武華岳(1758.5m)〜武利岳(1876.2m)  
 <東尾根コース〜縦走路ピストン〜ライオン岩コース>  単独  05,8,11
94,10,09の武華岳へ
97,8,09の武利岳へ
最近、営林署OBの方が個人的に開削・整備して復活させたという縦走路を繋ぎ、両山を再訪する
5:30 層雲峡発
登下山地点
6:10
6:25
7:30
8:15
9:30
10:00
10:55
11:35
12:00
12:20
12:40
13:30
13:45
武華岳登山口(1160m)
ライオン岩コース分岐(1180m)
前ムカ(縦走路分岐)(1747m)
最低コル(1448m)
武利岳着(1876m)
 〃  発
最低コル(1448m)
前ムカ(縦走路分岐)(1747m)
武華岳着(1759m)
 〃  発
ライオン岩下(1650m)
ライオン岩コース分岐(1180m)
武華岳登山口(1160m)


15:00 層雲峡・黒岳の湯(入浴)


 この両山は名前が似ていることからセットで扱われることの多い、石北峠から北に延びる国境稜線上の北大雪の山である(1)(高根ヶ原から撮す)。最近、この両山を繋ぐ吊り尾根に営林署OBの方が個人で開削・整備して縦走路を復活させたとの情報を入手し、いつかはと機会を窺っていた。 しかも、武利岳は1997年に登っているが、雷に襲われて8合目で逃げ帰った山であり、まだ頂上を踏んでいないのである。したがって、厳密に言えば、武利岳を登って、真の意味での「北海道百名山、単独完登」となるので、ぜひとも再訪せねばならない山でもあった。

 武華岳の山名の由来は、無加川源流部にある山によるらしい。ムカは「塞がる川」、あるいは「川が凍らずに流れる川」の説がある。武利岳(むりいだけ)は、武利川の源流部にある山で、「ムン・ルイ(高い草)と称されるイラクサが群生するところ」に因るらしい。

 前日に9時間かけて函館から北上し、層雲峡温泉駐車場で夜を明かして、濃い霧の石北峠を越える。峠を越したら霧が嘘のように晴れて、これから目指す両山がその姿を見せてくれてホッとする。石北峠を越えて北見側の9合目付近の左側に、「つるつる温泉」の看板が建ち、その上に「武華岳登山道入口」と書かれた看板が乗っかっている。そこが、登山口へ繋がるイトンムカ川沿いの林道入口である。11年前に来たときには、その入口が分からずに1時間以上もウロウロしたのが懐かしい思い出である。

 林道終点が武華岳登山口である(2)登山口に冷たい湧水があるが、水は用意してきたので、下山後の楽しみとしてスタートする。数日前に刈り払われたらしい古い作業道を利用した登山道を15分ほど登り、左手に滑滝状になったイトンムカ川が見えると、ライオン岩コースと東尾根コースの分岐である。前回も右側の東尾根コースを登ったが、武利岳への縦走路は東尾根コースの途中にあるので、今回もこちらから登ることにする。どうやら、数日前の笹刈りはライオン岩コースの方へ進んでいるらしい。

 やがて、左手の源頭地形の見通しの利くところに出ると、稜線上に武華岳頂上やライオン岩が見える。ここは昭和29年の洞爺丸台風の際の大規模な風倒木地帯とのことであるが、前回登ったときより木々が育っている感じがする。振り返ると、クマネシリ山塊が見える。徐々に右側の東尾根を目指すようにトドマツとエゾマツの混合林の急斜面を斜めに登っていく。

 尾根に近づくに連れて植生も高山らしくなって来る。尾根に乗るとハイマツ帯となり、一気に展望が広がる。クマネシリ山塊〜ウペペサンケ〜石狩岳〜音更岳〜ニペソツ山などの東大雪の山々、まだ多くの残雪を配したトムラウシから愛別岳までの表大雪の山々などがくっきりと見えるのがうれしい。

 やがて、広いハイマツ帯の尾根に出ると、武利岳への縦走路分岐の前ムカへ到着し、これから目指す武利岳の姿と吊り尾根上の縦走路が見える(3)分岐には木の枝が二本立てられただけで、それを示す標識は何もない。ちょっと下ったところで、武利岳を眺めながらの朝食とする。

 腹ごしらえをして、高度差270mほどの最低コルをめがけて下っていく。右側は急崖となっているが、これは武利川の源頭である。ハイマツ帯から高度を下げるに連れてダケカンバ帯となってくる。朝露で濡れた足下の灌木や草で、ズボンが股下までびしょ濡れになるが、気温が高いので涼しくてちょうどよい。

 35分ほどで最低コルへ下り立つ。ここには両側からの明確な踏み跡が認められる。どちら側も近くまで林道が上がってきているらしいので、そこから登ってくる人もいるようであるし、多分縦走路整備作業をする人も北見側の縦走路より明確な踏み跡を利用したようである。コル付近は平坦で、笹に覆われていてはっきりしないところもあるが、赤いテープが付けられているので、迷う心配はない。

 いよいよ頂上までの標高差430mほどの登りに掛かる。はじめからきつい直線的な登りが続く。途中から、残雪を配したトムラウシから愛別岳までの表大雪の山々が見える(4)やがて展望が広がるハイマツ帯の急登へと続き、ニセイチャロマップ川方面から連なる稜線に乗る。今度は向きを変えて、常に目指す武利岳を見ながら、アップダウンの激しい、ハイマツと高山植物に覆われた岩混じりの細い稜線歩きが続くが展望が素晴らしい(5)右手に、7年前に登り、8合目で撤退せざるを得なかった丸瀬布コースの尾根も見えている。

 最後の丈の短いハイマツ帯の幅広の尾根を登り切り、手前の小ピークをかわすと、7年前幻に終わった一等三角点の設置された武利岳頂上である(6)

 表大雪や東大雪、北大雪の山々など360度の展望が広がる。なかでも、一昨年沢から登ったが、ガスで展望もほとんどなく、下山後、その山の形さえも見ることができなかった、直ぐ北側に連なる稜線上のニセチャロマップ岳(手前中央)と支湧別岳(右端)、さらにその後ろに連なるニセイカウシュッペや、昨年急ぎ足で縦走した平山〜有明山〜白滝天狗岳などがうれしい。しかし、ニセイチャロマップ川沿いの斜面に広がる伐採跡が痛々しい(7)

 それらやここまで辿ってきた縦走路の稜線や吊り尾根、平らに見える武華岳の稜線(左側)、その後ろに連なる東大雪や表大雪の展望を楽しみながら(8)30分ほどのんびり休憩する。

いよいよ、縦走路を戻って、武華岳経由の下山である。来るときに1時間50分要した縦走路を1時間35分で戻る。個人でこの縦走路を整備してくれたという営林署OBの方に、感謝の気持ちで、その分岐である前ムカを後にして、武華岳を目指す。

 ここから武華岳までは丈の高いハイマツやナナカマドのトンネルもあるが、概ね遅い花の咲く快適な稜線である。イチヤクソウ、チングルマ、ミツバオウレン、ゴゼンタチバナ、マルバシモツケ、エゾイソツツジ、アオノツガザクラ、エゾノツガザクラ、ウサギギクなどが目を楽しませてくれる。

 前ムカから25分で11年振りの武華岳頂上である。頂上には見たことのある字体と色合いの新しい標識が建っていた(9)。裏を見るとやはり札幌近郊の山で多く見かける峯風さんという方の2年前に設置した標識である。この方の標識の裏に必ず歌が書かれているが、ここには「雲海の果てに かすむしれとこ」と書かれているが、知床の山はここから見えるのだろうか?今日は霞みすぎて見ることができなかった。2時間前までいた武利岳を眺めながら昼食を摂る。

 あとは、手前の岩場を越えて、ライオン岩の左を巻いて、ライオン岩の先のピークから左手向きを変えて急な尾根を下るだけである(10)
 
 ライオン岩の登りに掛かる辺りから数日前のものと思われる笹刈りが続いている。ライオン岩は前回来たときに登ったので、今回はパスして、垂直の岩壁の下を巻いて通過する。ライオン岩コースを「下りコース」と案内しているだけあって、本当に急な道である。ところどころにロープが設置されているのも助かる。

 イトンムカ川を渡って、分岐で登りの道に合流して、まもなくゴールインである。登山口の冷たい湧水を腹一杯飲んだのは言うまでもない。入林届けを見ると、こちらが武利岳へ行っている間に武華岳に登って下りてしまった人が一人いたらしい。

 登山口を後にして、層雲峡温泉へ戻る。黒岳の湯で汗を流し、明日の銀泉台〜高根ヶ原〜忠別岳日帰りに備えて、昨夜と同じ駐車場に泊まる。


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