
                  2週がかりで登頂し、雲海に浮かぶ峰々が島のごとし
大岩壁の下からの雲海
 一人歩きの2山目に選び、20年前に、職場の山好きグループ4人で登った記億を辿り、1週間前に一人で再訪してみたが、大岩壁のルンゼのロープが雪で埋まっていて、登れず、途中撤退し、次の週にタケノコ採りを兼ねて再挑戦し、無事登頂する。

 高度600mくらいより(岩壁基部)上空は快晴、噴火湾方面は一面の雲海、その中に高い山の頂きが島のよ うに浮かぶ(1)
 
 海見平に顔を出すと、日本海側は快晴である。奥尻も大島もはっきりと見える。それに しても、そこから頂上までののっぺりした笹の斜面は、それまでが変化に富んでいるだけにおもしろくない。そ れでも雪渓の上を歩いたり、ハクサンチドリ、シラネアオイ、小さな花びらを満開にしたタカネザクラなどが目を楽しませてくれる。所々に残る残雪を踏み、頭がすっぽり隠れるくらいの深い笹を掻き分けたりしながら、もちろん誰もいない頂上へ到着。
頂上から眼下の岩峰を見下ろす
 頂上は、下から見上げた「崖の山」のイメージからは予想もできないくらいの平坦地である。しかし、双耳峰であるとなりの鋭く尖った西峰がその面影を感じさせてくれる。さらにその下に目を転じると鋭い「割れ岩?」が雲海の上に頭を出している(2)。上空は、快晴。裸になって寝ていても寒さを感じない。誰もいない頂上で「お山の大将われ一人」感覚を満喫しながら、晴れ渡っている日本海側と、雲海の上に頭を島のように浮かべて峰々がポツポツと見える太平洋側の景観を楽しみながら、朝食をとり、1時間程のんびりする。

下山途中、先週に引き続き登山道の整備をしているYWVCの2人に出会う。ご苦労さまである。竹の子の入ったリュックに、見事な大きさの沢蕗を背負い切れないくらい詰めて下山する。

先週に引き続き、おぼこ荘の温泉で汗を流し、帰路に就く。


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