前十勝岳(1790m)  カバワラ尾根ルート   2名  04,01,10   
03,01,12の前十勝岳(1450m地点まで)

吹上温泉・白銀荘から、通称カバワラ尾根を辿り、強風を突いて、ウィンドクラスの雪面とハイマツ原を越え、最後は岩と氷の斜面をツボ足で強引に登頂する。
 
登山
地点
下山
 8:45
10:55
11:20
白銀荘(1017m)
スキーデポ地点(1720m)
頂上(1790m)
12:40
11:45
11:25
[2:35]所要時間[1:15]
GPSトラックログ(96kb)

  1月10〜12日の3連休に開催された「HYML三段山オフミ」に参加すべく、前日の朝、函館を出て、途中、札幌の白旗山競技場で、2時間ほどクロカンスキーの練習をする。その日の内に、『山の時計』のEIZI@名寄さんとの翌朝の待ち合わせ場所である上富良野駅前まで走り、その駐車場を明かす。昨秋購入したマイナス16度まで対応の寝袋は、マイナス14度の外気温でも車のヒーターを必要とすることなく、快適に眠ることができた。

 朝起きると、これまでこの1月の3連休に3回も足を運んだのに一度も姿を見せたことのない十勝連峰が朝焼けをバックにその全貌を見せてくれるのがことのほかうれしい(1)。3日間のベースとなる吹上温泉・白銀荘へ向かう途中、だんだん連峰の峰々を雲が覆い始めるが、十勝岳とその前で噴煙を上げる前十勝岳はくっきりと見えているので(2)、行けるところまで、あわよくば初登頂ねらいで挑戦することにする。(自分は昨年のこの時期に1470m附近まで登っているが・・・

 下から斜面を眺めるが、明らかに雪不足で手こずりそうである(3)。「行けるところまで行こう」と白銀荘前を出発する。三段山への尾根と前十勝岳へのカバワラ尾根の間を流れる富良野川の沢を越える地点までは夏道に沿って昨日のものと思われるトレースを辿る。沢を越えて、立ち枯れのダケカンバが林立する通称カバワラ尾根に取り付く。昨年、辛いラッセルと快適な深雪滑降を楽しんだこの尾根は、ウィンドクラストしていて、ラッセルの苦労はないが、その分下りで滑りを楽しむことは不可能である。

 風は強いが、雪が降っていないし、ずっと頂上が見えているのが心強い。カバワラ尾根の上部までは快調に登っていく(4)。振り返ると富良野盆地が広がり、直ぐ眼下に白銀荘が見えている(5)。カバワラ尾根の上部からはハイマツ帯になるが、ハイマツ帯をスキーで踏んづけながら少し左側へ巻くと頂上へ向かって雪の付いている斜面が続いている。この斜面もやはり強烈に締まったウィンドクラスト斜面で、登るのは楽である。

 だんだん斜度がきつくなり、あちこちにハイマツや岩が露出してくる。ハイマツ帯を越えながら雪の付いている斜面を探して登って行くが、その幅も狭くなり、安政火口から吹き上げてくる風が強烈になってくる。ときどき進むことができない程の突風に必死に立ち止まったり、煽られて転倒したりする。1600m附近で、「この辺りで止めようか?」「もう少し行ってみよう!」などと言いながら、足は止まらず、姿を見せている頂上に誘われように登っていく(6)。ときおり、噴煙の硫黄の臭いがするが、それほど気になるほどではない。

 雪を繋いで稜線の少し左側を登るようにすると風が少し弱いようで、その後は「何が何でも頂上へ」という気持ちに揺るぎがなくなる。1700mを越えると、雪付き斜面が無くなり、スキーで登ることは不可能になる。雪が多ければ、恐らく氷の斜面でアイゼン、ピッケルの世界なのであろうが、幸いまだ岩が出ていて、雪や氷もうっすら付いているだけなので、1720m附近にスキーをデポして、ツボ足で頂上を目指す。(7)

 頂上手前の崖の上からは安政火口がうっすらと覗くだけで、十勝岳も隣の三段山も向かい側の上ホロカメットク岳もガスの中である。頂上標識は無いものの頂上の向こう側に噴煙を上げる噴火口があるはずのだが、ものすごい強風に、そこまで行く気がせず、氷とエビのしっぽで覆われた何かの標識をバックに記念撮影をしただけで戻ることにする(8)。

 下山する頃には、ガスで覆われ初めて、周りや下の方も見えなくなるが、スキーデポ地点まで下りて、スキーを付ける。スキーの足前には自信のある二人であるが、初めから滑降を楽しむことは諦めているので、安全第一でウィンドクラストの雪面を足探りでほとんど横滑りやプルークで下る。ガスに巻かれて展望も利かないのでGPSを取り出しては方向を定めるが、ハイマツ帯の上を風に押されて帆掛け船状態で滑ったり、右往左往しながら下っていく。

 1450m附近まで下ると、ようやく立ち枯れのダケカンバが林立するカバワラ尾根が見えてホッとする。昨年は快適な深雪滑降を楽しんだのだが、クラストと吹きだまりが混じった斜面でとてもターンを楽しめるような状況ではない。わずかに5つほど気持ちのよい小回りターンを楽しめたのは、富良野川の沢を越え、夏道の次の沢地形へ下る斜面だけであった。深雪滑降を楽しむことはまったくできなかったが、最初から最後までほとんど休憩することもなく、二人とも飲食物を一切口にすることもなく、この時期、初めは登頂は無理だと思っていた新ピークを極めた満足感だけで十分であった。

 下山後、この辺りの山の主である『三段山クラブ』のOさんから「この時期に前十勝に登る人なんかいませんよ。まさに二人は挑戦者でしかないですよ。僕が居合わせたら止めさせたのに・・・・」と言われて、うれしさが倍増する。

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