南斜里岳(1442m) 
 <斜里岳旧道コース〜稜線>  単独 06,8,9

強風のために本峰だけで諦めた昨年のリベンジのために再訪

4:00 層雲峡発
7:15 清岳荘
登山地 点
下山
7:30
8:15
9:30
10:00
10:20
----
11:10
登山口
下二股
上二股
馬の背
最低コル
(昼食30分)
頂 上
14:35
13:50
12:45
----
12:25
11:25
11:10
[3:40]所要時間[2:55]
14:50 清岳荘管理人さんとお喋り
 この南斜里岳は、斜里岳の南奥の稜線上に聳えるピークである(1)。馬の背から稜線上に踏み跡があるので、昨夏、こちらにも寄るつもりであったが、近づいていた台風の影響の強風に諦めて本峰だけで戻った経緯があった。

 前日に北大雪の屏風岳に登ったついでに、リベンジのために足を伸ばした。層雲峡を早朝発ち、3時間強で清岳荘に着く。昨秋に北大雪の雄柏山雲霧山で2日続けて同行していただいた清岳荘管理人の熊ぷ〜さんと愛犬エル嬢に逢いたかったが、ちょうど、昨日が山を下りる日で逢えなかった。下山後には逢えるとのことで、それを楽しみにスタートする。

 登りは、斜里岳の旧道を登り、馬の背から稜線上を辿り、下りは、最低コル(1376地点)から上二股の上で登山道に合流する沢地形を下り、そのまま旧道コースを戻る予定である。

○飛沫を浴びて

 この旧道を歩くのは3度目であるが、滝の連続する変化に富んだ(2,3)大好きなコースである。沢沿いの道になってすぐに佐渡からやってきたという40歳くらいの男性と一緒になる。北海道の山についていろいろ話しながら登る。彼の最大の関心は熊の恐怖である。この斜里岳でも私と一緒になるまで、不安でしょうがなかったほどだと言う。

 途中で休んだときに岩にでもぶつけたのであろう。15年以上も使用してきたプラスチックの水筒が割れてしまった。経年劣化もあったのであろう。その男性が、水の入った500mlのペットボトルを分けてくれた。そのときに、リュックに残っていた水がズボンを伝って尻から膝裏まで濡れてしまったが、その後、稜線を歩いているうちに乾いてしまった。

○恐怖の岩場

 馬の背でその男性と別れて、南斜里への稜線上の踏み跡を辿る。

 まずは細い稜線を1470まで登る。その東側に延びる尾根の先にも鋭く聳える1452峰が聳えている。東斜里岳とでも呼びたくなるいい形である。地形図上にはそちらにも登山道が記載されているが、微かな踏み跡しかないようだ。今度は一気に標高差100mほどの最低コルまで下り、再び1508ピークを目指して登る。振り返ると馬の背の向こうに斜里岳の頂上と多くの登山者の姿が見える(4)ハイマツは膝で掻き分けられるほどの高さである。

 1508ピークの手前から南斜里への尾根は延びている。そこから下って登り返すのだが、唯一気になっていた岩場が行く手を遮るように聳えている。ここには、通過するときに岩にしがみつくようにして越えなければならない、しかも、足元がすっぱり切れ落ちているところがあると聞いている(5)

 とにかく行ってみるしかない。稜線の正面の岩場を木の枝を頼りに登り、反対側に抜けたら、ロープが目に入ってくる。ここがその場所に違いない。恐る恐る覗いてみると、確かに幅20cmほどしかないテラス状のところを通過しなくてはならない。その足元はすっぱり垂直に切れ落ちてかなり深い。わずか1〜2mほどのものであるが、高所恐怖症の自分には、他の人がするように岩にしがみついて通過するには怖くて腰が伸びない。しかも、手を掛かるところがあまりない。仕方ないので、そのロープを頼りにしゃがんで通過する。

 そこを越えたら、まもなく頂上である。長く飛び出した三等三角点(点名・小斜里岳)が迎えてくれた(6)ところが、迎えてくれたものはそれだけではなかった。置いたリュックが真っ黒になり、登山靴やズボンの裾が真っ黒になるほどの夥しい蟻の大群である。これまで見たこともない量である。思わず鳥肌が立ち、全部払い落として、すぐに頂上を後にする。

 まだ、鳥肌の立つところが待っている。休むのは岩場を通過してからにしようとそのまま下る。これまで、登りで通過できたところは帰りはそれほど恐怖感を感じないで通過できるものだが、ここは、反対の方が下りの高度差があるので余計怖かった。ロープと岩の間に体を入れて、やはりしゃがんで恐々通過した。

 そこを通過して昼食タイムとしたが、いつの間にか曇ってきて、雨がぱらついてきた。斜里岳の頂上も見えなくなった。最低コルまで下って、予定通り、藪で覆われた沢地形に下りる。同じことを考える人が多いと見えて、結構はっきりとした踏み跡が付いている。ただ、潅木の枝が邪魔で常に潜るように歩かなくてはならないのが辛い。気にしていた熊の痕跡は全くなかった。

 15分ほどで、あっさりと上二股の上で夏道に合流した。ただし、二人連れの登山者が変なところから鈴の音がするので、不思議がって私が姿を現すまで待っていたようである。「南斜里まで行って来て、この沢の中を下って来たのです。」と説明すると安心するように下っていった。

○高度感のある旧道の下り

 これまでの2回の斜里岳の下りは新道コースを歩いていたが、今回は登ってきた旧道コースを下ってみた。滝が連続するだけに予想以上に高度感があり、雨で岩盤が濡れていて滑りそうな気もして、なかなか登りのようにスムーズに歩くことができない。緊張しながら下るので、これまた予想以上に疲れる。登りで1時間15分要した上二股から下二股までを大して変わらない1時間05分も要し、距離の長い新道コースを下るのと大差はないことが分かった。しかし、それを、清岳荘管理人の熊ぷ〜さんに話したら、「慣れれば、やはり旧道コースを下りた方がかなり速いですよ」とのことである。

 下山後、汗と雨で濡れた衣服を着替えて、差し入れのワインを持って清岳荘へ入る。「あれ〜!来てたのかい?」と管理人の熊ぷ〜さんがびっくりしている。30分ほど山談義をする。今年は大きな事故もなく穏やかに経過しているそうである。彼が管理の仕事から解放される秋の山での再会を約束して登山口を後にする。 

「北海道百名山紀行・目次」へ     HOMEへ

inserted by FC2 system