[85] 崕(きりぎし)山 (1057m)
 この山は、道南の大平山と同じ石灰岩の山であるがゆえに、特異な花の咲く山である。したがって盗掘も多く、自然保護の見地からあまり多くの人たちに登ってほしくない山なのかもしれない。
 この山には三つのコースがあるらしい。私は、最初に「南尾根コース」から、2年後の今年(1998年)に「沢コース」から再訪した。あと、沢コースの林道のもっと奥の「北尾根から登るコース」もあるらしい。


2000年情報
 昨年から5年間の予定で高山植物保護のために登山禁止です。1年に数回の学習登山会が開催されています。詳しくは芦別市役所へ。


[ 沢コース]  98,6,14 (2回目)
きつく急な苦い細い沢を登り詰め、ついに頂上岩塔の上に立つ。
   
4:40 桂沢湖畔発
5:15 林道入口
5:50 登山口着
登山地点下山
6:20
7:45
8:00
登山口
稜 線 
頂 上
10:35
9:15
9:00
1:40]所要時間[1:35]
11:45  湯の元温泉(入浴)
14:00  札幌着
 奇異な山容と豊富な花で有名な山である。2年前 に、南側の尾根から取り付いて、北側にある頂上を目指したが、標識もまったく無い山で、どこが 頂上 か分らず、途中で諦めて戻った山である。
小さな滝を登り、沢を詰める。
 高山植物保護のために、登山のガイドブックもなく、今回も、やはり富良野市役所のSさんからの新しい情報を手掛かりに、2年前に登山口を確認を しておいた沢登りコースの方からのアタックである。
 
 そのSさんと同行できればと思い3日前に電話 を入れたが、お子さんが肺炎で入院して行けないとのこと。私にはやはり一人歩きが相応しいのか。地図もガイドブックも持たない山行であるが、踏み跡がはっきりしているらしい。なんとかなるであろうと高を括って、長い林道を走る。ところが、2年前に確認をしておいた沢の取り付きを見落として、その上の方に車を止めてしまう。林道をさらに奥の方へ歩き始めて、それらしい所がないので戻ると、何と車のすぐ下のところが登山口であった。往復20分ほど損をする。

 赤いテープとはっきりした踏み跡を手掛かりに、細い沢を詰めて行く。前回の南側から取り付くコースは、すぐに岩峰や岩塔の根元を辿る花を楽しみながらの稜線歩きであったのとは、まったく対象的な、一つの山で二度おいしいコースである。でも、沢登りは大好きなコースなので、その変化や緊張感を楽しみながら登って行く。やたらと大きな葉と茎のエゾリュウキンカが花も終り、まさに別名・ヤチブキの体をなしているのが目立つ。   

 25分程で、目の前に 30m程の階段状の滝が見えてくる。おそらくどこかに高巻きがあるだろうと思って近付いて行くと、その滝の左端に上からロープがぶら下がっている(1)。それを頼りに滝を登り切る。いくつが小さな沢が合流し、途中から頭上に鋭い岩峰が2つ覗く。雄鉾岳や定山渓天狗岳と似たアプローチである。
 
 その沢も段々細くなり、水量も少なくなり、傾斜もきつくなってくる。最後の湧水地点に到着。オオイタドリの枯れ幹をうまく切り抜いた樋がつけられている。冷たくておいしい水である。その水を汲んで、さらに涸沢状態の中を源頭目掛けて登って行く。急な所にはロープがつけられている。
 大岩壁を見上げながら
 1時間10分で、岩壁の斜面下の分岐に到着。多分、頂上は左だと思うが、5分ほど右側の方へ進んで、岩の根元まで行って引き返し、左側の踏み跡を登る。そこから稜線までは、かなり急な泥壁であるが幸いロープがつけられていて、楽に登って行ける。 岩峰の切れ間の稜線に出る。すると再び、踏み跡が分かれている。もちろんこれまでと同じように、標識などまったくない。目指す頂上はどっちなのか、自分が一番先に入ったので聞ける人もいない。困っていると、タイミング良く左側から鈴の音が聞こえてくる。助かった。その人達は、もっと北側の尾根から取り付き、頂上に寄って、2年前に私が歩いたコースへ下りる完全縦走をするとのこと。ということは、この沢コースの取り付きをもっと林道の奥に進むと、北尾根コース?があるらしい。

 その人達に教えられて、安心して左側へ進み、不気味に聳える岩壁の根元に続く踏み跡を辿る(2)。ここからは、まさしく花の山の本領発揮である。アポイ岳とここにしかないアポイアズマギクのほか、チシマフウロ、ヒメナツトウダイ、ウコンウツギ、シナノキンバイ、エゾカンゾウ、ノウゴウイチゴ、サクラソウモドキ、ユキワリソウ・・・・などの花がうれしい。
 
 そして、初め方向感覚が狂っていて、すぐに気付かなかったが、昨日夕張岳から眺めたと反対の眺めが素晴らしい。夕張岳から鉢盛岳、芦別岳との間に鋭く聳える中岳など・・・、芦別岳はガスの中である。 15分程で、多分頂上だと思われるが、何の標識もない高さ 10m位のこの山ではどちらかと言うとゴロンとした大きな岩の根元に到着する(3)。上を見上げるが、自分には登れそうにもないと考え、その根元にリュックを置いて、さらに踏み跡をさっき出会った二人が進んできたと思われる奥の方へ辿ってみる。ここもまさに花畑である。その踏み跡は頂上岩塔の根元を巻いて、さらに下っていっている。
 頂上岩塔
 花を見ながら、戻って、その岩塔を見ていると、明らかに登り下りしている痕跡のある垂直に近いルートが認められる。わずか 10m位の高さである。高所恐怖症の自分にしては、凄い冒険であるが、なんとかなるであろうと腹を決めて取り付く。手を掛ける場所と足を掛ける場所を慎重に選びながら下を見ないようにして攀登ってみる。 顔の高さまで登り、怖々覗き込んでみると、そこは、岩の上に曲がりくねった盆栽風のハイマツが1本生えた、直径5mくらいの狭い平らな頂上である。明らかに人が休んだ痕跡がはっきりとある。ついに、立ったのである。2年前、登頂感を味わえず不完全燃焼のまま撤退した借りを返したのである。自分の立っている岩塔の形は下からでないと分らないが、北の方に林立する数々の岩峰や岩塔(4)を見て、あれほど細くはないのであろうが、それと同じかそれ以上の高さの上にいることが信じられない。
 
 ようやく尻が落ち着き、周りの展望を楽しむ余裕も出てくる。時間的にも余裕がある、誰か次の人が来るまでのんびりしていようと考え、パンやソーセージやりんごなどの朝食を摂る。それにしても、芦別岳との間に聳える中岳とその隣の急俊で鋭く聳える迫力が凄い。その後ろに北尾根は姿を見せるものの、芦別岳の槍の部分はガスで覆われて、見えそうで見えないのが悔しい。カメラを構えて待つも、ちらっとその右側の急な稜線を見せるだけである。1時間待ったが、とうとう現われず終いであった。
頂上からの眺め(一番奥・芦別岳?)
 下から鈴の音と女性の声が聞こえてきたが、1時間寛いだので下りることにする。さて、登ったはいいが、下りるのは大変、手は掛けるが足の掛けるところがない。登りで使った出っ張りを探せばいいのだが、下を向くと怖いし、下から見るのと角度が違って、出っ張りがよく見えない。泣き出すわけにも、投げ出すわけにもいかない。鈴の音から察して、まもなく到着するであろう人達にこんな不様な格好は見せられない。落ち着いて三点確保で探り探り、無事根元に下りる。
 
 あとは、るんるん気分である。頂上のすぐ下でまず女性の3人連れと男女の4人連れに出会う。その都度立ち止まり、花の話やコースの話を交流する。2年前登った南側からのコースは知らない人が多いようである。それから次々と登ってくる人達に出会う。合計で30人位はいたのではないだろうか。岩壁下の分岐のところで会った人に、「キバナアツモリソウは咲いていましたか?」と聞かれ、「どこですか、分かっていればぜひ見たかったです。」「頂上の岩のすぐ下の笹藪の中に頭を出しているから分かるはずなんですが・・・盗まれたかな?それを楽しみに来たんですが・・・」とのことである。まだ目にしたことのない花である。そこから戻っても30分も掛からない。戻ろうかとも考えたが、もし行って、無かったらと思い、そのまま沢の中に続く道を下り、登山口を目指す。
 
 2日間の山行を無事予定通り成し遂げた満足感と充実感と快い疲労感に酔いながら、長い林道を走る。途中、山を振り返るが、位置からして、自分の立った岩は多分一番北側の岩塔なのであろうが、おおよそ見当も付かない。           


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