松倉山(660m)<福島町/松前町>
白符川林道〜尾根循環ルート  3名  アイゼン・ピッケル 07,2,25

          大千軒連峰の南の中央分水嶺上に連なる随一の急崖の山〜アイゼン・ピッケルでナイフリッジの稜線を循環縦走。

 5:00 自宅発
 6:30 白符川林道・除雪最終地点
登山
地  点
下山
 6:45
 7:45
 ---
 9:35
 9:55
林道除雪最終地点
林道終点奥
13:15
12:15
(20分)
10:40
10:00
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分水嶺上
(休憩)
659ピーク
  頂   上
[3:10]
所要時間
[3:15]
14:00 知内こもれび温泉(入浴)

 この松倉山は、大千軒連峰から北海道最南端の白神岬に連なる中央分水嶺上に聳え、東面に急崖を形成する600超峰とは思えないほど迫力ある厳しい山である。やはり東面に急崖を擁するニペソツ山を彷彿とさせる神々しいまでの山容がうれしい(1)(林道途中から撮影)

 この山の存在を知ったのは、今回同行した「腰痛おじさんの山歩き」のSeさんと「ワンダーランド・蝦夷地彷徨記」のMiさんが昨夏に沢からアプローチして、そのあまりの厳しさに途中撤退したという報告と写真を目にしたときである。そのときに地図を見て、さらに、この正月に檜倉山からこの急崖を擁した迫力ある山容を眺めて、ぜひとも登りたい山となった。それ以来、今回辿った白符川沿いの林道奥から尾根と稜線を繋ぐ循環縦走の計画を温めていた。

 今回は、2週間前に別ルートからアプローチして悪天候のために途中撤退した二人の3度目の挑戦に付き合わせていただくことにした。彼らの下調べの結果、造材作業のために2.4km地点まで除雪されていることが分かっている白符川沿いの林道に入る。前々日まで2日連続の10℃を越す暖気と雨の後、急激に冷えて堅雪となった上に5cmほどの新雪が覆っている状態である。山スキーは止めて、かんじきとアイゼン・ピッケル持参でツボ足で出発。周りは心配になるほど雪が少ない。

○まずは、崖上の頂上を目指して

 ラッセルなしの堅雪の林道を進むと、正面に朝日に輝く急崖を擁した松倉山が見えてくる。林道終点奥から渡渉して、松倉山の南側の分水嶺上に繋がる東尾根に取り付く。一番急な300〜400mは地図からは読み取ることのできない岩場となっているので、その基部を北側からトラバースしながら巻いて登る。しかし、かなりの急斜面で、ところどころに小さな雪崩れ跡もある。ツボ足のままアイスバーンに一歩一歩つま先を何度も振り下ろしてステップを刻み、ピッケル併用で這うようにして登る。右手に659ピークが見えているがそれに気づく余裕はなかった(2)

 緊張の連続で岩場を巻き、400m付近で尾根の上に戻ってひと安心。ここから頂上までは楽勝モードであるが、ステップが刻めないほどのアイスバーンなのでアイゼンを着ける。もっと前の岩場を巻くときから着ければ良かったと思った。ただし、自分のアイゼンは6本爪なのでつま先に爪がない。嫌でも靴でステップを刻まざるを得ないが、ときどきステップが刻めないで滑って滑落しそうになる。10〜12本爪のアイゼンの必要性を初めて実感する。

 途中の樹間から、松倉山頂上と迫力満点の岩崖を露出させた東面が目に飛び込んでくる(3)彼らが昨夏、この崖の連続する滝を登って進退窮まったのも当然である。「よくあんな所を登ったものだ」と本人たちも驚いている。さらに高度を上げていくと、その松倉山とナイフリッジの稜線で繋がったさらに迫力を増す感じの659ピークが見えるようになる(4)

 やがて、中央分水嶺の上に乗り、広い稜線を進む。ラッセルなしだったせいであろうか、予想よりかなり速い3時間15分で雪庇の発達した頂上へ到着(5)キックステップの緊張はあったもののラッセルがなかったので、疲れもそれほど感じない。自分は1回での登頂であるが、同行の二人は3回目での念願の頂上である。思い入れも一入であろう。彼らとその感動を共有できただけでもこの山の価値はある。

 頂上からは、北側に連なる大千軒岳までの中央分水嶺上の山々(6)、この後越えるナイフリッジの先に659ピークが(7
)、さらに右側には岩部岳などを配する矢越岬の山塊(8
)などの展望が広がる。

○ナイフリッジの稜線を越えて循環縦走へ
 
 「できれば、659ピークまで行きたい・・・」は3人の共通の想いであった。西斜面に樹林がなければ、日高山脈のナイフリッッジそのものである。しかし、その林のお陰で、雪庇を踏み抜かないようにその縁を辿れば、なんとか行けそうな気配である。幸い岩稜も雪庇で隠れているようである(9)緊張感を持続するためにも、わずか5分ほど休んだだけでタートする。

 頂上から下って、ほぼ垂直に切れ落ちる崖とその上に被さった雪庇を振り返る。改めて、その迫力を実感する。(10)

 しかし、その先の西斜面は太陽が当たっていないので、数cmの新雪の下はカリカリの斜面である。アイゼンを蹴り込みながら、あるいは、右側の爪だけを効かせながらのトラバース・・・ピッケルと周りの灌木を頼りにして恐る恐る進む。

 沿面距離にして約800mを40分で本峰と1mしか標高の違わない659ピークに無事到着。

展望は本峰とはほぼ変わらないが、北側奥に尖った七ツ岳、その手前に正月に登った檜倉岳がより近くに望まれるのがうれしい(11)まずは、下の地形を見下ろして循環縦走の下山ルートを画策した後、昼食を摂りながら休憩。

 ピークから狙っている尾根に直接下るのは、雪崩の恐れのある急斜面のトラバースや急な痩せ尾根が怖い。そこで、北側の尾根を巻くように下って、沢底まで下り、沢地形を越えて登り返すルートを採る。日当たりの良い斜面は自分の安いアイゼンは直ぐに団子になり余計に怖い。一歩か二歩ごとにピッケルで叩き落としながら下る。逆に日の当たらない登り返しの急斜面では前の爪がないので、前の二人に遅れながらも四つん這いでステップを刻みながらようやく下り尾根に乗る。

 あとは、登りの尾根の末端近くに繋がる尾根を下るだけである。縦横無尽にブルで削られた古い伐採道が入り組んでいるのが痛々しい。途中でカバノアナタケを見ることもできた。途中から登りで採った尾根の全容が望まれる。下からは見えなかった大きな岩場とその基部を緊張しながらトラバースした急斜面に「よくあんな所登ったね〜」と改めて驚く(12)
 
 尾根を下って沢に下りたら、みごとなくらいドンピシャと登りの尾根に取り付くための渡渉地点に合流した。そこで、アイゼンを脱ぎ、満足感と充実感に酔いながら、ところどころに早くも顔を出すフキノトウを見ながら林道を下る。

 天候と同行者にも恵まれ、これまでずいぶん多くの雪山に登ったが、印象に残るいい山であった。予定通りの循環縦走もできたし、初体験のアイゼンとピッケルで這うようにして登った緊張感も含め、今年に入って8山目であるが、もっとも印象深い山行となった。翌日、早速12本爪のアイゼンの購入を決めたのは言うまでもない。

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