[87]黄金山(739、5m) [新道コース〜旧道コース] 95、10、27 
  天候 晴れ時々曇

     奇異な山容の山を高所恐怖症と戦いながら、スリルとサスペンスの山行
 不気味な山容の黄金岳
8:00 旅館発
登山
(新道)
地点 下山
(旧道)
8:30
9:30
登山口
頂 上
11:00
 9:50
[1:00]所要時間[1:10]
12:00 浜益(昼食)
15:30 札幌

 1000mには満たない山であるが、その険しく奇異な山容(1)で人気の高い山のようである。その証拠に、この晩秋にもかかわらず、登るときは1台の車しかなかったが、下りてきたときには20台程に増えていた。

 前日のうちに確かめておいた登山口への入口から、山すその林道を入る。駐車場に車を置いて、登り始めは緩やかな沢ぞいの道を進む。一昨日の雨のせいかかなり滑る。紅葉はもうほとんど終り、、木々の間から望む頂上は、今年の登り始めであった札幌の八剣山の頂上を思わせる感じである。きっと高所恐怖症が邪魔するだろうが(2)、入山届けを見ると、前日小学生がたくさん登っているようである。見た目より楽なのであろうと歩を進める。
 旧道分岐付近から頂上を見上げる。
 旧道との分岐から旧道を覗くと結構整備されていて、人も通っているようである。「下りは旧道を」と決めて新道を進むと、この山に不似合いな感じのする広い平らな笹原に出る。その笹原を横切ると尾根に向かう樹林帯の急斜面に取り付く。やがて、頂上へ真っ直ぐ向かう岩混じりの急な尾根道になる。周りの木の枝や幹やロープや岩につかまりながらの急登である。
 
 頂上近くになると、下から眺めた岩場の根元に出る。左手の垂直に切り立った岩壁の迫力が凄い。まもなく木々に掴まりながら頂上の手前の岩峰の上に出る。しかし、幅が狭く、北側は垂直に切れ落ち、南側も潅木は生えているがかなりのものである。狭い岩稜の上を歩くのだが、両側は掴まる木もなく、怖くて真っ直ぐ立つとができない(3)
頂上手前の岩稜から見る頂上
 いよいよ高所恐怖症との対決である。前を中学生の女の子と父親が悠々と登って行く。手前の岩峰の上でちょっと休憩し、その親子連れが一度下って、幅の狭い頂上への岩稜に取り付くまで待つ。その姿を写真に収めて、腹を決め、両側の視界を意識的に遮断し、直ぐ目の前だけ見ながら、這うようにして頂上に辿り着く。
 
 今来た細い岩稜を振り返って、その細さと険しさに、帰りが不安になる(4)。親子連れは楽しそうに会話をしながら、インスタントラーメンを作って食べている。微笑ましい感じでちょっと羨ましさを感じる。秋の山は寒いので熱いラーメンもいいなと思いながら、汗で濡れたシャツを取換え、休憩する。
 頂上から越えてきた岩稜を望む
 残念ながら、昨日姿を見せていた増毛山地の山々は雲に覆われている。夕方姿を現した迫力ある群別岳が見えないのがとくに残念である。昨日登った神居尻山と寄り添うように姿のいいピンネシリは以外に遠くに見える。眼下には浜益川の流れに沿った狭い平地とそれに続く海岸線に浜益の町並みが見える。頂上から続く岩稜の道をちょっと進んでみるが、足元がすくむのが目に見えているので途中で戻る。
 
 いよいよ、下山、最初の岩峰までの険しさが怖くて心配になるも、来た道なのだからと腹を決め、親子連れに後ろから見られながら、意識的に視界を狭くして這うようにして越える。思ったよりすんなり通過でき、ほっとする。 ところが、旧道に取り付いてから、もっと凄い高所恐怖症との長い戦いが続く。登りに眺めた垂直に切り立った岩壁の腹を横切るように、良く見なければ分からない出っ張りを伝わる踏み跡が続いているだけなのである。戻ることは敗北である。なるべく下は見ないように、掴まる、そして足を掛ける木の根や岩を探しながら、両手両足を一つ一つを動かしながら、岩壁にへばりつくように進む。人生の中で一歩一歩進むのにこれ程時間を要したことは初めてである。これまでの登山で最高のスリルとサスペンスである。旧道は危険なので新道を造ったという訳が十分理解できる。

 距離にすれば、わずか100mくらいの距離なのであろうが、情ないはどの緊張と慎重さで、その岩場を無事通過する。登りなら目の前に壁があるのでそれはどでないのであろうと思っているところへ、旧道を登ってくるグループと出会う。リーダーが「旧道は登る方が楽ですよ。」と言う。まったく同感。
 
 通過してしまえば、怖さも克服した充実感と満足感に変わる。距離はそんなに違わないのに登りより下りの方に時間を要したのは、初めての経験である。標高は低いが、花の季節にでも逆のコースを歩いてみたい印象の強い山の一つになってしまった。
 登山口から少し下で、「全国巨木イチイの部6位」というオンコの木を300m程歩いて見るために寄り道をする。直径1m20cm以上はあるとおもわれる見事なまさに巨木である。成長が遅く、年輪の狭い堅い木であるだけに樹齢どの位なのであろうか。せめて、直径と高さと樹齢くらいの記録が説明されていてもいいのではないかと思われる。
 
浜益で「大漁ラーメン」(期待外れ)を食し、一路札幌まで日本海ぞいを南下する。


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