[93] 藻岩山(531m)  [市民スキー場コース] 97,11,23

落ち葉を踏んで、札幌市街外を見下ろし、26年前の冬を思い出す。
登山[自然歩道コース]
10:35
11:25
登山口(スキー場駐車場)
頂上着(展望台)
[0:50 所要時間
下山[スキー場コース]
11:35
12:10
頂上発
登山口(スキー場駐車場)
[0:35]所要時間

 この山は、梅沢俊氏の『北海道百名山』に数えられていなければ、恐ら く登ることのない山だったかもしれない。 札幌のシンボルの山ともいえる山であるが、 この山の藻岩山市民スキー場は、自分にとっては、昭和46年 2月、全日本スキー連盟公認準指導員検定合格の忘れられないスキー場である。しかし、それ以来訪れたことのないこの山に登るときは、その懐かしさを振り返るためにも、できたらそのスロープをも歩いてみたいと考えていた。

 今年の秋は、やたらと雪が遅く、いつまでも低山なら登れそうである。今回は、私用で札幌を訪れたが、用事は午後からなので、本来は雪で覆われている筈のこの時期この山に登ろうと考えての山行である。当初、砥石山を第一に考え、小林峠の登山口まで行った見たが、登山口の案内板の表示距離を見たら午前中の往復は無理なので、藻岩山に切り替えたのである。
カラマツの黄金色の絨毯の稜線を行く
 26年前の記憶を頼りにスキー場からの登山口を探して登って行くと、上から登山スタイルの女性が下りてくる。聞くと、「この道を真っ直ぐ行くと、雪友荘という建物があります。その上に登山口があります。」とのことである。意を強くしてそのまま上って行くと、スキー場の下の駐車場に到着する。

 初めはスキー場の中を登るのかと思っていたが、右尾根の林の中に自然歩道が付けられていることが分かり、ちょっとでも登山気分を味わえるのがうれしい。 まず、登山口からその尾根までの急斜面をジグを切って登る。下の方はカラマツ林で、黄金色の絨毯を踏みしめながらどんどん高度を稼ぐ(1)。尾根に出るまでに結構汗ばむくらいである。途中、フリースを脱ぎリュックに入れる。いつの間にかカラマツの絨毯がミズナラやシシナノキの落ち葉に変わっている。

 やがて、すっかり葉の落ちた樹々の間から札幌の町並みが覗く快適な稜線上の道となる。都会の山を忘れさせるほど静かな歩きである。上から、ときどき下山してくる人達と擦れ違う。リュックを背負わない人、本格的な人と様々である。しかし、どの人も登山靴はしっかり履いている。一つ目のピークを越え、一端下り、再び登りに掛かると、左手にスキー場のスロープが広がる。準指検定のときに滑った印象はあるが、登りでは、まだ、そこが急でびっくりしたうさぎ平スロープだとは気が付かなかった。再び林の中に木の階段が続く急斜面を登ると、建物の側を通過し、ロープウェイの終点に到着する。

 そこからは、もう登山の雰囲気ではなく、頂上展望台までのリフトの横に真っ直ぐ続く石の階段を登る。ただ、幸いにロープウェイも閉鎖しており、観光客が見当たらないのが救いである。 登山口から50分程で頂上展望台に到着。

 建物に入ると、車で来た観光客が肩身を狭くするほど、その場所に相応しくない格好の登山者が幅を利かしている。中には、ストーブの直ぐ側の床に座り、食料を広げているおばちゃんグループもいる。この時期ならではの光景なのであろう。観光シーズンは登山者が肩身を狭くしているはずである。屋上の展望台に出ると、さすが寒いので人は少ない。目の前にまさに果しない感じで広がる 180万都市の町並みや石狩湾の海岸線を眺める。後ろの山の方は雪雲が覆っていて、樽前山が手前の山と山の間にブリッジのように覗くだけである。 どこかに座って、せっかく背負ってきた食べ物をと思うが、適当な場所もなく、リュックを下ろすこともなく下山を開始する。
市民スキー場を見下ろす
 下りは、準指検定の時の斜面を探しながらと思い、登りとは違うリフト終点のところに下りる。そこに、懐かしい「うさぎ平」の標識を見付ける。そのスロープの上に出たら、そこは登りで反対側から眺めながら登った斜面である。上から見ると確かに総合滑降と急斜面ウェーデルンなどの懐かしい斜面である。道はないが綺麗に刈り払われたその斜面を横切り、真下に続く道を狙う(2)。下から眺めると、よくあの急な斜面を元気良く滑り下りたものだと、若さを懐かしむ。

 その斜面の下の方で同じ道を下っている元気な老人に追い付く。反対側の慈恵会病院の方からの登山道を登ってこちらに下りて来たそうである。「函館から来た。」と言うと、73歳というのに、ついこの間福島で行われた南北海道駅伝大会に出場したそうで、「私も応援に行きました。」ということから話が弾む。函館のことや道南の山のこともやたらと詳しい方である。

  そんな会話を交わしながら、こちらの目は準指検定の他の種目の斜面をしっかり探している。全部で10種目ほどあったはずで、それぞれ懐かしい思いが蘇って来る。そんな思い出に浸ることができたこと、登りのコースは予想に反して、この時期にしてはちょっとなりとも登山気分を味わえただけでも、この山を訪れてよかったと思う。


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