自然との一体感
自分だけの感動の世界
一人歩きは、誰にも邪魔されたり、指図されたりすることのない自分勝手な、自分だけの世界である。その最たるものは、自然との対話である。自分の主観だけでその一体感を楽しむことができるからである。 
 登下山の途中の景観への感動や感激、足元に咲く可憐な花々との出会いや対話・・・・低い朝日に眩しく輝いていた早朝の雨龍沼湿原の池塘と花々、 富良野岳から三峰山にかけての斜面を覆い尽くして咲き乱れる高山植物の花々、十勝岳荒涼としたスケール大きな火山地形との出会い 、雲海の上に頂きを連ねる山々、大雪・永山岳の山肌一面を覆い尽くす美事な紅葉と沼の平の湖沼群の眺め、岩・雪渓・川・沼の織り成すトムラウシ公園、ナイフブリッジが連なりカールの美しい日高の山々、苔むした岩と清流や次々と現れる滝、ブナ林の紅葉の中の木洩れ日、迎えてくれる名も知らない野鳥の囀り・・・などの素晴らしい自然との出会いは、まさに自分の五感を通した宝物ものである。 ・・・・
 
花々との出会い
 山には、いろいろな楽しみがあるが、私の場合、高山植物の花々との出会いもその大きな要因のひとつである。お陰で高山植物の花の名前は、特殊なもの以外はほとんど分かるようになった。
花の山で印象に残った最初の山は雨竜沼湿原経由の暑寒別岳である。種類の多さと咲き方の美事さでは富良野岳と大雪の山々、その中でも五色が原は圧巻である。隠れたコースでは、平山からニセイカウシュッペへの縦走路。その山ならではの特異な花との出会いではアポイ岳、大平山、崕山、利尻山などが印象に残る。また、日高の山では、幌尻岳から日高第3峰の1967m峰までの北日高の稜線や七つ沼カールが一番である。芦別岳の北尾根や羊蹄山の花々も忘れない。近くの山では、大千軒岳と狩場山がある。
 
四季折々の出会い
 花との出会いは、時期的に限られた楽しみであるが、早春の雪渓を踏み抜きながら、膨らんだ木の芽や新緑を見上げたり、根回り穴を覗いたりしながらの歩き、紅葉と錦織絨毯状態の草紅葉は、やはり秋の大雪の山々がそのスケールの大きさと美しさは名実ともに一番である。道南特有のブナ林の春の柔らかな新緑と、木洩れ日に輝く秋の紅葉も大好きである。晩秋の霜柱を踏み鳴らしながら、すっかり葉の落ちた木立ちを中心としたのモノトーン状態の眺めも、その時期ならではの味わいである。
 
体に染み入る山の水  
 楽しみのひとつに山の水を飲むことがある。いつもパック入りのスポーツドリンクを2〜3個持って行くが、湧き水、沢の水、雪渓の水に勝る飲み物はない。胃袋にたまらず、乾いた体の細胞にそのまま吸収されるのではないかと思うほど、際限なく飲むことができ、体の細胞が内部から張りを持つ実感・・・・・疲労が一瞬に飛び散り、まわりの景色までが潤いを持って目に入ってくる。中でも地中から湧き出たばかりの水は最高である。たまに、それらの水を汲んで持ち帰り、水割りやコーヒーにする。これもまた至福のひとときである
 それぞれの山のコースに、オアシス的存在の名の付いた湧き水があり、それが初めから分かっていると、その出会いが楽しみである。大千軒岳頂上直下の「千軒清水」、利尻山の「甘露泉」、幌尻岳の「命の水」、羅臼岳の「弥吉水」「銀冷水」、ヌカビラ岳の「トッタの泉」、富良野岳原始ケ原コースの「天使の泉」、富良野西岳の「仙人の泉」・・・   雪解け水にまで名前の付いている永山岳の「銀明水」は特筆ものであるが、6月下旬、水場の無いとされる羊蹄山喜茂別コースの9合目付近で、勢いよく水の流れる音を頼りに藪を漕いで行くと、岩場の窪みを雪渓の水がゴーゴーと流れ、やがて伏流していく様と思いがけないその水の味は、物凄い得をしたような味であった。

不思議なウサギ
 山では、いろいろな動物との出会いがあるが、会いたくないのは、オヤジだけである。お陰で、子熊の以外の姿は目にしたことはない。ニペソツの頂上で待っていてくれたナキウサギにも感激したが、一番不思議な出会いは、夕張岳を再訪した際、薄暗くなった真っ直ぐの林道で出会った黒い大きなウサギである。崖崩れで6kmほどの林道歩きを強いられ、おそくなってからの下山で、薄暗い林道を一人で歩いていると、目の前に大きな黒いウサギが1羽飛び出した。こちら方を向いてじっと待っている。3mくらいに近づくと、前の方にぴょんぴょん5mくらい跳んでいって、また振り返ってこちらの近づくのを待つ。ちょうど犬が飼い主に対すると同じ動作である。そのにうちにいなくなるだろうと、声を掛けても逃げず、それをおよそ10回ほども繰り返したであろか、林道がわずかにカーブしたところでやぶの中に消えていった。日が暮れて薄暗くなった林道での一人と1羽の不思議なふれあいである。


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