[79]黒岳(1984m)〜[80]愛別岳(2112m) [層雲峡コース]96,7,21

大雪の花々とスケールの大きな展望を楽しみ、念願の孤高の岩峰に立つ。
                                                リフト乗り場から黒岳頂上を望む
5:50層雲峡ロープウェイ駅
登山地点下山
 6:30
 7:15
 8:30
 9:20
10:00
七合目
黒岳
北鎮岳
比布岳
愛別岳
14:00
13:20
12:10
11:20
10:30
[3:30]所要時間[3:30]
15:00不老の湯(入浴)
23:00帰宅       
 愛別岳は、大雪の山では異端児的な荒々しい山容が魅力で、過去2回愛山渓から目指し、雨とガスのため永山岳まで行って断念していた念願の山である。
 3度目の正直は、距離はあるが、標高差の少ない黒岳から攻めようと決めていた。幸い、前日の平山〜ニセイカウシュッペ山が日帰りでできたこと、天候が良かったことで、急遽実行に踏み切った次第である。

 層雲峡の駐車場の車の中で夜を明かし、一番のロープウェイに乗るべく駅へ行くと、すでに100名近く並んでいる。臨時の5:50の便が出るということでそれに乗る。乗り継ぐリフトからは正面に黒岳の鋭峰がくっきりとその姿を見せている(1)。ウグイスの声が迎えてくれる。
 
黒岳は、「1984年に1984mの黒岳に登ろう」と家族で登って以来12年振りの再訪であるが、一人歩きでははじめてである。リフトを降り、七台目の登山口で記帳し登山開始。目的は遠く愛別岳である。自ずからペースが上がる。スタートしてまもなくトップに立つ。斜面に群生するチシマノキンバイソウとカラマツソウウ(2)や道端の花々を楽しみながら、45分後黒岳頂上に立つ。上空は薄曇りであるが、表大雪の山々を全部見渡すことができる。目指す愛別岳もその尖った頂上を凌雲岳の横から見せている。振り返ると昨日登ったニセカウと平山も雲海の上に姿を見せている。
 黒岳へ斜面に群生するチシマノキンバイソウ
 黒岳頂上で出会った山岳パトロール員風の方に「今日の天候は、どうでしょうかね。」と聞くと、「午前中は大丈夫でしょう。」と答える。まず北鎮岳を目指して、花々の咲き乱れる広々としたお花畑・雲の平への道を下る。まさに、只今最高潮といった感じで道の両側に咲く花を楽しみながら速いペースで歩を進める。
 
 北鎮岳分岐の手前の大きな雪渓を登ると、分岐にたくさんの人が休んでいる。やはり、表大雪は人が多い。一気に北鎮岳頂上に立つ。そこにもたくさんの人が寛いでいる。北海道第2の高峰も今日は単なる通過点に過ぎない。それでも、トムラウシやニペソツ、遠く武利岳や武華岳などの展望や、これから目指す鋸岳から比布岳とその横に痩せ尾根で繋がる愛別岳の尖峰を眺めたりしながら一息入れる。標高1500m以下は雲海に覆われたままである。
 比布岳から永山岳方面の稜線を望む
 次は、とりあえず比布岳を目指して北鎮岳斜面を下る。鋸岳の南斜面をトラパースすると比布平に出る。道の左側一面がキバナシャクナゲ、右一面がチングルマと咲き分けが見事である。比布岳の頂上に立つと、ようやく2度も振られた荒々しい愛別岳の全容が目の前に現れる。爆裂火口である地獄谷や大覗谷の迫力も凄い。3年前に永山岳からガスで何も見えない細い稜線を逆に辿って来た道も見える。(3) 
 いよいよ最後の愛別岳への道である。愛別岳分岐から痩せ尾根を目掛けて、火山灰と礫のザレ地の急斜面を滑り降りる。両側が恐ろしい迫力で切れ落ちる痩せ尾根(4)の上に立つも、途中火山灰の乗っかって滑りやすい岩場を下ったりで足元が疎む。ちょうど太陽も顔を出し、暖かくなったからいいものの、そうでないと鳥肌が立ちそうである。
 愛別分岐から吊り尾根ルートと愛別岳を望む
 まもなく愛別岳の尾根の上に乗ると火山灰から岩礫の急斜面になる。見上げると、上に数人の人影を乗せた黒い岩の魂のような頂上が上から被さるような感じで迫ってくる(5)。果たして登るルートがあるのかと不安になるも、頂上から下りてくる二人の人影が見える。その人達の下ってくるところを見てようやくルートが判明する。苦手な急な岩場をよじ登りながら進むと、やがて傾斜が緩くなり、35分で台地状の誰もいない頂上に出る。
  
 途中の山の頂上には嫌になるはどたくさんの人がいたのに、やはりこの山は訪れる人の少ない孤高の山なのである。一人歩きはこの様な山が似合うなどと考えて快い孤独感に酔う。頂上には黒い大きな四角い岩がゴロゴロしている。確かこの山は遠くから見ると双耳峰のはずと、リュックを置いてちょっと奥へ進むと垂直に切り立つもう一つの岩峰が聳えている。
 
 永山岳から比布岳に続く地獄谷や大覗谷の荒々しく切り立つ崖を眺めながら、菓子パンやみつまめ缶詰やチーズ蒲鉾を食べながら寛ぐ。暖かくもっとのんびりしたかったが、帰りのルートや8時間以上の車の運転を考えるとそうもいかない。下を見ると3組、10人位の人がこちらに向かっている。一人歩きに似合う一人っきりの頂上の気分を失いたくないので、下山を開始する。
 念願の愛別岳頂上を仰ぐ(頂上に数人の姿)
 来るときは怖かった痩せ尾根の道も帰りはるんるん気分である。何人かと擦れ違って、岩場のルートや掛かった時間を教えたりの会話を交わして別れる。最後のザレ場の登りは辛いだろうと予想していたが、そうでもなく、わりと簡単に分岐に立つ。
 
 あとは往路を引き返すだけである。比布岳を越え、北鎮岳を越え、その根元の雪渓の下からゴーゴーと流れ出している水をたらふく飲む。1リットルも飲んだのではないだろうか。その頃から、上空はそれほど暗くないのに雨がばらついてくる。涼しくて気持ちがいい。黒岳の上も凄い人の数である。その雑踏を避けるように休みもしないで通過して、一気にリフト終点の登山口を目指す。出発してから7時間半後、ガスに包まれたリフト終点に到着。 

 売店で缶ビールを売っている。迷わず手が出る。一気に半分近く飲み込んで息をつき、思わず「うまい!」と声を出すと、そばで見ていた雪渓でスノーボードを滑ってきたという若い人が、「うまそうですね。おれも飲もう。」と買いに行った。リフトに揺られながら残りのビールを飲み干すと、気持ちが良くなり眠くなる。 リフトを降りてロープウェイ終着駅の売店では立ち食いそばを食べている人がいる。これも食べたくなる。汗をかいたた後だけに汁がとくにおいしい。大満足である。
 
  いつも入る層雲峡温泉の銭湯・不老の湯で汗を流し、帰路に就く。いつものことだが、何時間運転をしても不思議に眠気も来ない。途中、千歳で夕食にヒレかつ定食を食べ、一息入れて午後11時帰宅する。 かなりのハードスケジュールであったが、充実した2日間の山行を無事にこなした自分の体力にまたまた自惚れてしまうことになる。


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